from 香川 – 8 - 香川県で産声をあげ約50年! つくり手の魂が宿る楽器「鳴子」

(2010.07.27)

「鳴子」の誕生は香川県!

「鳴子」という言葉を耳にしたときに、まず最初に思い出されるのは高知県の「よさこい祭り」や北海道の『札幌YOSAKOIソーラン祭り』をイメージする人が多いと思います。よさこいの発祥地でもある高知県だから、当然「鳴子」の生産も、昔から高知県で行われているものと思っていました。
ところが、調べてみると意外や意外!!

よさこい祭り参加の、必須条件の1つである鳴子を持つこと、その「鳴子」は、実は、香川県の琴平町で産声をあげていたようなのです。おそらく知っている人は少ないでのでは? 全国でも珍しい鳴子生産者の内で、最も古いというから驚き!
ものづくり香川の戦力はここにもいたのです!

創業当時の鳴子。多くの汗を感じます。

数少ない鳴子製造・販売に長年携わる生産者『よさこい鳴子屋』は、金刀比羅宮で全国的に名高い場所、香川県琴平町にあります。金刀比羅宮から車で約 5分~10分くらい南下した琴平町五条の、のどかな田園と住宅街に囲まれた場所に、鳴子の製作場兼自宅があります。

 

「鳴子」を作り続けて50年『よさこい鳴子屋』

創業1959年当時、日本は敗戦後約10年が経ち、日本経済が飛躍的に成長を遂げつつある時代、つまり高度経済成長時代に突入した時期であり、経済振興、地域の活性化を目指した新しいお祭りの創造が全国各地で行われていた。高知のよさこい祭りもその1つ。

家業で木工芸を営んでいた岡部さん親子は、香川県と高知県を結んでいるJR土讃線の列車に揺られながら、父が彫った土佐犬の一刀彫を、高知県内へ懸命に売り込みに行っていた。息子の博美さんの話によると、ある日、高知の観光組合の人から、木工芸を営んでいた父に、鳴子をつくってみないかという話をもちかけられたのが、鳴子をつくり始めたきっかけという。

岡部親子で高知県へ売り込みにいっていたという土佐犬一刀彫。

鳴子をつくりはじめてからは、一刀彫はやめ、鳴子とひな人形のひな壇や節句物を同時につくって問屋へおろし生計をたてていました。

当初は、主にお土産物として販売し、高知県のホテル土産物売り場や宴会場などに商品が並び、宴会の時には、お膳1つ1つに鳴子が添えられていた時期もあるといいます。

また、昔は今ほど機械も充実していなかったため、すべて手作業。一箱つくるのに約1ヶ月ほどの日数を要し、出荷するまでに手間暇ともにかかっていましたが、今は機械を使用。分業、分担して作業に取り組んでいるので、一箱つくるのに約1日~数日あればできあがるようになりました。

資材は高知県産ひのきを使用、仕入れているひのきは、廃材。家を創る時の建材に使用される柱以外の部分を利用。

資材は、高知県安芸郡や室戸など数カ所から仕入れており、家内業で、9人で手分けして作業しているため、夏前の最盛期は大忙し。

 

作業場の風景と工程

日本の産業を支えてきた家内工業の雰囲気漂う作業場

これぞ巧の技。手先の感覚が、出来栄えを左右する。

昔は、鳴子を問屋へ卸す割合は、踊り用3割に対して、ホテルや宴会場の土産品用7割でしたが、現在は逆転し、踊り用が7割に対し、土産品用は3割に留まっているといいます。やがて、よさこい祭りが、高知から全国へと広がりをみせると共に、大手企業や問屋からの鳴子の注文が増えていきました。

では、高知よさこい祭り発祥地の背景を少し掘り下げてみましょう。

彩色前のスッピンの鳴子。これから色付けを行って、命を吹き込む。

彩色用の塗料と着色用機材。

 
高知よさこい祭りの成立

高知のよさこい祭りは、1954年(昭和29年)から高知市商工会議所内に事務局を持つ「よさこい祭り振興会」が主導となり、祭りの創造に動き始めた。
第1回目は「高知市民の健康と反映を祈願する市民祭」として挙行。参加チーム21。

目指すは、隣県、四国・徳島の伝統のある阿波踊り!
発足時の目的は、地域社会の経済を活性化させる事は勿論のこと、商工業振興の為だけでなく、市民も一緒に参加し楽しめる祭りとし、阿波おどりのように永続的に進化させ発展させ、時代の流れとともに、新しいものをどんどん創っていくこと。
名称は、市民生活に溶け込んでいる高知にふさわしい「よさこい」(今晩来てねの意味)を生かし、よさこい祭りとしたようでう。 
曲は、高知県民謡の『よさこい節』を取り込んだ、作詞作曲・武政英策の『よさこい鳴子踊り』。伝統音楽が地域住民の音楽行動と癒し効果を生む重要なポイントになりました。

伝統のお座敷踊りであった「よさこい踊り」から、新しい時代の誰でも楽しめる踊り、徳島の阿波踊りに負けないような新しい踊りの創造への表れでもあったと思われます。伝統ある阿波踊りに対抗するために、素手では…と、武政英策氏が考案したのが「鳴子」。昔、「鳴子」は二期作が可能な田畑の農作物を、スズメや外鳥から守る為に、田畑の周囲に吊るし、スズメ脅しの鳴り物として使用されていたものをベースに考案されました。

