from パリ(石黒) - 21 - 旅手帖(3)ブルターニュ、
モルビヨン湾での夏休み

(2012.09.04)

フランス人の休暇スタイル

dacapo webの読者の皆様、大変にご無沙汰しております。長いお休みを頂いておりました。約2年間に見つけた旅、アート、暮らしのトピックス、そしてリアルタイムでの出来事なども少しずつお伝えしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

まずは休暇からの帰還とかけて、ちょうど終えたばかりの夏ヴァカンスの話題から。今年は久しぶりにフランス国内で、7月半ばから8月なかばまで、という王道的な時期に夏休み。第一弾は、ブルターニュ地方のモルビアン湾(Morbihan)内に位置する小さな村、ラルモール・バーデン(Larmor-Baden)で。

フランス人の休暇の過ごし方でよく行われるのは、避暑地に家を借りて、家族や友人達が立ち代り入れ替わりで、数週間、ゆったり過ごすというもの。ヴァカンスで名高い避暑地での短期貸しを専門としたサイトを利用して、私達が借りた家は、まさに湾に面した最高のロケーション。モルビアン湾内に散らばる小さな島々、停泊した帆船、牡蠣の養殖かごなどが、時間を追ってその色彩を変える海の上で、得も言われぬ魅力を作り出しています。

写真だけで家を借りるので、確かにリスクがないわけでなく、支払いを事前に済ませて、記載された住所を訪れたら家が存在しなかった、なんて詐欺もあるようなので、注意が必要。そうした被害を防ぐために、また家の実際の管理状態を事前に探るためにも、記載された住所からグーグルマップで検索するとか、イエローページなどで近隣の人の電話番号を調べて、実際に家が存在するかどうか確かめる、等の対策も大事です。

貸し別荘のために作られた無機質な家ではなくて、実際に家族が住んでいたんだな、という名残が残る、温かみのある大きな一軒屋。
夕刻、庭で本を読んでいて、ふと目をあげると、この景色。思わず、何枚もシャッターを切らずにはいられませんでした。
ホテル滞在ではない楽しみ

家を借りての旅行の楽しみといえば、地元の特産物を調理できること。ブルターニュといえば、まっさきに思い浮かぶのが、海の幸。特に、ラルモール・バーデンは牡蠣の養殖で知られています。教会前の広場では、週2日開催のマルシェがあり、ここで野菜やフルーツを購入しておいて、メインとなる料理は、毎日のように魚介類の直売所へ行き、新鮮な牡蠣、さざえやムール貝などをそのつど購入して、キッチンやバーベキューで調理。広大な庭に落ちていた松の針を拾い集めておいて、1、2日乾燥させておき、バーベキューの火に利用したり。焼きあがった素材にも、どことなく、松の香りが漂うような…。

ゆったりと色を変える海を眺めながら、時間を気にせずの朝食、昼食、アペロ(夕食前に1~2時間おしゃべりしながら軽く飲んだりつまんだりする「聖なる」時間)は、気持ちを解きほぐす、最高のデトックスです。


港の近くにある直売所。


左・とある日の昼食。写真中央にあるアーティチョークは、ブルターニュが産地。
右・ブルターニュは、以前の記事でご紹介したご当地コーラの発祥地 。Breizh Cola、街中で見かけました。

モルビアン湾内の島めぐり

モルビアンとは、ブルターニュ語で、「小さな海」という意味。湾には、約40の島が浮かんでいます。ラルモール・バーデンの家から目と鼻の先に見えているベルデール島(île Berdère)は、島といっても、歩いて渡れます。島と大陸とは20メートルほどの通路で繋がれていますが、引潮の時間帯に通行可能となる、というもの。潮が引いて通路が徐々に現れてくる様を見ていると、秘密の入り口を発見する冒険映画の主人公のような気分に。潮の満ち引きの時間が、カレンダーで通路入り口に張り出されるので、それにあわせて、島内への散歩やジョギングを計画。島への通路が開放されているのは8時間程度。島内1周は起伏に富んだコースで2,5キロほど。15メートル以上はあるかと思われる松の木や樫の木が自然のパラソルとなって、海沿いの散歩者達を心地よく導きます。島内には夏休みの保養施設があるようですが、一般に開放されているレストラン等の商業施設はありません。

ラルモール・バーデンから車で10分程度にあるブラン港(Port Blanc)から、モルビアン湾内の島を巡る遊覧船ツアーが多数、出航します。今回訪れたのは、ブラン港から船で5分程度で到着する湾内最大の島、モワンヌ島(île aux Moines)。もとは、「短い十字架」という名で呼ばれていたこの島は、9世紀頃、修道士島と名づけられますが、それはブルターニュの王がベネディクト派の救世主修道院に寄付したから。とはいえ、実際には修道士は誰もこの島に住まなかったようで、当時の主な住民は、船乗り、漁師、農民だったそう。現在は700人弱の住民が暮らしているようです。島内には、ハイキングコースが数種類設定されていて、ドルメンの巨石群を見たりもできます。私達は、生後2ヶ月の赤ん坊から約60歳までの老若男女混合のグループだったので、のんびりと島の中心地区と、その先の海辺まで軽く歩いてきました。
 


左・ベルデール島への通路、満潮時。住民用には渡し船が出ます。
右・数時間後、潮が引いて通行可能となる。通路は海藻で滑りやすいので注意。


左・夜11時頃、夕食後に散歩がてら、この通路の潮が引いたあたりで、試しに潮干狩り。簡単に小エビ、ハマグリが捕れました。
右・引潮時間に合わせて少し早起きして、通路を渡り、ベルデール島内を走る。


ブルターニュ旅行に欠かせないのは…

ブルターニュは、なんといっても、天気が変わりやすい事で有名。そう、海の天気なんですね。今晴れていても、1時間後には雨が降り出す、なんてことがしょっちゅう。でも、そのおかげで、絵画のような、繊細な光の陰影が作り出す美しい景色を楽しむことができるんですよね。日中25、26度と上がって、太陽の陽射しの下にいると暑いのですが、日が翳りだすとぐっと冷え込んでしまうので、真夏のシーズンでも、首元を覆うちょっとしたスカーフかマフラー、そして重ね着できるフリースかセーターは必携です。

真冬にホットチョコレートが飲みたくなるように、ブルターニュは夏でも朝晩の冷え込みに耐えなくてはならないから、バターと砂糖たっぷりのクイニー・アマンやキャラメルのようなお菓子が食べたくなるのは自然の道理、と自分に甘~く、ブルターニュでの夏を過ごしました。


ブラン港の入り口に位置するピザ・クレープ屋さんは地元の人にも美味しいと評判。シードルと、塩バターキャラメルソースのクレープにアイスクリームを追加して、至福のひと時。

【information】

ブルターニュの観光案内
モルビアンの観光案内
ラルモール・バーデン市
モワンヌ島町役場