シェアリング・エコノミーと新しい旅のかたち-3- カルチュラル・オリンピアードから
カルチュラル・ツーリズムへ
(2015.04.30)
ロンドン五輪で注目されたのはシェリング・エコノミーだけではありません。それは五輪の文化・芸術プログラム「カルチュラル・オリンピアード」から「カルチュラル・ツーリズム」へのムーブメント。地域文化に目を向ける新しい旅のスタイルです。
競技の中にアートを!クーベルタンの意志を継ぐ
カルチュラル・オリンピアード。
ロンドン五輪が残したムーブメントにもうひとつ面白いものがあります。それはカルチュラル・ツーリズム。グレーター・ロンドン・オーソリティ(ロンドン市庁 以下GLA)が中心となり、2008年〜2012年に開催したオリンピック・フェスティバル・プログラム、カルチュラル・オリンピアードからの流れです。
カルチュラル・オリンピアードは、かつて行われていたオリンピックの芸術競技にそのルーツを持つ芸術・文化プログラム。古代ギリシャのオリンピックでは、精神と肉体の調和のとれた発達を促すため、運動競技とともに芸術競技も行われていた。それを理想とした近代オリンピックの父 ピエール・ド・クーベルタンは、両方の競技が行われる大会を推進。現在の五輪大会でも芸術競技の精神を受け継いだカルチュラル・オリンピアードが、必須プログラムとして組み込まれています。特に2012ロンドン大会はこれに力を入れ、芸術・文化関連のイベント、パフォーマンス、展示が行われました。
「カルチュラル・オリンピアードではアート、カルチャーにおいて傑出したものを紹介することが重要でした、それによって文化のレベルアップを図りたかったのです」と語るのはGLA観光戦略官のジャッキー・マクナーニーさん。
ジャッキーさんいわく「国の威信をかけて世界中からクリエイティビティに溢れたアーティストたちが集められ、ロンドン市のみならず、南はシリー島から北はシェトランド諸島に渡るイギリス全土で、音楽やダンス、シアター、アートなどのイベントが行われました。4年間で18万のプログラムが実現され、4300万もの人々が、オーディエンスやパフォーマー、もしくはボランティアとして参加、体験、一部の演目は海外公演も行いました」
ジャッキーさんは続けます。「『ロンドン2012フェスティバル』のプログラム、サーペンタイン・ギャラリーで行われたヨーコ・オノの展覧会は、3ヶ月の期間に渡るものでしたが、長蛇の列ができる人気でした。それだけでなく展覧会は、観たその後に、劇場に行こう、ショッピングに行こうなど、その他の経済活動にも繋がったのです」
つまり、カルチュラル・オリンピアードは、各地で刺激的なプログラムを行い、非日常的なシーンを創り出すことによって、ロンドンの王道観光地を、さらに魅力あるものにするだけでなく、ローカルなスポットへ人々を連れ出すことに成功。地域文化に着目して旅する、カルチュラル・ツーリズムを育てることになったというのです。
カルチュラル・オリンピアードからカルチュラル・ツーリズムへ
同じくGLAの文化観光官マイク・クルーリーさんは言います。「『ロンドン2012』は、観光客のみなさんに、より新しいカルチュラル・ツーリズムのビジョンを、アピールできたと思います。ロンドンへの観光客の10人中8人は、文化遺産に魅力を感じてを訪れている。彼らはバッキンガム宮殿ツアーのような典型的な観光もよいが、よりリアルでローカルなロンドンを体験したいと思っているのです。たとえば、ロンドン自然史博物館はフリーチャージで、土曜日の午前中など、3時間待ちの人気です。そんな午前中は、歩いて20分の他の美術館を見て、午後すいたら自然史博物館行くなどして、より多くの人にローカルなロンドン・カルチャーを体験してほしいと考えています。」
いうまでもなくロンドンは、ヨーロッパの観光産業をリードする存在で、英国の他都市のみならず、ヨーロッパの各国へのゲートウェイであることは、2012年以前から変わりません。ロンドンへの観光客は、ロンドン五輪の後、さらに増える傾向にあります。2013年には1680万人に上り、2014年は1800万人になる見込み。おのずとロンドンから各地に向かう観光客も増加の傾向だといいます。
●London Littere More
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