from パリ(たなか) – 39 - レセピセrécépissé受領顛末記。

(2010.02.01)
雪の朝、サン・ミッシェル橋から見るサント・シャペル。遠くに霞んでいるのはポン・ヌフ。雪景色のパリの風情をゆっくり楽しむ暇もなく、警視庁へ突撃だ。寒くてカメラを素手で構えてられない、って言うのが本音ですが。

昨年の10月、パリ警視庁に滞在許可証の申請をしたことは、以前(fromパリ-27-こちらパリ警視庁)に書いたが、その時の担当官は「12月15日までにはレセピセ(récépissé仮許可証)を発行できるから電話で連絡する」と言った。しかし、期限の日になるまで何の連絡もない。フランス風のいいかげんさにはだいぶ慣れてきていたので、またかと思う一方、申請した時に何も控えを受け取ってないので、果たしてちゃんと受理されているのか、一抹の不安も頭をよぎる。

翌16日もムダとは思いながら電話を待ったが案の定連絡なし。イナバさんに頼んでこちらから問い合わせの電話をしてもらう。しかし何度かけても話し中で繋がらない。しょうがないから、直接窓口へ行って聞いて来ようと計画した。
 

警視庁の中庭を通って、Fの階段から2階にある移民局の窓口へ。古い建物にモダンなデザインのサイン計画がわかりやすい。もう3回も通ったので、すっかり馴染みのスポットになったが。
歩道も雪で真っ白。セーヌ沿いの古本屋もきょうは休業。

17日、パリは一面の銀世界。数日前からのシベリア寒波の影響で、この朝は都心でも3センチほどの雪が積もった。なんだか吉良邸へ向かう赤穂浪士の気分になって、零度前後の寒い雪の朝、2カ月前に行ったパリ警視庁へ向かう。荷物検査を済ませ、移民局のコンピタンス・エ・タロン窓口へ行く。担当官にパスポートを渡し、約束の期限が過ぎても何も連絡が来ない状況を伝える。(もちろんイナバさんに話してもらった)担当官は「申請者が多い上、年末で混んでいて、処理が遅れている」と一通りの言い訳をして、事務室へ調べに行った。しばらくして戻ると、「レセピセはいま制作中なので出来次第、たぶん明日には電話で連絡する」と伝えた。明日(ドゥマンdemain)というフランス語が、なんと心地よく響いたことか。

だが、ここでひとつ問題が発生した。私が12月28日に一時帰国する旨を伝えると、レセピセのみでは再入国が出来ないのでヴィザが必要だと言う。(私のヴィザの期限は2010年1月3日までだった)そのヴィザの取得には、申請書に私の帰国命令書を付けて1週間ほどかかるらしい。レセピセは取れそうだが、ヴィザも必要だとは、一難去ってまた一難。とにかく、すぐ東京に連絡して帰国命令書を送ってもらわないと28日の便に間に合わない。最悪の場合、航空券の予約変更が濃厚な気配。あーァ気が重くなる。

さて、翌18日、この日も雪は降り続く。電話は、待てども来ない。やっぱりねえ、フランスって口だけの国だから、“あした”を文字通り信じた私がいけなかった。フランス語の明日は“来週”の意味か。また騙された。気持ちが収まらないので、駄目もとでイナバさんにメールも出してもらったが、まあ返事は期待出来ないでしょう。18日は金曜日、こうなったら週明け月曜日に再度、警視庁突撃しかない。

そして月曜日、21日の朝10時30分。パリ警視庁移民局の入口にはすでに長い列があった。年末の月曜だし、駆け込み申請が多かったのか? ここで15分ほど待って中に入る。何度も通い慣れた2階の受付窓口へ行くと、ここにも5組ほど先客が並んでいた。30分近く待って私の番になり、パスポートを渡す。担当官が部屋へ調べに戻り、10分ほどして出て来た。「レセピセは出来ているから、あと5分待って」と言う。よかった。でもフランスの5分は曲者らしく、30分以上待って、ようやくレセピセを受領する。長い道のりだった。しつこく粘らないと、何事も前に進まない国だ、フランスは。

先週とは違う担当官だったので、一時帰国のヴィザの件を尋ねる。彼女は、日本には必要ない、レセピセだけで問題ないと言う。役所でも担当者によって、言うことが全く違う国なのだ、フランスは。でも何だかねえ、一体どっちを信じたらいいのだ。念のため、警視庁の中にあるヴィザセクションへ行き、その道のプロに聞いてみることにした。すでに12時を過ぎていたが、ここもヴィザを求める外国人で混み合っていた。15分くらい並んで、受付の女性に質問したら、ヴィザはいらない、との確認が取れた。ただし、あなたのレセピセの有効期限(2010年2月28日)までにフランスに戻るよう注意してね、と優しく言われた。ここで、またもや疑問が浮上。貰ったばかりのレセピセの発行日をよく見たら、2009年11月30日になっている。今日は12月21日だぞ。連絡もしないまま、ずっと引き出しで寝てたってことか。まったく、フランスって国は。

中央のペラ紙の証明証がレセピセ。二つに折ってもパスポートより大きく、とっても携帯に不便です。正月に一時帰国して、運転免許証の更新手続きに鮫洲の試験場へ行った。ついでに国際運転免許証の発行手続きもしたが、流れ作業のようなスピーディーな事務処理と、サービスの良さに感激した。日本は素晴らしい国だ。きめ細かいサービスを武器にした観光をもっと産業化すれば、世界のどこにも負けないと思うなあ。

ということで、レセピセはひとまず受領した。こんなこと日本だったら普通に済むことなのに、なんでこんなに手間暇かけなくちゃいけないのかね?フランスでは。作業分担とか情報共有とかのチームワークが、フランスの役所には全く欠落していることがよーくわかった。これも個人主義の古き良き伝統か。しかし、これほど事務処理が苦手だったら、いっそ一度で正式の許可証を出せば関係者みんなが幸せになれるのに。ところで、先日イナバさんが当局へ出した問い合わせメールの返事が、なんとレセピセを受け取った日の午後になって届いたそうだ。Monsieur Tanaka  a retiré son récépissé ce matin!(ムッシュ田中は、レセピセを今朝受け取ってる!)当局の迅速なレスポンスに「こちらの18日の問い合わせに対する21日夕方のご親切な回答に感謝します」と御礼の返事を書いたということだ。
 

警視庁に行った帰りに、レセピセの目処もついたことだし、サン・ミッシェルのイタリア料理店でイナバさんと祝杯をあげた。寒波襲来と電力不足でノルマンディーでは停電発生というニュースを朝のテレビで見たが、この店でも席に着くやいなや停電、真っ暗。どうやら電力の使い過ぎでブレーカーが落ちたらしく、じきに回復した。レバーのパスタ、美味しかった。食べごたえあったなあ。
パリは正月も寒波に襲われてると聞いた。運河も凍る寒さらしい。とはいえ、冬至も過ぎたし、ミモザの咲く春は確実に巡って来る。レセピセの次には、正式の滞在許可証が発行されるはず、だ。