from 北海道(道央) – 62 - 古きを知り、今の小樽を楽しむ。
お薦めしたい、小樽一泊ツアー。

(2012.07.03)

まずは定番、小樽の寿司を楽しむ。 

私には、札幌の老舗ワインレストランにて、いつも一緒にワインを楽しんでいるメンバーがいる。例えば、ビオディナミの伝道師と称されるニコラ・ジョリーのワインとのマリアージュ、北海道の春の山菜とワインとのマリアージュ等、毎回テーマや趣向を変えて、ワインのある食と会話とを楽しむメンバーがいることは、人生を豊富にしてくれる何よりの宝であり財産でもある。

たまたま誰かが、「次回は小樽でワイン会をやってみてはどうか?」という提案をしたことから、『ぐるたび』の「小樽エリア地域活性プロジェクト」に参加している自分としては、小樽の活性化に向けた一助として、快くお受けすることとした。

参加者総勢8人のうち6人は、札幌駅からJRにて小樽駅に11時40分に到着。皆、もちろん小樽をしっかり楽しみたいということで、宿泊予約をした上での参加。

まず、向かった先は、『寿し処たかつか』さん。しっかりしたお寿司を握ってくださること、事前にお願いしておけば「海鮮搔き揚げ」をいただくことができること、さらには小樽の地酒「田中酒造」さんの生酒をいただくことができることなど、小樽の「和」の基本を楽しんでいただくことができる。


左・小樽の地酒「田中酒造」の「宝川(たからがわ)」。生酒は、寿司との相性がよいと評判。
右・「寿し処 たかつか」での握り。ネタの新鮮さは、やはりこの時期が最高。

 
小樽の「寿司」を、せめて一度は味わいたい!!

新たな「小樽運河」の楽しみ方。

小樽観光で「小樽運河」は欠かすことのできないスポットではあるが、隣町である札幌にいても、その歴史を学ぶ機会は滅多にない。折角なので、2009(平成21)年からスタートした、「小樽運河クルーズ」にて、目線を水面から眺める約40分のクルーズに出かけてみた。
 
小樽港における船舶からの荷揚げは、海上に停泊する船舶から艀(はしけ)船を使用して行ってきたこともあり、その利便性を高めることを目的として、1923(大正12)年に、運河部分よりも海に近い土地を埋立ることにより完成した。

戦後、北海道内の港湾整備が着実に進む中で、小樽港の艀船による荷揚げは廃れていくこととなり、運河埋立てによる都市計画が策定される中、運河保存運動が起こり、現在のような景観が形成された。運河内での水循環が円滑でなかったこともあり、一昔前までは水質の悪化が酷かったようだが、近年の水質浄化施設の整備等により、今回のクルーズで「海鵜」が運河で魚を追い求めている姿を目撃して驚いた。目線が下がることで発見できるものの一例か。
 
北海道における缶詰の歴史については、以前『dacapo』で、1877(明治10)年の開拓使として国内初の缶詰工場を石狩市に作ったことをお伝えしたが、北海道は缶詰工場発祥の地でもある。
 小樽運河完成の2年前である1921(大正10)年に「北海製罐倉庫(株)」が創業し、小林多喜二の『工場細胞』や近年では「仮面ライダー」でのショッカーの秘密基地の撮影に使われたりしていたと聞くと、小樽人としても「へぇー」と改めて驚くのであった。

自分も初体験。「小樽運河クルーズ」。観光案内が外国人で、日本語の堪能さに驚く。
普段なら橋の上を通行しているのだが、船だからこそ橋の下をのんびりと楽しめる。
小樽の歴史、「和」の歴史を学ぶ。

小樽は北海道の金融の中心地でもあった。日本銀行旧小樽支店。東京駅を設計した辰野金吾(たつの・きんご)がその設計にも関わっていたことを知ると、建築に詳しい方は、まずもってその点に興味と関心をもたれる。

