from 京都 – 1 - 細見美術館で『雅の意匠〜かぐやの婚礼調度と雛道具』展を。

(2010.03.25)
「かぐやの婚礼調度」から 竹蒔絵 回桶/江戸中期婚礼調度に多様された蒔絵は、漆器の装飾でも特に華やか。漆で書いた下絵に、金粉をまいて、研ぎ出す技法。ものすごく細かく、根気のいる作業です! トレースに失敗したら、最初からやり直しなのです。

「日がな一日アカデミックに過ごせる場所」はどこですか?と聞かれたとき、私は必ず、岡崎という場所をオススメすることにしています。祇園〜知恩院から青蓮院をぬけ、30分程度。散策がてらに歩いていると、趣のある煉瓦の建物や大きな赤い鳥居が見えてきます。平安神宮をはじめ、美術館や図書館、動物園などが集積している文教地区。それが岡崎なのです。疏水沿いの並木道もいい雰囲気で、これからの季節は、お花見なども素敵。そんな中で、こじんまりしながらも、ひと際スタイリッシュに見えるのが細見美術館です。琳派のコレクションで有名な美術館ですが、カフェやミュージアムショップも使い勝手がよく、大好き場所の一つなのでした。

2月20日より雛祭りの企画展が開催される!と御案内いただいて、内覧会に行ってきました。展示は、江戸時代の雛道具が中心ですが、見ものは、蒔絵の老舗、象彦の協力による「かぐやの婚礼調度」。もともと平安時代には3月3日に雛人形を飾る習慣はなく、桃の節句に雛人形を飾り、女性のための行事として定着するのは江戸時代前期からだと言います。清少納言の‘枕草子’の中には、「うつくしきもの」の項に、雛の調度があげられていて、それは化粧道具、器、簞笥、茶道具など美しい蒔絵で彩られたミニュチュアの道具類のことなのですが、そのうっとりとするような贅沢な美しさは、幼少時代を懐かしむノスタルジックな道具として、王朝の女性ならずとも、女性の心を魅了してやまないものですね。
 

竹蒔絵 耳盥/江戸中期 盥(たらい)なのに、このゴージャスさ!多分これで、顔や髪を洗ったりしたのでしょう。
竹蒔絵 手箱/江戸時代中期 一体何を入れていたのでしょう。あけるだけで、ドキドキしますね。
展覧会の感じです。ゆったりと落ち着いて見学ができます。美術館は3層構造で、階段を下りたりしながら、巡回するというスリリングな構造。
美術館の真ん中の吹き抜けにあるカフェです。基本カフェだけの利用もOK。メニューはイタリアンが中心で、ランチともなれば優雅な有閑マダムで一杯です!!

江戸時代は、将軍家、大名家の間で政略結婚が頻繁に行なわれ、姫君を送り出す側は、家の威信をかけ、豪奢な婚礼調度を持たせました。そのほとんどは、梨地、黒漆地に金蒔絵といったもので、ここで展示されている「かぐやの婚礼調度」が、まさしくそんな由緒を持つのです。江戸中期の大坂の豪商が注文したもので、黒漆地の余白を生かし、金粉で竹の葉や幹が繊細に描かれている揃えは目を見張るほどの逸品。上層階級の町衆らしい洗練された美意識が貫かれています。何よりも注目して欲しいのは、引き出しの中や目に触れない部分にまで、丁寧に細かくモチーフが施されていること。もし、現代に、このようなものを蘇らせるとしたら(うーん、技術的にはもう無理かもしれません。)、高級な外車が!ゆうに一台分は買えてしまうぐらいの価値観です。(一品で、ですよ!下世話な話で申し訳ありませんが…)。それだけで、もううっとり、くらくらの魅惑的な代物なのです。愛する姫君を嫁がせる想いとは?実はこの調度の雅な豪華さの裏側には、様々な複雑な想いがあったことも事実なのです。当時の女性の逃れられない運命を考えると、また、ため息がもれてしまいます。展示品を見ながら、あれこれ考え、今の時代に生まれてよかった、と思う今日この頃なのでした。

あ、ちなみに「この界隈で、お昼を食べるとしたらどこですか?」とも、よく聞かれるので、オムライスのおいしい『グリル子宝』、石釜ピザの『ダ ユウキ』、絶品カレーうどんの『日の出うどん』をオススメします。詳細はまた機会があれば、レポーとすることにいたしましょう!

 

『雅の意匠〜かぐやの婚礼調度と雛道具』

会期:平成22年2月20日(土)〜4月11日(日)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合、翌火曜日)
開館時間:午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで)
入館料:一般1000円、学生800円
会場:細見美術館
   京都市左京区岡崎最勝寺町6-3 電話075-752-5555
   http://www.emuseum.or.jp
3月28日(日)には、美術館内の展示室にて、京漆匠 象彦、社長の西村毅氏と細見良行館長によるスペシャルギャラリートークを行ないます。詳細はお問い合わせください。

 

オーナーで館長の細見良行氏。いつも笑顔の紳士ですが、琳派美術を語らせたら熱いのです! 館長の気さくな人柄も名物の一つですので、館内で見かけたら話しかけてみては? 作品について、色々語ってもらえたらラッキーです。
象彦の西村毅社長です。京都で350年にわたり蒔絵制作を行なってきた老舗のショップは細見美術館の並びにあります。会期中、普段目にすることはできない蒔絵の図案を展示中です。こちらもぜひ立ち寄りあれ。