from 福岡 - 番外編・佐賀 - 佐賀県の酒蔵を巡る
日本酒の旅。
(2014.02.04)
花の酵母からお酒!? ~天吹酒造~
趣のある門をくぐると、とても風情のある酒蔵で、聞けば、築100年ほどの蔵を数年前にリモデルをしたという。案内人は、社長の木下武文さん。人懐こい笑顔とその奥にお酒への愛情をひとしきり感じるお人柄である。酒造の叔父(林平作酒造場)にも似たところがありお人柄のファンになってしまったのはいうまでもない。
日本酒の主原料は、米・米麹・水。以前は、いいお酒をつくっている酒蔵から酵母を分けてもらって、お酒を醸していた。それだと、たくさんのお酒の中で個性が埋没してしまうと考えた社長は、出身校である東京農業大学の中田教授がお花の中にいる酵母がいるという話にであい、花酵母での酒造りをすることを思い立った。花酵母にはいくつもの種類があり、それぞれの花酵母に個性があり、その特徴を上手く生かすことができれば、様々なお酒を醸することができる。
お酒というのは、いろいろなタイプがある。油をつかったタイプの食べ物にもあう酸味があるお酒、それだけでゆっくりと飲む香りが高いお酒、豆腐に合わせてもいいさっぱりしたお酒、同じ日本酒を楽しむにしても楽しみ方はいろいろ。
さっそく、500円で試飲ができるという試飲ルームにて様々なお酒をお味見させていただいた。人間にも個性があるように、酵母でもなでしこやアベリアはかぐわしい香り、ベコニアやマリーゴールドは、しっかりとした香り、イチゴ酵母は、あまずっぱい味を醸しだす。
食米でつくったという大吟醸もお味見。本来、日本酒は、酒造好適米(代表的なものは山田錦)でつくられる。しかし、酒造好適米は育てるのが難しく、毎年需要を満たせるかというのもお天頭様のみぞ知るである。ゆえに、どうしても大吟醸は値が高くなってしまう。一方、食米でつくった大吟醸は、一升瓶で3000円代。本来の酒造好適米でつくるとなると約5000円となってしまうのに比べてお得。さらには、近隣農家と協力しあえる関係が結べて素晴らしい取り組みであると感心をした。
日本酒で乾杯条例
鹿島酒蔵ツーリズム~酒蔵通り~
酒蔵通りの一角に観光酒蔵「肥前屋」という風情ある古民家がある。酒蔵通りの一角に建つ峰松酒造場が設けている酒販売店であるが、その中にはずらりと酒・焼酎が並び、試飲が自由にできる。代表的な銘柄である「菊王将」をはじめ、光武酒造場の「魔界への誘い」というイモ焼酎ほか、数多くのお酒を試飲できる。私が試した「黒麹イモ焼酎 魔界への誘い」は、黒麹独特の香りや甘みがあり、まろやかな口当たりが特徴といえる。また「焼き芋 魔界への誘い」というのも飲んでみたが、そうそう、焼き芋のふんわりとした甘さと口に広がり、まろやかに口を包み込み、なんともいえぬ風合いがある。酒・焼酎・酒・焼酎と、運転をしていただいた方に申し訳ないと思いながらの試飲ではあったものの、大満足である。
地の飲み物には、地の食べ物~竹崎カニ・竹崎牡蠣~
道の駅には、一キロ1000円で牡蠣が手に入る。秋から春にかけて15軒ほどの牡蠣焼き小屋が立ち並び有明海沿いの国道207号は、別名「たらかき焼街道」として知られる。かき焼き小屋では、身が超えて味が濃い竹崎カキをその場で焼いてたべることができる。
蒸しカニの甲羅があまりに立派で、子持ちカニのお腹をきれいに食べた後に、ゆっくりとお酒を注いで飲んでみた。そんな飲み方をしてはつくった酒蔵さんに申し訳ないと思ったものの、だしの味がしっかりきいた「カニ酒」は美味しかった。
この豪華な夕食は、佐賀酒飲み比べセットと一緒にいただいた。佐賀の芸術家が絵付けをしたというおちょこで、佐賀県の日本酒3種を飲み比べられる贅沢なセットである。
「天吹 純米吟醸 ひまわり酵母」。ひまわり酵母からできたお酒は、フルーティかと思いきや辛口、酸味でキレがよく、お食事にも相性抜群。
「肥前蔵心 純米吟醸 無濾過生酒」。端麗辛口でありながら、旨味のあるお酒。吟醸酒らしいキレとすっきりとした味わいがあり、無濾過独特のどっしりした味わい。
酒の楽しみ方
今回は、旅先でいろんなお酒に出会い、地のものと共に地のお酒を大いに堪能した。旅先で手に入れた粕漬けの海茸とお酒を見ながらにんまりし、いつこのお酒を開けるかとわくわくする。旅で出会い、飲んだそれぞれのお酒に物語ができた。これぞ旅の醍醐味であろう。