今は「金融資料館」として、北海道や小樽の発展の歴史、金融の仕組みなどを含めて、とても勉強になる資料館として活用されている。ちょうど運が悪く、今年11月1日までは外壁等改修工事により部分開館となっていて、本来の5分の1程度の展示しか見ることができなかったのは多少残念ながらも、自分以外の全員が、「小樽にこんな場所があったことさえ知らなかった」と驚かれていた。ちなみに、今年12月1日から、通常開館となる予定と聞く。
 
また、折角小樽に来たなら立ち寄っていただきたい場所へと一堂は移動。小樽運河から片道約20分の小樽公園の一角にある「小樽市公会堂・能楽堂」。

「旧岡崎家能舞台を生かす会」の重鎮である遠藤友紀雄(えんどう・ゆきお)さんのご案内により、能舞台の形式や発達の経緯、今具体的に会としてどのような活動を行っているのかなどを教えていただいた。

さらに、能楽堂に隣接し、一体として使用されている「公会堂」の中も特別に案内いただき、大正天皇の宿泊された部屋などを見学し、北海道内でも小樽でしか体験できない経験を重ねていただいたのであった。

札幌の隣町にこれほどの文化的施設が現存していることを知り、「しばらくの間、小樽フアンになりそうです」といった声も聞こえていた。

今年11月一杯までは改装工事中で、展示規模が縮小されている「日本銀行旧小樽支店 金融資料館」(入館無料)。


左・大正天皇が宿泊された「公会堂」と旧岡崎家「能舞台」が合築され、「小樽市公会堂・能楽堂」として、晩春から秋口にかけて無料で一般公開されている。
右・大正天皇が実際に宿泊された部屋を見学。天井の高さや広さ、歴史の重みに感嘆。

 
夏の北海道に「新たな文化」の息吹が!

ゆっくりと「小樽の夜」を満喫したい。

さて、本来の目的でもある「小樽でのワイン会」。小樽と言えば「寿司」や「あんかけ焼きそば」だけでは決してないのだ。イタリアン、フレンチ、創作和食など、質の高い夜を楽しんでいただきたいお店が、たくさんあるのだ。しかし、小樽から札幌方面への最終電車は23時ということもあり、なかなかじっくりと夜の小樽を楽しんでいただく環境にないことが、小樽の夜を活性化したいと願う多くの皆さんにとっては残念でならないこと。せめて、週末だけでも「深夜バス」でも出せないものかと、関係方面にお話ししている。
 
今回は、いつもお世話になっている「味の殿堂」新日本的料理を称する『Newport』さんにお願いして、小樽らしい洋食のバリエーションとワインとのマリアージュを楽しんでいただいた。東京からいらっしゃる多くのお客さまをこの店にはご案内しているが、特に「ラザニア」の美味しさには、異口同音感動していただける。

さらには二次会と称して、おでんの店『ふじりん』にて、心行くまでワインと料理の数々を楽しんでいただいた。
 
午前11時に札幌を出発し、休む間もなく夜の23時過ぎまで小樽を満喫していただいたが、皆さんその後は宿泊先で温泉を楽しまれ、「小樽の今と昔」に満足していただけた。

間もなく夏休みがスタートしますが、皆さん是非時間を見つけて、小樽を満喫するために足をお運びくださいませ!市民一堂、心からお待ちしております!!


左・Newportのワイン会にて提供されたワインのうちの一本。フランス・アルザスの「Gyotaku(魚拓)」。生産者の奥さまが札幌のご出身ということ、さらには「和食との相性が抜群」ということで、このワインの話題で盛り上がる。
右・Newport。宮木秀貴(みやき・ひでき)オーナーシェフと美樹(みき)さん。御主人は、小樽でも有名なパーカッショニストであり、ヴェネズエラで音楽と料理の修業に励んできたという経歴の持ち主。

左・ふじりんでは、大正8年創業「あかさか」酒店からのワインの提供。そのうちの一本。「ラ・カボット コート・デュ・ローヌ」。ビオディナミ認証ワイン。
右・札幌出身の田中数子(たなか・かずこ)ママ。料理と小樽について語る語り口と朗らかな性格から、全国津々浦々にママリンフアンがいる。