土屋孝元のお洒落奇譚。象を見て、
はるか昔に思いを寄せる。

(2012.10.06)

ロンドン・オリンピック開会式さながら
『プーケット・ファンタジー』

先日、プーケットにて『プーケット・ファンタジー』というショーを見てきました。

何度かこちらへは来ていたのですが、こういうショーを見るのは初めてでした。空港から各ビーチへの道沿いには大きな看板があり、どんなものかなあとは思っていたので半信半疑で見に出かけたのです。

このショーでは象約20頭が舞台に上がり演技をします。簡単に象と言いますが脚を上げたり鼻で演技をしたりするのです。きちんと慣らされていて隊列も崩さずに動いていました。天井では空中ブランコのように女性達が空中を動き回り、大砲からは人が発射されたり、檻に入ったトラが人間に変身して現れたり。劇場内の一般の観客が呼ばれてノコギリで切られ、もた元にもどったりと定番と言ってもすごいのですが、こういう出し物が続き、さながらロンドンでのオリンピック開会式の様なショーで、タイ王国の歴史を原始から成り立ちまでスペクタクルに描いています。

僕も初めて知ったのですが、タイとビルマはずっと犬猿の仲で、お互い象部隊を含めた歩兵や外人の傭兵隊による戦争を度々していて、ここシャムの王族がビルマに捕らえられたのを、プーケットの女貴族が助けたとか何とか。

ここでもう少し詳しく述べると、山田長政という日本人の侍、侍大将、がいて日本人の傭兵隊を率いてシャム王国を助けたと言うことですが、この山田長政を知る人も少ないでしょうね。江戸幕府の鎖国令が出るまでは、朱印貿易により、日本と東南アジア各地、タイ(シャム)、ベトナム(安南)、台湾、フィリピン(呂宋)、ボルネオなどとは交易が盛んでした。シャム(タイ王国)の首都アユタヤには当時最大の日本人町があって(関ヶ原の後、浪人が多く流れ込み約3000人くらいと言われています)かなりの数の日本の人々が暮らしていたようです。

『プーケット・ファンタジー』入り口の看板ネオン。
世界各国からの観客とともに
ブッフェスタイルの食べ放題。

本題に戻り『プーケット・ファンタジー』館内は撮影禁止でカメラやビデオが入り口で預けられます。僕は帰りが混むだろうと予測して預けずに館内へ進みます。途中お土産コーナーや虎の子との記念撮影コーナなどがあります。この会場の外観全体が、アンコールワットの様な建物で象の館のように作られています。会場へ入る前の広場には象達がいて近くで見たり、触ったり記念写真を撮ったりできました。

さてと簡単に流れを説明しますと、この『プーケット・ファンタジー』のチケットを購入すると、夕方の5時半すぎぐらいに各ホテルへと迎えのバスがやって来ます。そして島の中央部にある『プーケット・ファンタジー』の会場に到着します。たぶん、どこのビーチからでも30、40分でしょうか。

会場時間の夕方になると島にある各リゾートホテルより迎えのバスが着き、さながら舞浜のTDCのゲート前の様な喧騒になっています。チケットには食事無しと食事付きがあり、食事付きはブッフェスタイルの食べ放題。このショーの会場が5000人くらい収容ですから、この食事スペースには少なくとも3000人は入っています。アラビア系の人々、中国、タイ、シンガポール、ベトナム、ドイツ、北欧、ロシア、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、顔を見るだけでも世界中から来ているように見えます。

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入り口でインド系かマレー系のお姉さんが席順を大まかに分けるのですが、中国系の人々は一カ所にまとめられています。話し声が大きくて、料理を食べ散らかすようなのですが、以前、香港でこの食べ散らかすように食べるのは中国(広東)では美味しかったことを意味するマナーと聞いた事がありました。僕はロシアからのおば様達グループと同じテーブルに付き食べ始めます。魚肉団子のニョグマム味の汁そばを持ってくると、それはどこにあるの?と聞かれました。フルーツやスイーツは大人気で万国共通です。まわりを見わたすとヨーロッパからの観光客はリタイアしたようなご夫妻が多く見られ、タイ、オーストラリアやニュージーランドからの観光客は若い学生グループで来ている様子です。

ここで感心したのはアラビア系の人々専門のスペースがあることです。そのスペースの食事はすべてハラルフードと言われる豚肉カエル、その他、豚を避けた料理が出ます。間違ってそちらへ行くと係の人が止めに来て、入らないように区切られていました。外見からはわかりずらい豚肉が入った料理をアラブの人達が食べないようにの工夫でしょう。
 

『プーケット・ファンタジー』のブッフェコーナー。世界中の人たちがいました。
象は頭が良さそう。
でも、やっぱりちょっと怖い……。

ここタイでは、昔から象を農作業や力仕事に使い一緒に生活してきたようです。その昔にはシャム(タイ王国)とビルマの戦争では象部隊が活躍していたとされています。確か記憶が正しければ、かのアレクサンダー大王の東征の時にも ペルシャを滅したアレキサンダー軍はインドへと進み、このアレクサンダー大王軍の東征を止めたのは、兵士達の戦意喪失だとも、象部隊との戦闘でギリシャの騎馬隊の疲弊からだともいわれています。さらには、敵対する古代インド王の象部隊が1000頭を超える規模だとの連絡が入ったからだ、といういわれもあるようです。どれが確かかは定かでありませんが、騎馬にとっては象は非常に大きくて装甲しているので、少しの弓などではびくともしなかったことでしょう。

この象部隊は今に続く、このアジア象達の祖先にあたるのでしょうか。

像は非常に頭が良さそうで、きちんと慣れた象は暴れたりせず、象使いに服従していました。自然の動物なので、たまには言うことを聞かないでぐずるのかとみていたところ、そんな様子はまったくありませんでした。

大きな象になると、人間を4、5人乗せても余裕で肩の高さも3mをゆうに超えています。

昔の記述には、アレキサンダー大王と敵対したインド王の象部隊は600頭から1000頭とあり、この象部隊が千頭以上の数で向かって来られたら、馬でなくとも逃げ出したのではないでしょうか。近くで見ると慣れている象とはいえ、やはり少し怖さを感じました。

『プーケット・ファンタジー』のショー風景、カメラ厳禁なのでイメージです。
●土屋孝元さんの展覧会

2012年10月15日(月)〜20日(土)まで『銀座ギャラリーゴトウ』にて個展開催!

『土屋孝元展』

開催場所:銀座ギャラリーゴトウ
TEL:03-6410-8881
住所:東京都中央区銀座1-7-5 銀座中央通りビル7階
営業時間:11:30~18:30、土〜18:30
休館:日(展覧会によっては日曜日も開廊 [12:00~17:00] 詳しくは 各展覧会の欄をご覧ください。)