from パリ(たなか) – 13 - ジャパン・エキスポはパリのアキバ?

(2009.07.27)

ニッポンのマンガの祭典「ジャパン・エキスポ」も今年で10年目になるらしい。東京でその人気のほどを噂には聞いていたが、出版業界に身を置く者として一度はこの目で確かめたいと、パリにしては異常に暑い夏の一日、帽子とペットボトルを用意して見物へと出かけた。会場はシャルル・ドゴール空港のひとつ手前パルク・デ・ゼクスポジション駅にある広大なメッセ会場。パリを南北に走るB線に乗り込むと、日本刀を持ったニンジャ?風やサムライに成りきった男の子や、浴衣姿やコスプレの女の子が目立つ。会場へ行く電車の中からすでに盛り上がっている。

着物とか、日傘とか、新撰組とか、フランス人が翻訳すると似て非なるものになるところが面白い。日本でも逆の勘違いとかあるに違いない。これからの時代、雑種文化のほうが強いから生き残ったりして。

いつもなら空港まで行くはずの電車がなぜか途中のガル・デュ・ノール(北駅)で止まり、折り返し運転をするばかりで先へ行く気配がない。地下の別のホームから出るのかも?と思い、移動してみる。金髪のニンジャたちも行くので、たぶんそうかも。しかし電車は来ない。そのうち構内に繰り返しアナウンスの声が響く。事故でもあったのか。なにやら番号を言っているらしいが、よく聞き取れない。困ったときの頼みの綱、イナバさんに電話してバスで会場へ行く方法が無いか尋ねる。北駅から出ているはずだということなので、深い地下ホームから、とにかく地上へ脱出する。(北駅は新幹線や国鉄、メトロが発着する、東京駅規模の大ターミナル駅です)

刀を持ったニンジャたちも走っているし、何とかなるだろう。地上へ出てみたら31番ホームから空港行き折り返し電車が発車することが、なんとか分かった。どうやら運転士の山猫ストで、空港へ行く直通電車がすべて止まったらしい。そういえば、予告ストの時も北駅止まりだったのを思い出す。ストの本場だとは言え、なんだかなあ、もうすっかり疲れちゃったよ。外国人にもちゃんと分かるような(せめて英語で)案内をして欲しいな。えっ?それよか、フランス語もっと勉強しろって?(はい努力します)

東京ビッグサイトみたいな巨大会場は、ゲーム系とマンガ・アニメ系とに大きく分かれているようだったが、両方共にあまり詳しくないオジサンには、何が何だか分かりませーん。
プログラムを見てPUFFYとAKB48のライブ会場へ行こうと思ったのだが、会場内の表示デザインが悪く位置がつかめない(他人のせいにする)。しかも大混雑の大会場、思うように動けない。それにしてもこの提灯のレタリング、微笑ましい。
パリでは少女からおばさんまで、キティちゃんTシャツが人気です。なぜか日本人よりも似合うのが悔しい。おそらく中国製のキティもどきバッグ、著作権が!なんて知ったこっちゃない。パリでも中国パワー、すごいです。

15年前にパリへ来た時、テレビで日本のアニメを吹き替えて放映していたのを覚えているが、子どもの時から日本と同じような環境でマンガを見て育ったフランス人が、大人になっても(日本人以上に)日本のマンガを楽しむのは自然なことだと、アタマでは納得できる。それにしてもこの熱狂ぶりは、やはり不思議だ。アキバより熱っぽい。私にはドメスティックだと思われる日本のマンガが、フランスの若者にストレートに受け入れられるのは何故? 彼らは文化や習慣の障壁なんて感じないのだろうか。

古い世代の私にとって、秋葉原は真空管やレコード針(古い!)を探しに行くオーディオの街だった。現在のアキバは理解と共感の境界線上にある異文化のテーマパークで、外国とも言える。パリのエキスポ会場の方が言葉は通じないがニッポンを強く感じる。どうやら日仏のマンガ国境はバリアフリーとなり、残ったのは世代間の壁、ということなのだろうか。

バンド・デシネの大家メビウスがサイン会をやっていたので列に並びました。丁寧に読者の話を聞いて、絵まで書いてくれました。私もカタコトのフランス語で話しました。素敵なオジサンで、俄にファンになりました。
日本の花火大会の夜みたいに、浴衣の女性をよく見かけた。手っ取り早く日本情緒を楽しむにはこれが一番。日本人だって今や着物を着る日は特別のことだから、フランス人と何ら変わらないか。
パリの書店のMANGAコーナーは、SYOUNENとSYOUJYOに分かれて作品の棚があるので、なんだかそこだけ日本の本屋のような錯覚を覚える。コスプレしてメークも決めて、NANAの前で記念撮影。
カメラを向けるとポーズを取ってくれるバイト君たち。そこまで決められるとちょっと怖い。