from ミュンヘン – 2 - アルテ ピナコテークの巡り方 “メインをしっかり楽しもう”。

(2010.06.17)

ミュンヘンよりグーテンターグ! みなさんがヨーロッパに旅行などで滞在するときの楽しみの一つとして美術館や博物館をプランに組み込みたいという方は多いと思いますが、意外とやってしまう失敗がその時間配分のメリハリではないですか? 

絵画が大好きなぼくの場合、見始めるといつの間にか予定を大きくオーバーしていたなんてことがよくあります。さらに、全体の展示がどういう構成になっていてどこがハイライトなのかを知らないで見始めると、後半にハイライトがある場合などは、見疲れてしまってせっかくの名作を前にテンションが上がらないこともあります。例えるなら、前菜とパスタでお腹一杯になってメインが食べられないような状態でしょうか。

そこでミュンヘンにあるドイツの代表的な美術館『Alte Pinakothek(アルテ ピナコテーク)』で“メインをしっかり楽しもう”をテーマに、ぼくなりの解釈をした時間配分を交えてご紹介していこうと思います。
 

世界でも最古に分類される石造りの外観。第二次大戦で被害に遭ったが完全に修復されています。
シンプルなつくりなので迷うことはないかと思います。

まず簡単にこの美術館について説明しておきましょう。もとはヨーロッパでも有数のコレクションを誇っていたバイエルン王家ヴィッテルスバッハ家の収蔵品で、ルートヴィッヒ1世の命により一般に展示するために建てられた国立美術館です。主に14世紀から18世紀まで、つまり中世、ルネッサンス期、バロック期の絵画が展示され、ドイツをはじめとして、フランドル、ネーデルランド、イタリア絵画などが充実しています。

H型をした館内をまわる際、見どころは2階の横軸の部屋に置かれているので、時間に余裕がない限り1階はそのまま省いてしまってもいいかと個人的には思っています。ぼくがミュンヘンに来て最初のころは1階もよく見学していましたが、最近は2階に直行してしまいます。2階に上がると順路はドイツ絵画から始まり、主に15~16世紀の作品が展示してあります。ここはコース料理でいえば前菜なので、ドイツを代表する画家アルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer)の『1500年の自画像』や『四人の使徒』とアルトドルファーを押さえて次に進みましょう。
 

アルブレヒト・デューラーの絵が並ぶ部屋。
デューラーの代表作『1500年の自画像』。

ドイツ絵画のあとはパスタ料理となるイタリア・ルネッサンス絵画です。レオナルド・ダビンチの『聖母子』、ラファエロの『カニジャーニの聖家族』などのルネッサンス期の巨匠たちの作品が並んでいます。個人的にイタリア絵画が特に好きなので一点ずつ足を止めてしまうのですが、この部屋は全体のボリュームが少ないのでさほど時間は掛かりません。ここでの一押しはルネッサンス初期の巨匠フィリッポ・リッピの『受胎告知』です。『受胎告知』は多くの画家によって描かれてきたテーマで、神からマリアへの光と鳩、青(信仰)と赤(愛情)の衣服、白百合(純潔)などの共通の要素があり新鮮さはないが一種の安心感が期待できます。そしてそれぞれの画家による表現の違いを見比べるというのも理解を深める手段のひとつだと思います。
 

ルネッサンス期の作品が横一面に並びます。
フィリッポ・リッピの『受胎告知』。

イタリア絵画でテンションがあがってきたら、次は館内のちょうど中心にある「Rubenssaal(ルーベンスサール)」と呼ばれる部屋になりますが、ここは巨匠ピーテル・パウル・ルーベンスの部屋で、当館のメイン料理ともいえるハイライトです。この部屋は実に見応えがあるのでゆっくり時間を掛けることをお勧めします。バロック期のフランドル絵画を代表する彼の作品は、現在ロンドン、ウィーン、マドリッド、フィレンツェなど欧州各地の美術館で展示されています。

ぼくもこれまでいくつかの美術館を見てきましたが、ルーベンスの作品がこれほど堪能できるところはないかと思います。6m×4mにおよぶ巨大な彼の代表作『最後の審判』を中心に、イタリア絵画で描かれている「静」とは対照的に、バロック期特有の激しい肉体の躍動感と、青みを巧みに使った肌の質感など溢れるばかりの色彩描写がなされた作品群には圧倒されます。実は点数が多すぎてルーベンスの部屋だけでは入りきらずに、隣の部屋でも展示されていて、さながらルーベンス美術館のようでもあります。ルーベンスの部屋をメインにこのように見学をしていくと、見終えるまでに1時間から1時間半くらいでしょうか、これなら見疲れることなく回ることができると思います。そしてもし時間に余裕のある場合は、順路の後半でオランダ絵画を代表するレンブラントやポンパドール婦人などのフランス絵画を楽しむのもよいでしょう。

ルーベンスの部屋。『最後の審判』はあまりに大きいので見上げないと見られません。
彼と彼の妻を描いた『ルーベンスとイザベラ・ブラント』。
華やかで完成度が高く見入ってしまう『花輪の聖母』。

これだけ見応えのある美術館ですが、入場料は7ユーロです。そして日曜日には1ユーロで見学することができます。ドイツの日曜日はレストランを除いて店という店が閉まりショッピングは楽しめないので、ミュンヘンの中心から近いピナコテークは、そんな日曜日を有意義に過ごせる場所としてもおすすめです。

 

アルテ ピナコテーク Alte Pinakothek

住 所:Barer Straße 27, 80799 München
電 話:+49 89 23805 216
開館時間:火曜10:00〜20:00  水~日曜10:00〜18:00
休館日:月曜、カーニバルの火曜日(毎年変動)、5/1、12/24・25・31
入館料:一般7ユーロ 日曜は1ユーロ

 

そして最後に見終わったあとのデザートの話もしておきましょう。ピナコテークのすぐ近くにあるジェラート屋は連日行列をつくる有名店で、ミュンヘン子に大人気のお店です。素材にこだわったジェラートは店内で作られ、本当に美味しいのでピナコテークに行かれた際には、是非立ち寄ってみてください。

いつ行っても行列ができています。

ジェラート『Ballabeni Icecream(バラベニ アイスクリーム)』

住 所:Theresienstr. 46, 80333 München
電 話:+49 89 189 129 43