from 東北 – 7 - 大正モダン、中華そば、kitakata、坂内の心。

(2009.05.27)

行ってきました!福島県、喜多方市。
喜多方には楽しみ方がふたつある。
魅力のひとつは、美しい景観を持つ町の観光である。
古き良き日本を象徴する「蔵」が点在し、見るものをひきつける。
白と黒のコントラストが印象的で、まるで絵葉書のようだ。
建物から小路へ目を移すと、カタカタと馬車が闊歩する姿も愉しめる。
大正モダンの時を身近に感じられる町。
歩けば歩くほどに、新しい発見がある…と、観光の紹介はここまで。
じっくりと町を散策したあとは、もうひとつの魅力である「中華そば」を。
そう、喜多方は知る人ぞ知る、ラーメンの町なのだ。

町の中心地には食堂の軒が連なり、食欲をそそるスープの香りが通りに広がる。
それぞれのお店では個性豊かなラーメンが楽しめ、暖簾ごとにファンがつく。
喜多方ラーメンといっても、全てが同じ味ではない。

私の行きつけは、市役所近くの路地裏に店を構える『坂内食堂』。
小さな神社に見守られる、風情漂う老舗は行列のできる名店である。
隣接する駐車場には県外ナンバーが並び、関東や関西からのリピーターも多い。
早速、30人近い行列の中に加わり、待つこと約40分。ようやく順番が回り、暖簾をくぐる。
店内に足を踏み入れると、スープの香りと湯気に包まれる。
昔ながらの食堂という言葉が良く似合う内装。雰囲気は食欲に彩りを添える。
名物の「肉そば」を注文し、出来上がりを待つ。そしてついに「中華そば」が目の前に。

これでもか!と、麺を覆いつくす幾重にも重なる肉厚なチャーシュー。
あっさりとした味わいと深いコクのある、透き通ったスープ。
スープが見事にからむこだわりの麺。
美味しいコメントをあげれば切りがない。そして食の感じ方は、人それぞれ。
では最も伝えたいのは───
それは、『坂内食堂』のおもてなしの心である。
おもてなしの心とは何か。
それは、お客に対する思いである。
───『坂内食堂』の「中華そば」は熱々ではない。
「ふぅふぅ」せずに、そのまま「ずずっ」と啜れる。
すぐに食べることのできる温度でテーブルに運ばれてくるのだ。
食べたい時に、思う存分味わえる喜び。
お腹を空かせて待っていたお客へ対する、『坂内食堂』の優しさが伝わってくる。
目には見えない、気の利いたサービス。舌では味わうことのできない、おもてなし。
これが現代において、一番のご馳走なのかもしれない。
そして平成が忘れてしまったモノのひとつなのではないだろうか。

『坂内食堂』をあとにするお客の顔は、みんな笑っている。
待たされたという、くたびれた表情はない。
見えない味が隠し味の『坂内食堂』。良いものを食せば、カラダにも良い。
中華そばだけでなく、お店ごと賞味してほしい。
きっと「心」で美味しい!と感じられるはずだ。

喜多方とは「喜びの多い方」と書く。その言葉の本質がここにはある。

 

『坂内食堂』(福島県・喜多方市)

●福島県喜多方市字細田7230
電話:0241-22-0351
営業時間:7:00~18:00
定休日:木曜日(祝日の場合営業)
交通:磐越西線喜多方駅 徒歩20分
駐車場:有り