from 北海道(道央) – 34 - 日本一の「黄色い絨毯」。

(2010.06.30)
一面まるで「黄色い絨毯」。滝川市の「菜の花畑」。

 
日本一の「黄色い絨毯」。

毎年5月下旬から6月上旬にかけて、「羊の街」である空知地方の真ん中にある滝川市は、「菜の花(ナタネ)」に覆われます。

滝川市における「菜の花」の栽培面積は、2007(平成19)年に三重県桑名市や青森県横浜町などを抑えて全国一となり、以降4年連続で「日本一」をキープしています。
 
滝川市での菜の花栽培は、畑作地帯での連作障害を回避する作物として、1989(平成元)年度に北海道立植物遺伝資源センターによる地域適応試験が契機となり、その後、「初年に菜の花(ナタネ)、2年目に小麦、3年目に小麦、4年目に大豆、5年目に小麦」というような5年5作の輪作体系が確立し、今日に至ったのです。
 
輪作の結果として、菜の花を観賞できる場所は、滝川市内で毎年移動することとなり、「去年あそこで見れたのに、どうして今年は菜の花がないんだろう?」といった疑問の声が多くのリピーターの方々から寄せられるそうです。

当然収穫面積や生産量は毎年変わり、ピーク時の2008(平成20)年では収穫面積が225.27ha、生産量は692.15tでした(JAたきかわ管内)。ちなみに今年の栽培面積は178haということですが、もちろん「日本一」であり、春先からの低温の影響が幸いし積算温度が上昇せず、「開花期間」が例年以上に長くなり、観光客も30,000人を超えて「地域の観光の目玉」として成長を続けています。
 

5年5作の輪作体系であることから、緑の畑の中に「ぽつり」と広がる「菜の花畑」もあったりする。「アブラナ」とも呼ばれる「菜の花」。『古事記』では「吉備の菘菜(あおな)」、『万葉集』では「佐野の茎立(くくたち)」として表現されていることから、国内では古くから存在していたようである。
天気がよい日には、遠く雪を冠った「増毛岳(ましけだけ)」を望むことができる。
今年から「菜の花畑」を眺めながら、しばし休息できる「イベントスペース」が設けられた。
地元で取れた野菜を販売したり、恐らくは菜の花畑の農家さんたちが「観光客との交流」を図るためにと頑張っている。

 
「菜の花タクシー」が大活躍。

今年は、生産者と地元住民の有志が一緒となり、菜の花畑に隣接する「イベントスペース」を設けて、地場産農産物や加工品を販売したり、遊歩道を散策したお客さまがゆっくりとくつろげる場所を提供する試みにも取り組みました。
 
また、JR滝川駅を降りてから、毎年変わる「菜の花」の栽培場所をプロのドライバーが案内する「菜の花タクシー」が去年から運行を開始。公共交通機関の活性化を目指す「滝川市地域公共交通活性化協議会」が実証実験として実施しているもので、土日には1,000人を超える遠く沖縄や九州などからの観光客の皆さんの「貴重な足」として役立っていました。

「道の駅たきかわ」(総合交流ターミナルたきかわ)にも菜の花タクシーは停車することから、地域でできた農作物や「菜の花」などを購入することができたり、利用者の方々には大変好評だったという声を聞いております。
 実際のところ、今年の利用者数は1,186ということで、対前年比56%の増加だったそうです。
 

JR滝川駅から循環している「菜の花タクシー」。「道の駅たきかわ」での乗降も可能なことから、道の駅自体も賑わっていた。
畑の中を移動することから、自家用車の駐車場はないので、是非ともJR(札幌から特急で約50分)と「菜の花タクシー」を組み合わせて利用することをお勧めします。
「道の駅たきかわ」(総合交流ターミナルたきかわ)では、地元農家さんの産直販売が行われていて、地元の方々も含めて賑わっている。
産直販売のアイテムの中には「菜の花」も含まれていた。

 
とってもヘルシーな「なたね油」。

さて、「菜の花(ナタネ)」からは「なたね油」が作られることになります。

滝川市で栽培しているナタネは、在来種の「赤ダネ」とは異なる「キザキノナタネ」です。「赤ダネ」には大量摂取することにより心臓障害や成長阻害を引き起こす「エルカ酸(エルシン酸)」の含有率が高く、このエルカ酸の含有量がほぼ「0」になるよう東北農業試験所で非遺伝子組み換えにより品種改良されたものが「キザキノナタネ」なのです。
 
この滝川産の「なたね油」は、滝川市の説明によると、血中コレステロールや中性脂肪の増加要因となる「飽和脂肪酸」の含有率が、オリーブ油が17.1%、べにばな油が9.2%であるのに対し、わずか1.4%という優れものなのです。

また、抗酸化作用があり、心臓病・癌の発生リスクを低下させると言われている「単価不飽和脂肪酸」の含有率が、オリーブ油72.3%、べにばな油13.1%であるのに対し、66.4%と、脂肪酸のバランスが絶妙であり、「菜の花」の風味に加えて、科学的にもヘルシーであることから、北海道における隠れた人気商品でもあるのです。
 

「たきかわなたね油」。成分分析の結果は、他の油よりもヘルシーとのこと。
滝川の「菜の花畑」に植えられている「キザキノナタネ」(写真右)。写真左は、油への加工過程で発生する屑。廃棄物とすることなく、何か用途はないか現在研究中らしい。

 
地域における「産業クラスター」構築にも貢献。

この「なたね油」の開発は、2006(平成18)年に「たきかわなたね産地確立推進対策協議会」が設立されたことを契機としたもので、「たきかわなたね油」のブランド化を図るほか、更なる付加価値向上を目指し、ドレッシングの開発や「菜の花オニオンソース」の開発など、地域における産業のクラスター化にも大きく貢献しています。

ちなみに「菜の花オニオンソース」は、一度食べるとかなり嵌ってしまう「隠れた逸品」でした。
 
さらに「たきかわスイーツ・アクション・プログラム」をスタートし、「菜の花」を使ったフィナンシェ、饅頭、スフレ、マカロンなどなど、地元のお菓子屋さんと消費者有志が集まり、様々な工夫に取り組んでいます。
 
それにしても、この時季だけにしか見ることのできない素晴らしい「菜の花」によって形作られた景観を一度観てしまうと、「景観」とは、常時そこに変わらずにあるものだけが「景観」と呼ばれるものではないのだろうという思いを、自分は「菜の花」たちに教えてもらった気分となりました。 

今年は花の時季は終わってしまいましたが、滝川でしか見ることのできない、とっておきの日本一の「黄色い絨毯」を、是非一度現地にて味わってみていただきたいと思います!!

「たきかわなたね油」に滝川産の玉葱を使って開発された「菜の花オニオンソース」。ハンバーグ、ステーキ、茹で野菜など、料理全般に利用できる万能ソース。
「菜の花オニオンソース」を購入した際にいただいたチラシに、「菜の花オニオンソースのおいしいお召し上がり方」が何点か紹介されていた。「チーズドック」を作ってみたが、アクセントになっていてとっても美味しかったです。茹でたグリーンアスパラガスにも合いました。
「道の駅たきかわ」にて「たきかわスイーツ・アクション・プログラム」のPRと、実際にお菓子が何点か販売されていました。