from パリ(たなか) – 53 - 5月1日のスズラン、花盛りのマロニエ。

(2010.05.10)

5月1日(le 1er mai/プルミエ・メ)のメーデーは、フランスでは祝日で、美術館や店は休みのところが多い。そのせいか道路はクルマも少なく、パリの繁華街はいつも以上に人の波で溢れている。この日はむしろ、スズランの日という印象の方が強い。メトロの入口や広場の一角など、あちこちにスズランの花売りスタンドが並ぶ。日本で年の瀬に見る注連飾りの出店のような、あんな感じ。2、3本をセロファンで包んだ簡単なものから、20本くらいを紐で結んだ花束、寄せ植え、鉢植えもあったりする。パリ郊外の森の中には今でも野生のスズランが自生しているらしく、ちょうどこの季節に花をつけるそうだ。この花束をプレゼントすると幸運もいっしょに付いてくるそうで、街角で花束を持っている人に何度も出会った。私も小さな花束を買い求め、家に戻ってグラスに活けたら、とてもいい香り。セロファンの包み紙を見たらJe porte Bonheur(ジュ ポルト ボヌール/私は幸せを運ぶ)と書いてあった。
 

5区、プラス・モベール(pl.Maubert)でスズランの花束を買う女性、誰にあげるのかな。
5区、モンジュ通り(rue Monge)のスズラン売り。親子かな?

少し前から、プラタナスの実(鈴掛け)が弾けて、タンポポのような綿毛がたくさん飛んでいる。晴れた日に見るとなかなかきれいなのだが、風の強い日は歩いていると目に当たって、涙でしょぼしょぼしてしまう。並木の下の歩道には綿毛の吹きだまりが出来るほどで、風情があるというよりはむしろ自然の驚異と言う方が近いかもしれない。パリの大通りには巨大なプラタナスの並木が続いているので、相当な量の綿毛が飛んでいるんじゃないだろうか。それに比べると、マロニエはなかなかよろしい。柔らかな黄緑の葉が見る見る大きく開いて、気がつけばいつの間にやらこんもりと緑陰を作るほどに茂っている。そして今は白や紅い花が満開。八つ手のような大きな葉といっしょに風に揺れて、一気に初夏を思わせる風景。

 

シテ島、ヴェール・ガラン公園(sq.du Vert Galant)の紅白のマロニエをポン・ヌフから眺めたところ。ヴェールは緑という意味と、若々しいという意味があり、ガランは(女性に)親切な、という意味。で、ヴェール・ガランは女たらし、という意味だそうです。
6区、オデオンの『ル・コントワール(le comptoir)』前の桐の木。ここのランチは最高。
シテ島、裁判所裏にあるプラス・ドフィーヌ(pl.Dauphine)のマロニエ。広場のマロニエは、この冬、赤い花の若い木に植え替えられた(残念)。
シテ島、サント・シャペル横のマロニエ、対岸はサン・ミッシェル

パリの春は猛烈なスピードで通り抜け、5月になったらもう夏ですよ、と言わんばかりにノースリーブやTシャツ姿が目立つようになる。大きな桐の木がある広場のカフェで、薄紫の花を見ながらランチするのが楽しい季節となったのではありますが、しかし、4月末の初夏のような陽気がウソのように、5月に入ったとたん寒い日が続く。朝は2〜3度、昼でも10度以下だったり。これじゃ冬に逆戻りで、部屋の暖房は復活だし、またコート姿が目立つようになった。パリはやっぱり北国だったか。

 

 

[おまけ] 編集Nです。お邪魔します。5月1日に、ピュリニー・モンラッシェからほど近い森の中に群生する、野生のスズランを採りに行きました。季節外れの蚊に刺されながら集めること約30分、こんなに大きなブーケが完成。お花屋さんのものに比べて、香りが濃い!ことに驚き。たなかさんに本物をお見せできなかったのが残念ですが、せめて写真だけでも。