from ヘルシンキ - 13 - 自分が自分らしくあるために必要なことは、犠牲にしない。by Johanna

(2010.09.03)

「フィンランド女性に学ぶ 幸せ力」
File.12 Johanna(34歳)

日本より一足先に、
ヘルシンキは秋の気配が漂い始めました。
朝晩のひんやりとした空気を吸い込むと、
爽やかな気持ちになる反面、
暗く長い冬の始まりかと少し気が重くなり、
去りかけの夏の空を
つなぎとめておきたくなります。
そんなヘルシンキからのリポート、
今回は、ITコンサルタントとして活躍する
Johannaさんを取材しました。

 
History:望みとは違う仕事でも、その経験や経歴が次のチャンスを生んでくれる。

子どものころから音楽の先生になるのが夢でした。
しかし、高校卒業後、音楽教師養成コースに進学しようと何度も受験したのですが、
合格できず。進路を変えざるを得なくなりました。
私が育ったのは、フィンランド北部の人口2万人ほどの小さな街。
街は高齢化し過疎化が進み、仕事はありませんでした。
一体何を学べば仕事のチャンスが得られるだろうかと、
専門学校のカタログを隅から隅まで確認して考えました。
そのとき目に留まったのが、コンピュータの専門学校でした。
全く興味のない分野でしたが、当時はインターネットが普及し始めた頃で、
この分野に進めば仕事があるかもしれないと確信。
その学校は故郷から遠く離れた首都圏にありましたが、
すぐさま電話して入学手続きをして、婚約中だった現在の夫と一緒に引っ越しました。

生活を維持するために、長時間のアルバイトの合間に勉強するという学生生活。
同世代の学生とは、逆の生活でした。
大変でしたが、仕事の内容はWEBサイトの管理だったので、
学校で学んだことをすぐに実践することができ、とてもよい経験になりました。
その後、さらに専門性を高めるために、工科大学へ入学。
入学してすぐに、現在のITコンサルタントの会社に就職が決まりました。
まだ卒業していなかったとはいえ「大学」という経歴があったことと、
実務経験が評価されたようでした。
働き始めると大学の勉強はなかなか進みませんでしたが、
子どもを出産して育児休暇を取得した際に、集中的に取り組んで、
無事卒業することができました。
一昨年から、ITコンサルタントチームのリーダーを務めています。

最初は苦手で興味すらなかったコンピュータの分野でしたが、
飛び込んでみたら、次々と新しいステップにつながりました。
自分の望みとは違う仕事でも、思い切って取り組むと、その経験や経歴が
必ず次のチャンスを生んでくれると信じています。

フィンランドのメーデー(5月1日)、「Vappu」のときの写真。この日フィンランドの人々は自分の卒業した学校の学生帽をかぶり、ピクニックをして盛大に春の訪れを祝います。

 
Turning Point:子どもと向き合うこと。

子どもたちの誕生は大きな出来事でした。
もともと家庭的なタイプではなかったので、子どもと向き合うことは、
自分自身の新たな面を発見することでもありました。
子どもたちとの生活は混乱だらけで、思うようにいかないことの連続。
混乱を受け入れることを学びました。

子育てについては、地方から出てきたので親の助けは得られません。
自治体の保育サービスをフル活用しているのと、夫も育児休暇を取得するなど
夫婦で協力しながら、仕事と両立してきました。
夫の仕事はオフィスビルのレストランのシェフで、夕方には帰宅できるので、
家事を積極的にこなしてくれます。料理をするのは、ほとんど夫です!(笑)

会社の育児に対する協力体制が手厚いことにも、大変救われています。
私の子どもは2人ともアレルギーを抱えていますが、もしも子どもが体調を崩したら、
会社を休めるのはもちろんですが、どうしても出勤しなければならない場合は、
会社がベビーシッターを雇ってくれるという制度があります。
会社が提携しているベビーシッターのセンターに電話すれば、
子どもが面識のあるベビーシッターを派遣してくれます。
子どもを2人育てながらも仕事を続けてこられたのは、
この会社の柔軟な体制のおかげでもあります。
より多くの会社がこのような柔軟な体制になり、
仕事とプライベートの両立がしやすい社会になるようにと願っています。

家族写真。

■Happiness:家族や仲間との時間。そして、自分のための時間。

家族や仲間と過ごす時間が幸せです。
そして、自分の趣味の時間も大事にしています。
趣味はガーデニングと、バリトンの演奏。
庭の手入れは、リフレッシュするための最高の時間です。
それから週に1度、金曜の夜に音楽仲間と演奏の練習をしていますが、
これは1週間の疲れをリセットする大切な時間です。
どんなに忙しくても、この時間は確保するように調整しています。
 

Johannaさんにとっての大切な場所、庭には家庭菜園のスペースも。

 

■Dream For Next 10 years:子どもたちの健やかな成長と、夫婦で過ごす穏やかな時間。

子どもたちは幼い頃から重いアレルギーに悩まされてきたので、少しでも良くなって、
気軽に旅行できるようになればと思います。
そして2人が健やかに育ちそれぞれ進学して、穏やかで静かな時間が訪れるのも
楽しみにしています。今は毎日大騒ぎなので。
先日、故郷で暮らす母を家族で訪ねたとき、母に子どもたちを預けて、
ほんの少しの時間だけ、夫と2人だけで過ごしました。
出かけた先はスーパーでしたが(笑)、それでもとても楽しくて、
夫婦2人だけで過ごす時間も大切にしなければと感じました。

 

■Message:自分が自分らしくあるために必要なことは、犠牲にしない。

知らないことや興味のないことにもチャレンジすることが、
次のステップにつながると思います。
それから、少しのわがままは、幸せを維持し、精神的なバランスを保つために役立ちます。
たとえば、先ほどお話したように、私は毎週金曜日の音楽活動は、どんなに忙しくても、
続けています。
ストレスから解放されて、気持ちよく働き、家族と過ごすために必要だからです。
自分が自分らしくあるために必要なことは犠牲にしない。
幸せであるために大事なことだと思います。

 

 

■取材後記

夢だった音楽教師への道での挫折から一転。未知だったコンピュータの世界に飛び込み、
キャリアアップを続け、プライベートとのバランスも維持してきたJohannaさん。
ポジティブでしなやか、大切なことは守り通す強さが印象的でした。

フィンランドの美しき夏の風景、トゥルクにて。

リポートの最後にご紹介をひとつ。
フィンランドで活動している日本人のおともだちが、
LINKONKAというユニットでテキスタイルデザインをしています。
爽やかで瑞々しいデザインが印象的です。
詳しくはHPをご覧ください!

LINKONKAのランチョンマット

 

※この内容は、2010年8月取材当時の情報です。