京都発のジュエリー作家、今井訓子さんの新作展『Kyo 京』で見つけた“しなやかな強さ”。

(2010.07.29)

京都がもっとも暑いときといわれる祇園祭の頃。このところ気になっている作家の新作展示会が開催されるというので出かけてきた。
 

ちょうど山鉾の巡行の日。ホテルオークラ京都の前は「辻回し」が行われるかっこうの観光スポットとなっていた。しばらく眺めていたけれど、確かに暑かった!
手元に届いた案内状とポストカード。涼しげなイメージで目を引く。

ジュエリーデザイナー、今井訓子さんのブランド『IMAIkuniko KYOTO』の新作展『Kyo 京』。京都に暮らす日々、心に残った「今日」を表現しているという。京都生まれ、京都育ちの今井さんは同志社大学で美学芸術学を専攻。在学中より日本画を描きながら、家業である着物の制作にかかわっていた。

大学卒業後はジュエリーメーカーにデザイナーおよび制作スタッフとして勤務。その後独立し、個人でオーダージュエリー、オリジナルジュエリーのデザインと制作を行っている。

パールを得意な素材とする彼女は、タヒチアンパール・トロフィー・インターナショナルのイヤリング部門で3位に入賞するなど、実力派。伝統とモダンの調和をジュエリーで表現している。

以前、彼女の『望 Bow,Nozomi』という、短冊を模したK18イエローゴールドの立体的なネックレスとイヤリングを偶然、見る機会があった。その、繊細でありながら大胆な発想と、確かに手で作られたという丁寧なぬくもりに、いつかこの作家と会ってみたいとずっと思っていたのだ。

場所はホテルオークラ京都のイムラアートジェム。国内外の美術品を長年扱い、今井さんを始めとする勢いあるデザイナーによるオリジナルファインジュエリーにも力を入れている。

店内に足を踏み入れると、今井さん自身が出迎えてくださった。思った通りのやわらかい物腰。今回は、パールをメインの素材に、リング、ネックレス、ペンダント等が発表されている。

左が、私に淡水パールのロングネックレスを見立ててくれる今井さん。カジュアルな服装にも、ドレスアップした時にも合いそう。右はイムラアートジェムの井村佳代子さん。

パール以外に目を引いたのが、今回のインビテーションカードにも印刷されていた作品「柳 Weeping willow」。K18のイエローゴールドを使った立体的なネックレスとピアスがとても素敵。作品について今井さんに伺うと、
「春先、鴨川べりの桜の木を見ていたとき目に入ってきたしだれ柳の新芽の明るいグリーンがまぶしくて、早春のきらめきってこんな感じかな、と心に残ったんです」とのこと。

強い風もさらっと受け流して自分はしっかりと立ち続ける、そんな柳に心を重ねた今井さんは、次回作のモチーフに自然にそれを選んでいたのだそう。「ゴールドでかたどった葉の形は、風になびく柳の葉であると同時に、向かい風をさらりと交わす私達の心の形なんです。ピアスには、きらりと光る朝露に見立てたダイヤモンドをつけ、どんな時も失われない希望であったらいいなと…」

今井さんの右のトルソーにかけてあるのが「柳 Weeping willow」のネックレス。その手前がピアス。彼女が身につけているのは南洋パールのロングネックレス。他にも、珍しい針水晶のリングなど、まさに“伝統とモダン”が融合した今井さんの世界が広がっていた。

「和を意識していらっしゃいますか?」と聞くと、「特に意識したことはないのだけれど、よくそのように聞かれます」との答え。実家が着物を作っていた家で、学生時代から日本画も勉強していた。そして生まれも育ちも京都…そういう環境から、自然に和が作品に表れるのかもしれない。

「けれど、決して和だけにとらわれることなく、これからも自由に自分の感じたことをジュエリーを通して表現していけたらと思っています」

穏やかな表情の中に宿る確かな意志。それはまるで、彼女が表現した柳のようにしなやかな強さだ。今井訓子さんという作家の感性を通してジュエリーで表現される世界を、これからも追い続けたくなった。

今井さん、井村佳代子さんと、イムラアートジェムスタッフのみなさん。右端は、京都発の現代アートを扱うイムラアートギャラリーオーナーで佳代子さんの夫・優三さん。

 

イムラアートジェム
IMAIkuniko KYOTO