from 鳥取 – 51 - 鳥取の夏の特産イワガキ漁は、まさに「海中きこり」の世界だった!

(2010.07.05)

コーン、コーン、コーン。
静寂の海底に打音が響き渡る……。
深さは15m、見渡す限り砂の海底が続く青一色の世界。
ふたりの漁師が、十字型の魚礁に張りついている。
きこりさん、ナニシテル?

十字礁と漁師。イワガキの餌となるプランクトンが漂い、海中は霧の中のようにかすんで見える。

漁師たちはコーン、コーンと金づちで巨大なカキを獲っているのだ。
魚礁にしがみつく姿は、まさに海の中のきこりなのである。

海中きこりは石のみと金づちで叩いてイワガキを獲る。

カキは、「R」のつかない月(May, June, July, August)は
食べてはいけないのが一般的、であります。
しか〜し、ここ鳥取の巨大なるイワガキは、
普通の「マガキ」と違い、このRがつかない5〜8月こそ、旨いんです。
イワガキは鳥取県の沿岸の浅いところで、
素潜り漁で獲られているのがこれまでの獲り方。
例えば、鳥取市青谷の夏泊という地区では、
山陰地方で唯一、海女漁でイワガキを獲っている。

ところが、近年は水深10〜20mもの深場で空気ボンベをかついで獲る
ニューウェーブが登場した。
深い海底で人間に獲られることなく成長したイワガキはすこぶる大型で、
大きいものは20㎝、重さは1kgにもなるらしい。
ひょっとしたら日本一深いところで獲れるイワガキ、かも知れない。
しかも、旨いのだ。

神話「因幡の白兎」の舞台である鳥取市の白兎海岸から西へ車で5分のところに、
酒津(さけのつ)と呼ぶ漁業集落がある。
この地区でも今年からボンベ潜水によるイワガキの漁獲が始まった。
漁場は漁港から西へ向かうこと漁船で約5分、
冒頭の「きこり場」へと到着する。

きこり場ではコンクリート魚礁に付いているイワガキを獲っている。
そもそもこの魚礁、ヒラメの稚魚を増やすために沈めたもので、
通称「十字礁」という。
ここの海域だけで間隔を置いて数百はあるらしい。
まさに、砂浜に眠るイワガキ団地なのだ。
当然ながら十字礁の周りにはヒラメの稚魚やイシダイなどが泳いでいるのだが、
イワガキ漁師の居川さん、樽谷さんはそんな魚たちには目もくれず
夢中になってイワガキを叩いている。
なぜなら、ボンベ潜水で許された海中滞在時間は約40分だからだ。
この日はふたりで200個、箱数にして8箱の水揚げ。
この地域では一人あたりの漁獲量は4箱が上限と決まっている。
イワガキを獲りつくさないためのルールなのだ。

そうして獲られたイワガキを手に取ってみる。
日本海のディープな海で豊穣なるプランクトンを食べまくり野性的なる成長を遂げ
たその大きさよ、何と、ボクの26㎝の右足に匹敵したのである。

イワガキとボクの足を並べてみる。

獲ったイワガキは漁港に引き揚げ、ナタでたたいて付着物を取り除く。
カキの表面や裏は、海藻、ゴカイ、フジツボやヨコエビなど
魑魅魍魎(ちみもうりょう)たる生物が住みかとしている。
彼らを除去する作業は、セリにかけるまえの重要な工程なのだ。
コンコンと叩く音が漁港の上屋に鳴り響く。
うわっ、ここにも、きこりがいた。
数えてみると、ひとつのイワガキあたり、約70回ぐらい叩かれている。
獲るときは海底で5回ぐらい叩かれているはずなので、
箱詰めされるまでに最低75回は叩かれているのだイワガキ君は!

イワガキの殻掃除作業。4人で行っていた。

形の良い平らなカキはヒラガキと呼ばれ、身入りが良く食べやすいことから、
鳥取県が誇るイワガキブランド「夏輝(なつき)」のラベルをまとい、
別立ての箱に並べられる。

夏輝ブランドのラベルを貼ったイワガキ。一箱で数万円なり。

イワガキは大きいからといって決して大味ではないのだ。
ノーマルガキ(マガキ)以上に豊富なグリコーゲンを含み、
口に含むと白いミルクのようなエキスが口イッパイに広がり、
やみつき打率9割はいくであろう、そんな旨さなのだ。
食べ方は、殻を開きレモン醤油をぶっかけて
生で食べるのがご当地では最高の食べ方。
一口では食べられない大きさなので、少し切っておくこともあり。
私などは包丁を入れて流れ出すミルキィなエキスがもったいなくて、
そのままかぶりつくことにしている。
フライにしてもよいが、このディープなイワガキ、
巨大につき巨大なフライができあがる。
フライでも、少し切っておく必要があるかも知れない。
焼いても、煮てもその大粒はしぼむことなく美味しく食べられる、
あぁ旨いこれホント!。

イワガキ料理は生が一番!レモンを添えて……。

鳥取県のイワガキは、全て天然モノ!
外洋に面した場所で獲っているので野性味たっぷり!
貝に毒がないか鳥取県が毎月検査を行っているので安心です!
この夏、きこり漁師が獲った「夏輝」を是非是非ご賞味あれ!

 

岩ガキ/鳥取県観光情報

http://yokoso.pref.tottori.jp/dd.aspx?menuid=1247