from パリ(河) - 22 - 南仏プロヴァンス、
リュベロン地方を訪ねて

(2012.08.08)

パリッ子は南へ大移動。

今年は春もなく夏もなく、雨の多い肌寒い日が続いているパリ。毎年夏に登場するパリ・プラージュ(セーヌ河岸に設置される人工ビーチ)も寒々しくてなんだか寂しい雰囲気です。北側はこんな感じでお天気はイマイチだけど、南側は連日晴天のバカンス日和。パリっ子たちは、南の太陽を求めて、海へ山へとおでかけです。

輝く地中海にひまわりとオリーブ畑が広がる田園地帯。魚介類や夏野菜が美味しくて、自然と食を満喫できる南仏。いろいろな見所がありますが、今回ピックアップしたのは、プロヴァンス地方のなかでもアルプス寄りの山域に位置するリュベロン地方です。

切りだった白い岩肌が特徴的な石灰質の岩山が連なるリュベロン地方。山と谷から成る起伏豊かな土地に、ガリーグと呼ばれる野性ハーブの群生地や、オークルの山、ラベンダー高原、オリーブ畑、葡萄畑など、多彩な自然が広がる景勝地です。プロヴァンス・ブームを巻き起こしたイギリス人作家、ピーター・メイルのユーモア溢れるベストセラー・エッセイで紹介されて以来、夏はキャンプや別荘ライフを楽しむたくさんのバカンス客で賑わうようになりました。秋は狩猟と美味しいジビエ料理を楽しめる美食の地として人気です。

色とりどりの夏野菜と果物、オリーブオイルにワインと美味しい名物がたくさんある地域ですが、黒トリュフの産地でもあり、意外なことにフランス全体の生産量の約80%はここで採取されているそう。ピーター・メイルのエッセイでも、黒トリュフにまつわる楽しいエピソードがいくつか紹介されていました。

ボニューからリュベロンの谷を望む
ボニューから眺めるリュベロン山脈
落ち着いた雰囲気の鷲巣村「ボニュー」。

この地方でぜひとも訪れたい名所は、切りだった岩山の頂上に点在する、石壁と石垣でできた中世の村々。鷲の巣の形に似ていることから、「鷲巣村」と呼ばれているこれらの村々からは、風光明媚なリュベロンの谷が一望できます。特に「天空の城」という異名で名高いゴルド村やボニュー村からの眺めは絶景です。

この夏、私はボニュー村とルールマラン村に行ってみました。ボニューはリュベロンの山側にある人口1,500人ほどの小さな村。迷路のように入り組んだ小道に石造りの古い家が並ぶ落ち着いた雰囲気の鷲巣村です。車が入れる道はごくごく限られていて、所々で猫がのんびり散歩していてほんとうに長閑。時折山から吹き降りるプロヴァンス名物のミストラルという乾いた西風が、じりじりと照りつける太陽の熱気を払い、爽やかな空気を運んでくれます。眼下には橙色の屋根が並ぶ集落、オリーブ、アーモンド、葡萄の畑が織り成す美しい谷。そして谷の向こう側に見えるのは、サディズムで有名なマルキ・ド・サド侯爵の城の廃墟があるラコスト村、ツール・ド・フランスの「魔の山」として名高いヴァントゥー山。最高の絶景を楽しめるボニューはリュベロンで一番美しい夕陽が見れる場所とも言われています。

ボニューの路地
ボニューのタバコ屋さん

左・ボニュー村で一番人気のレストラン『LE FURNIL』
右・AOCリュベロンの白ワイン

左・真鴨のロースト・ハーブ添え
右・いわしとトマトのミルフィーユ仕立て
ルールマランへ。

ルールマランは山側ではなく谷側にある小さな避暑地。エク・サン・プロヴァンスから30kmほど離れたところにあり、プロヴァンス地方のサントロペといった趣のお洒落な村です。アーティストが集まる芸術村でもあり、小説家のアルベール・カミュが住んでいたことでも知られています。ここでは長期滞在型のバカンス客が多く、小粋なカフェで冷たいパスティスを片手に読書をしたり、広場で仲間とペタンクに興じたり、市場で買った新鮮な食材で料理して、ガーデンパーティーを開いたりと、それぞれのんびりと田舎ライフを満喫しています。

リュベロン地方は電車のアクセスがよくないので、車での移動が便利。バスでの旅行にチャレンジされる方は、1日の運行数が1、2便と少ない路線が多いので、事前にじっくり計画を立ててから周られることをおススメします。

ルールマランの中心にあるカフェ
ルールマランの蚤の市