from ミュンヘン - 10 - 登山鉄道で楽チン旅、山頂から
欧州随一のパノラマを眺める。

(2011.07.25)

ザルツブルグ近くにあるシャーフベルク登山鉄道

すっかりご無沙汰してしまいました。先ごろまで2018年の冬季五輪の最終候補地に残っていたミュンヘンですが、残念ながら韓国の平昌に決まってしまいましたね。記念すべき瞬間を皆で祝おうと市庁舎前に集まった市民達は非常に落胆していました。今回は残念でしたが、また立候補してほしいと思います。さて今回はミュンヘンから車で2時間ちょっと、あのサウンドオブミュージックにも登場するオーストリア・ザルツブルグ近くにあるシャーフベルク登山鉄道(Schafbergbahn)をご紹介しようと思います。ここはかつて僕がテレビ朝日の『世界の車窓から』を見た時にメモして、いつか行ってみたいなと思っていた場所です。

1893年に開通したこの登山鉄道が走るシャーフベルクの標高は1782mとユングフラウ登山鉄道(スイス)やツークシュピッツェ登山鉄道(ドイツ)などヨーロッパに数ある山に比べると高いという訳ではありません。けれども周りをグルっとエメラルドの湖に囲まれた欧州随一とも言われる景観のすばらしさが最大の特長といえます。例年山頂の雪がなくなるのは5月頃と遅めで、そこから10月までが登山鉄道が運行するシーズンですが、今年は5月以降も週末に天気が崩れることが多く観光にはタイミングの悪い時期が続きました。晴れの日に登る確率を上げるベストシーズンは個人的には7月~9月かなと思います。


全長6キロ弱の間に1200mをのぼりどんどん景色が変わっていく

出発はザンクト・ヴォルフガング湖の湖畔にある乗り場からで、頂上までは蒸気機関車に乗ること40分ほど。運行は1時間に1本でトップシーズンは2時間待ちということもあるようですが、今回は幸いにも待たずに乗ることができました。全長6キロ弱の間に1200mも上る急な勾配のせいかどんどん目線の高さが変わっていくのがわかり、気分が高揚していきます。途中トンネルに入ると石炭の燃える独特の臭いがし、同乗のドイツ人は一斉に窓を閉めますが、それがかえって「蒸気機関車に乗っているのだ」と実感させてくれます。この日は30度を超す暑さで小窓しかない車内は暑かったですが、あっという間に到着、そしてすぐに頂上の風通しのよさを感じることができるのは山ならではです。

山頂からはザンクト・ヴォルフガング湖、モンド湖、アッター湖を見下ろせ、あまり標高が高くないせいか、これらの湖をとても近くに感じます。しばらく歩くと、地層が隆起してできたであろう切立った絶壁があり足がすくみます。近くにあるザルツブルクの岩塩鉱山もそうであったようにこのあたりはかつて地層が激しく動いた場所なのです。山頂にはレストランが2軒あるので、帰りの便までドイツ料理でも食べてのんびりと時間を過ごすのもよいでしょう。

ザンクト・ヴォルフガング湖のクルージング

登山鉄道のあとは登山鉄道乗り場から近い船着場からのザンクト・ヴォルフガング湖のクルージングがお勧めです。今回はシャーフベルク登山鉄道とザンクト・ギルゲン(St Gilgen)までの往復クルージングのコンビチケットを購入しました。このザンクト・ヴォルフガング湖はちょうどサングラスのような形をしていて、シャーフベルク鉄道駅の船乗り場は眉間のあたりの湖の真ん中にあり、そこから西に東にそれぞれ1時間に1本ほど出港しています*1。上述しましたが湖はとても見事なエメラルド色で非常に透明度が高く、欧州連合(EU)の推薦水ともなっているようです。ここの観光客の3/4以上は夏場に集中し、ヨット、ウインドサーフィンそして海水浴と思い思いの湖遊びを満喫しています。
(*1 ザンクト・ヴォルフガングの中心部の乗り場からは30分ごとに便があります。)

西の終着駅ザンクト・ギルゲンまでは30分程の距離です。ミュンヘンから電車で来た場合やザルツブルクからバスで来た場合にはこのザンクト・ギルゲンが旅の起点となります。ここはモーツァルトの母が生まれた街で、生家が現存しており現在は博物館になっています。小さな町に飲食店がひしめく他はこれといって特筆すべき観光ポイントはありませんが、とにかく湖を眺めているだけで幸せな気持ちになれます。ミュンヘンから日帰りも可能なこの楽チン登山鉄道とクルージングの旅、もし機会があれば行ってみてください。


シャーフベルク登山鉄道(schafbergbahn)

値段:鉄道往復チケット€29 、鉄道往復と船のコンビチケット€40.20
(ザンクト・ヴォルフガングとザンクト・ギルゲン間) 
運行日程:2011年は10月26日まで
ホームページ:http://www.schafbergbahn.at/
(時刻表・値段のほか山頂のウェブカムなどもチェックできる)