from 北京 – 5 - 矛盾を抱えながらも変化を続ける、中国メディア。

(2008.11.11)

出版社のウェブサイトで他メディアのコトを書いていいのか?という疑問を抱えつつ。
今回は、中国メディアについて書いてみたいと思います。なんせ私の本業は、企業のPRコンサルティングですから。たまには仕事に関連したことも書いておかないと、周りの人に遊んでばっかいるんじゃないかと思われてしまうワケです。まあそれはさておき、激動の中国。メディアだってどんどん変化しています。

 

レム・コールハースが手掛けた、中国のNHK(?) CCTV(中国中央電視台)ビル。耐震強度なんか完全無視!?

そもそも(もちろん今でも)メディアは全て国のもの。そりゃあ、共産主義のお国ですから。完全な言論の自由なんてありません。国の意向に添った一斉報道だって当然ですし(公式にはその存在を認めているワケではないですが)、国の意向に添わない記事が出れば、そのメディアは休刊に追い込まれることも。その反面、中国人のメディアリテラシーは高く、何が「建前」で何が「真実」なのか、見抜く力に長けています。そんな中でも、報道の自由を求める声は確実に高まっています。その契機になったのは、2003年のSARSの流行でした。政府が国外の目を気にして情報を統制したために、市民に情報が伝わらず被害が拡大したと言われています。また、報道の自由が叫ばれる中、経済の成長とともにメディアビジネスが活況を呈するようになると、今度はメディアは広告収入欲しさに「売れる紙面」や「数字(視聴率)」を求めるようになりました。昨年、世間を賑わせた「段ボール肉まん」事件は、数字欲しさにディレクターが暴走した結果、とされています。

 

ずらり並んだ中国のビジネス誌。クォリティもどんどん向上しています。

私個人的には、中国メディアは今「産みの苦しみ」の最中なのかな、と思っています。グローバルスタンダードの確立に向け、大きく舵を切る雑誌も少なくなく、「GE環球企業家(Grobal Enterprize)」のような質の高いビジネス誌が出てきたり。ではファッション誌はどうかというと、このカテゴリーは海外ブランドが強いのです。「marie clare(中国名:嘉人)」に「VOGUE(服飾与美容)」「Esquire(時尚先生)」、それに「Ray(瑞麗)」や「ViVi(昕薇)」のような日本勢も頑張っています。じゃあ、中国オリジナルは?というと、目下私の一番のお気に入りはアート・カルチャー系雑誌「新視線 The Outlook Magazine」です。

 

表紙写真に川久保氏自ら水玉模様をマジックでコラージュ。肩のコサージュもよく見ると、手書き。

写真は、今年の夏にCOMME des GARÇONSが北京に進出した前後のものなのですが、この号では川久保玲の夫のエイドリアン氏やらUNDERCOVERの高橋盾氏なんかの独自インタビューがあったかと思えば、表紙やページ編集に至っては川久保玲自ら携わってる、というツワモノ。BRUTUSほどワンテーマ特集でがっつり、ってワケではないんですが、それなりの特集を毎回組んでいて、面白い。日本の雑誌などと見比べても、情報格差も感じないしね。中国の雑誌はこの「新視線」の他にも、実験的な雑誌作りしてるのもあったり、なかなか面白いのです。変わりゆく中国メディア、これからも目が離せません。日本の洋書屋さんに、中国の雑誌が並ぶ日も近い!?

皆さんが中国に遊びに来た際は、お茶とか月餅なんてありきたりなお土産ではなく、中国の雑誌なんていかがでしょう。貰ったヒトも、きっと喜んでくれるハズ!! 今回はこんなトコで。ではでは、再見!