from 山形 - 4 - ネパール料理の名店『ネワブトゥ』。

(2011.01.09)

これは恐らくどこの地方都市でもあることだと思うのですが、本格的な各国料理がなかなか田舎には根付きません。本場の料理を提供しようと意気込んで開店してはみたものの、その地に住む者たちのお世辞にも優れているとは言えない味覚に惑わされ、そして傍若無人な子供連れの客の要望に左右され、収益のためには止むに止まれずその要望に合わせ、気付いた頃には本物からほど遠い料理になってしまう。結局本場の味を求めた者には呆れられ、それ以外の客には飽きられ、店を維持できなくなってしまう。こんな店、田舎に住む皆さんならば覚えがあるはずです。

しかし今回紹介する『ネワブトゥ』は、こんな田舎の状況の中で、頑なに本格的な味を崩さずに頑張っている店なのです。オーナー・シェフの、ラクシミー・シャンカル・マナンダーさんは、1963年ネパールの首都カトマンドゥの生まれ。18歳で来日し、六本木で15年働いた後山形市に移り住み、ネパール料理店『スワヤンブー』を開業。その後6年前に山形の繁華街七日町で『ネワブトゥ』をオープンしました。店名の『ネワブトゥ』はネワール(Newa)の台所(Bhutu)という意味なのだそうです。ラクシミーさんの料理は、カトマンドゥに多い先住民族ネワール族の料理。本格的なネパールの家庭料理、特にネワール料理を供する、日本では数少ないお店なのです。
 

少々怪しい雰囲気の夜の『ネワブトゥ』。
ラクシミー・シャンカル・マナンダーさん。人の良さが顔に出ていますね。

少しだけメニューを紹介しましょう。まずは大根の漬け物「ムラコアチャル」。乳酸発酵したスパイシーな漬け物。これだけでビールがすすむ。ネパール風餃子「モモ」。決して冷凍を供しないというこだわり。前もって予約が必要。肉の味が凝縮。ネパール風焼きそばにチキンカレーを添えた「チャウチャウカリー」。米粉の麺と鮮烈なカレーが最高。もともとは隠れメニューであった「タレコバートキーマ」。ネパール風の炒飯(タレコバート)にキーマカレーを添えたもの。この組み合わせ絶品です。書いているだけで涎が(笑)。BGMに流れるネパール・ポップもエキゾチック。
 

大根の漬け物。これ以外にもジャガイモとキュウリの漬け物、メティーというスパイスの漬け物も。
これが「モモ」。餃子というよりは小龍包に近い。中心にあるタレがまた美味し。
「チャウチャウカリー」=「ネパール風焼きそば」+「チキンカレー」。麺の中に野菜がいろいろ入っています。
元々は隠れメニューであったという、「タレコバートキーマ」は病み付きになる逸品。

山形に来て頂いた多くのアーティストがここの味に魅了されています。日本を代表するブラジル・スタイルのギタリストS氏、日本のブラジル音楽界をリードする大御所N氏、日本を代表する映画監督N氏など、この味に魅了された人たちは必ずリピーターになります。問題はやはり地元民(笑)で、なぜかリピーターにならないのですよ。保守的な町に住む人は、味覚も排他的なのでしょうか。県外から山形にいらっしゃる方は、是非ともお試し下さい。そして地元民こそもう一度この店を見直しましょう。こんな本格的な店が山形にあるのですから。ところで辛いのが苦手という方、貴方は最初から向いてません。断念して下さい(笑)。

時間があれば必ずここに来る有名ギタリストS氏。
Nさんはご夫妻でここの大ファンです。
「まずいな、これは」と喜ぶN監督。美味ものを食べると「まずい」と言います。

 

『ネワブトゥ』

住所:山形県山形市七日町2-2-5
電話:023-622-5170
営業時間:17:30~25:00
定休日:日曜日
やまがたコミュニティー新聞「編集長インタビュー」