from 広島 – 3 - 広島~島根~山口。ローカル線で日本海へ!

(2009.09.02)

どんよりと曇った空模様のなか、広島駅1番ホームからゆっくりと、けだるそうなディーゼル音を響かせながら、2両編成のローカル列車が動きだしました。広島駅と広島県北部にある三次市を結ぶ「芸備線」は、最初住宅地を通過した後はひたすら田畑のなかを駆け抜け、車窓にはのどかな風景がまんべんなく広がります。

三次からは一両編成のワンマンカーに乗り換えて、さらに県北東部を目指し備後落合駅へ。自動販売機すらない山間の無人駅にもかかわらず、多くの家族連れや旅行客たちで賑わっていました。夏休みの間は毎日ここから島根県の木次駅まで、「木次線・奥出雲トロッコ列車」が運行されるためです。車窓を取り払ったトロッコ列車が、草木をかき分けるようにして進む様は、まさに天然のジェットコースター。途中、松本清張の小説「砂の器」の舞台となった亀嵩では出雲蕎麦が堪能でき、出雲坂根駅では全国的にも珍しい3段式のスイッチバックが披露されるなど、「木次線」はどうやら鉄道ファンの間では人気のローカル線らしいのです。

山間の無人駅・備後落合。
人気のトロッコ列車「奥出雲おろち号」。

四面を見回すと、分厚い時刻表を手にした鉄道マニアな人が、旅を楽しむというよりは、どこか義務感にも囚われた様子で、鼻息荒くカメラを向けていました。(そういう私も人のことは言えませんが・笑)

トンネル内では強い風が吹いて、臨場感抜群。

中国山地を山陽から山陰に抜ける旅におよそ5時間を費やし、その日は松江に宿泊。曇り空のため宍道湖はよく見えませんでしたが、川沿いの橋のたもとにある老舗居酒屋にて、宍道7珍といわれるウナギとシジミを堪能し、温泉につかって旅の疲れを癒します。

脂がのっておいしいウナギ。
松江の街の静かな夜。

ローカル線の旅はとにかく朝が早い。そもそも電車の本数が少ないし、上手に乗り継いでいかないととても目的地には到達できないからです。朝6時過ぎには松江を出発し、山陰本線をひたすら西へ西へ。冬の日本海は厳しい荒波の印象が強いのですが、夏の日本海は悠々とした、穏やかな海面をたたえていました。

車窓から見える日本海。
すれ違う乗用車。
ホームに入線してくる「みすゞ潮彩号」。
ひたすら続く青い海

江津、浜田、益田を通り過ぎて山口県の長門市に着いたのは午後12時過ぎ。お昼を食べる間もなくホームに入線してきたのは、下関まで行く特別列車「みすゞ潮彩号」でした。全席指定の特別車両は、座席がすべて海側に向けて配置されており、ここぞというビュースポットでは一時停車してまで、キラキラと輝く夏の日本海を楽しませてくれます。

陽光を受けた穏やかな日本海。

途中、海水浴場では列車に向けて手を振る人々の姿も。心がなごむ日本の原風景。
終点下関までは約3時間の気ままな列車旅。益田で購入した名物の焼きサバ寿司を肴に、海を眺めながらいただく缶ビールは「乗り鉄」ならぬ「飲み鉄」にとって、なによりの贅沢なひとときでした。