 

鳴子の成立

ある本の一説によると、素人野球の各社対抗戦に音楽監督である武政氏も「新興キネマ」チームの応援に出て、カスタネットに代えて鳴子を振ったことが最初だとか。
色は、赤・黄・黒で、特許は習得しなかった。その後香川県のチームが特許を取ったが、高知の生産に対しては、遠慮して特許料を請求しておらず、20年経過したので、香川の特許は消滅しているらしいです。この一説が正しいのならば、香川県チームも昭和34年4月13日に施行された商標登録をしておけば、讃岐の盆踊り唄『いちごまいた』の踊りに鳴子が起用されたり等、香川県のお祭り自体も今と異なる進化を遂げていた違いないでしょう。

 

踊りの進化ともに鳴子も多種多様化

第28回(1981年)よさこい祭りは、統一音楽であった追手筋本部競演場の踊りが解禁となり自由化に拍車がかかり音楽を大幅にアレンジすることができることになりました。

その為、参加者が今まで以上に増し、第30回から自治体の補助金が大幅に増え、祭りも大型化していった。1992年に「YOSAKOIソーラン祭り」が札幌で開催されたことを皮切りに、全国各地によさこい祭りは伝播し、200ヵ所以上で開催されるように。また現在、躍動は伝播し、海外はオーストラリアやポーランド、ベトナムでも盛んに踊り(ダンス)として波及しているようでです。

日本国内では、学校教育としても広がりをみせ、埼玉・東京・京都などは、運動会で踊りをダンスとして、よさこい踊りは取り入れられており、学校指導でも受け入れています。

高知から発祥した、よさこい祭りも北は北海道から南は沖縄までと、踊りのチーム数も増えると同時に、楽調も、サンバ調、ロック調、サルサ調と多様なふりつけになってきた。音楽が多種多様にあれば、同時に鳴子のデザインにも遊び心が増し、今では大人から子どもまで楽しめる様々なデザインに多様化しています。

岡部さん曰く、「鳴子」の色は、昔は誰もが知っている定番の色である赤色・黄色・黒色だったが、今やデザインは様々!取引のある問屋さんからの提案で、「きらきら光もので何かないかなあ」というのが始まりで、昔は、バチに金粉をあしらっていたのであるが、使用が長くなれば色あせなどで変色してきた中で、金粉に変わるものは何かないかと探していた所、ラメと出会う。これなら綺麗でお洒落、若者受けもし、老若男女に評判でした。

今や、バチのデザインは、キャラクターもの、動物柄、歴史上の人物、チーム名の入ったものなど、色の配列も様々。

いろんなバチデザインや、バチのみならず団扇鳴子や扇子鳴子など新しいアイデアが溢れてくることにより、岡部さんの娘さんは、目標とされる会社であり続け、鳴子造りの先端でいたいとの思いを語ってくれました。

 

鳴子が、こんなにいっぱ~い!!


かわいいデザインの鳴子たち。見ているだけでよさこいを踊りたくなるね。

岡部さん親子。

岡部さんよりメッセージ

梅雨空のトンネルをくぐり抜け、ようやく夏への扉が開けられた!! 躍動感溢れる音楽に合わせ、踊り子達が乱舞する季節! 鳴子のバチが祭りの熱気を掻き立てる! 今年もチームの力で地域をそして日本を盛り上げようじゃないか!!

 

最近では若手の伝統工芸士さんも増え、斬新なデザインや作品も目にすることが多くなってきました。新しい時代を創り上げていくのは私達。地域の伝統工芸を守り、後世へ継承する。

「伝統工芸は、守るだけでなく新しく創り上げていくものだ」と感じました。
四国には、ものづくりに徹している人達も多くいて、大いに可能性に満ちた輝いた国。

今年も四国四県のお祭りにますます拍車がかかり、大輪の華が各地でうちあげられそうで楽しみです。

次は、「うどんの王国 香川」とイメージのギャップはあるかもしれませんが、瀬戸内海に浮かぶ島々の多島美がおりなす世界から「100日間の希望に満ちた冒険」アート界の静と動の感動を皆さんにお届けしたいと思います。この夏はみんなで頭を解放させよう~。

 

鳴子の製造・販売所はこちら

香川県
よさこい鳴子屋

高知県
社会福祉法人 小高坂更生センター http://www.attaka.or.jp/yosakoi/about_yosakoi.html
(主に、ネット販売、チームからの受注)
鳴子屋 http://www.narukoya.com/
やまもも工房 http://www.yosakoinaruko.net/

 

四国夏祭り 開催期間

香川県 高松祭り http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/kankou/45summer/45matsuri.html 
2010年(平成22年)8月12日(木)~8月14日(土)
高知県 よさこい祭り http://www.attaka.or.jp/yosakoi/
2010年8月9日(月)~8月12日(木) 
愛媛県 松山まつり http://www.jemcci.jp/m-festa
2010年8月11日(水)~8月13日(金)
徳島県 阿波踊り http://www.awaodori.net/
2010年8月12日(木)~8月15日(日)