from パリ(河) – 6 - 秋深まるパリ。

(2009.11.26)
柔らかな陽光が差し込む秋のリュクサンブール公園。

11月も後半ですね。日本は紅葉のピークを迎えているころでしょうか? パリの町並みもすっかり秋色、というか、もう晩秋の雰囲気に包まれています。商店街ではクリスマスのイルミネーションの準備が進んでいます。

日本にいる友人に「フランスも秋になるとさぞかし紅葉がきれいでしょうね」、とよく言われることがあるのですが、正確に言うとフランスでは「紅葉」を見ることはあまりありません。日本のもみじのように葉が「紅色」に染まる樹木が少ないのです。フランスを代表する樹木といえば、マロニエ、プラタナス、なら、ブナなどの落葉樹ですが、これらの木々の葉は秋になると黄色や褐色へ染まっていきます。だから、パリの秋の色はというと、「黄金色」、「琥珀色」という表現がしっくりきます。

パリにはブーローニュの森、ヴァンセンヌの森、リュクサンブール公園、チュイルリー公園など、秋の散策を気軽に楽しめる緑地帯が随所にあります。今回はパリで最も美しいと言われているリュクサンブール公園を中心に秋の景色をお届けします。

BGMにイブ・モンタンのシャンソン「枯葉」が聞こえてきそうな風景。
リュクサンブール庭園の野外音楽堂でジャズコンサートが始まるのを待っている観客たち。背景にはアンバー色に染まったマロニエの木々。美しいですね。

リュクサンブール公園はパリ左岸のサンジェルマン・デ・プレ、オデオン界隈に広がる22.5haに及ぶ市内最大の庭園です。庭園の歴史は17世紀初頭に始まります。フランス国民に最も人気がある国王アンリ4世にイタリアのメディチ家から嫁いできた王妃マリー・ド・メディシスが、故郷であるフィレンツェのボボリ庭園を偲んで造らせた庭園が原型。それから時を経て、かの有名なオスマン男爵による19世紀のパリ都市改造後に現在の姿になりました。園内にはマリー王妃がリュクサンブール公爵から買い取り、これもフィレンツェのピッティ宮殿を模して改築させた宮殿があります。現在はフランス元老院(上院議会)の本拠地となっています。

リュクサンブールは四季折々、いろいろな表情を見せますが、秋の美しさもまた格別です。気候の穏やかな週末は、残り少ない陽光を楽しむ老夫婦、この庭園を愛した文豪ヴィクトル・ユゴーのように読書や瞑想にひたる文学青年、愛を語り合う恋人たち、ポニーに乗って遊ぶ子供たちなどで静かな賑わいを見せます。野外音楽堂(キオスク・ド・ミュージックと言います)では定期的に無料のジャズコンサートも開かれています。

パリはこれから冬を迎え、ノエルのデコレーションやイルミネーションで華やかな気分が盛り上がって来ます。その様子はまた来月にお届けします。

園内にはマロニエの大木に囲まれたオープンテラスカフェがある。昼食に温かいオニオングラタンスープを頂く。
静かな水音が心地よいマリー・ド・メディシスの噴水。読書家が好きなスポットです。
枯葉が舞い落ちる池で秋のデートを楽しむカモの夫婦。
子どもたちはポニーに乗って園内を一周できる。おとなしく行儀良くしているポニーがかわいい。
まさしく回転木馬! パリの公園にはこのようなレトロな遊技場がたくさんあります。
こちらはチュイルリー公園の雨の日の風景。背景にはマリー・ド・メディシスが住むことを嫌ったというルーヴル宮が見える。噴水に小さなヨットを浮かべて遊ぶのは子供たちの人気の遊びですが、雨で子供の姿がありませんが、哀愁漂う感じがいいなあ。