from パリ(たなか) – 2 - ポンピドゥ・センターで見つけたもの。

(2009.05.12)

カンディンスキー展を見にポンピドゥ・センターへ行く。初夏のような陽気で、広場は大道芸人や観光客で賑わっていた。チューブのエスカレータで最上階まで登るとパリの西側が一望だ。パリを散歩していると、どの通りもきれいだと思うが、こうやって高いところから市街を眺めると建物の高さが揃っていて、美しい街並の理由がよく分かる。とはいえ、この建物自体が30年前の開館当時に、世界中から非難を浴びたのは記憶に新しい。

6階からの眺めではあるが、屋根の高さが揃っているので遠くまで見通しがきく。左に見えるエッフェル塔も、100年前の万博終了後には取り壊される予定だったと聞く。建設当初は不人気な構造物だったという点でポンピドゥ・センターと同類か?写真中央、はるか遠くに見えるのは新副都心ラ・デファンスの高層ビル群。西新宿みたいな

今見ても、古い石造りの建物の中に突然コンビナートを思わせるような、金属の骨格むき出しの建造物がパリの街並に合っているとは思えないが、目が慣れたということだろうか。センターの周りの広い空間が緩衝地帯の役割をすることで、異質な建築物が共存できているように思う。

最近改修工事を行ったらしく、30年の歳月を感じさせない。

周りの空間のひとつ、ストラヴィンスキー広場のプールに、ティンゲリーの噴水を見つけた。ここの作品は、奥さんであるニキ・ド・サンファルとの共作で、サンファルの原色を使ったオブジェがこの広い空間にぴったりだ。また、レ・アル方面の広場には、背の高い桐の木が数本あって薄紫の花が満開だった。夏になると美術館を訪れる観光客に涼しい木陰を作るのだろうか。

こちらに来て日本的な植物を見ると、なぜか不思議な気持になる。郷愁とは違う、なんか、君たち異国で頑張ってるなあみたいな。だが、桐や藤や桜が日本古来の植物だという思い込みにそもそも問題があることを実感するこの頃ではあるのだが

肝心のカンディンスキーだが、時代別に100点ほど展示されていた。これほどの作品群をまとめて見るのは始めてだ。初期のまだ具象的な痕跡が残った絵と、バウハウス時代の抽象化が進む頃の絵が私には興味深かった。が、同時に開催されていたカルダーの針金細工の方が見ていて楽しかった。この人もティンゲリーのように、作品を動かして楽しむことに興味を持っている芸術家というより、子どもの興味を持ち続けた職人かもしれない。

ポンピドゥ・センターを訪れるのは初めてだったので、ここの広場にティンゲリーの噴水があることを知らなかった。バーゼル以来の再会にびっくり