from パリ(たなか) – 58 - 思い切って、美容院へ行ってみた。

(2010.06.14)
5区、地下鉄プラス・モンジュ駅向かいの美容院。ここに決めた。

パリに4カ月もいると髪も長く伸びて、首筋がうるさくってしょうがない。これまでは観光ビザの最長滞在期間3カ月に合わせて、東京に帰国する度に髪を切っていた。滞在許可証を取得し自由な身分となった今では期間を気にせず滞在できる。観光旅行者から現地生活者になったということなのだが、そうなると新たな問題と言うか、旅行者としての滞在中にはなかった現実に直面することになる。先日、住宅税の調査票が郵送されて来たし、所得税の申告も必要になってくる。納税などの社会的な問題が発生する一方で床屋へ行くというような、リアルな生活の問題も出てくるのです。

買い物に行った時などに、手頃な床屋がないものか物色するのだが、こちらでは美容院と床屋の区別がわかりにくいので、どこへ行けばいいのか、何て言えばいいのか、考え出すと躊躇してなかなか第一歩が踏み出せない。東京でさえ知らない床屋へ行くのには勇気がいるのに、外国だし、なんかたいへん。フランス語の先生のシルヴィーに、床屋でどう言えばいいのか聞いてみたら、Je veux les cheveux tres courts.(ジュヴ レシュヴー トゥレクール)と言えばいいのよ、と教えてくれた。私したい、髪、とても短く。何だ、簡単だ。基本コンセプトを伝えたら、あとは美容師のセンスに任せるしかないか、やはり。髪の短さのニュアンスまで伝えるのは、フランス語でも日本語でも相当難しいし。

6区のビュッシ通り、市場やカフェの喧噪から中庭へ入ったところにある美容院と床屋。この店は東京の恵比寿や代官山にもチェーン店があるらしい。
6区、サンタンドレ・デザール通りの古い建物を改装した美容院。通りすがりに中を覗くと、時々男性客も座っているが、私には敷居が高い。
4区、マレ地区で見かけた美容院とサンドイッチ屋。

近くにある美容院は、私にはお洒落過ぎて料金やサービスがわからなくて怖そうだし、13区の中華街で見つけた床屋は安いのだがセンスとか大丈夫かなと、別の意味でちょっと怖いし、なかなかピッタリの店が見つからない。そんな時に、買い物に寄ったモンジュ通り(5区)の雑貨屋の隣りに美容院があって、入口には料金表もあり明朗会計で雰囲気も悪くなかったので、意を決してドアを開けた。中には、人の良さそうなおじさんがいたので、覚えたての台詞を言う。念のため、おいくら?と聞くと、シャンプーとカットで24ユーロ(約2,800円)です、と解りやすいフランス語で答えてくれた。良さそうな感じ。

このおじさんがカットしてくれるものとばかり思ってたら、地下室(があったのだ)から美しい女性が出て来て、紙のはんてん(焼き肉屋のエプロンみたいな)を渡してくれた。これを羽織るんだな、ふむ。ナスターシャ・キンスキーそっくりの若い美容師に、まずシャンプーしてもらう。これが、ふにゃふにゃの柔らかい手で、しまりのないシャンプーで、この人大丈夫かなといささか不安になる。首の周りに、救命胴衣の首輪みたいなのを付けられて、なんだか情けない格好だ。

タオルで拭いて、濡れたまま、カットの椅子へ移動。キンスキーが、短くするのか?と確認するので、ウィ、トゥレ・クール! どれくらい短く?って聞き返すので、指先で、3~4サンチメートルと答える。キンスキー、髪に櫛をあてて、こんなもん?て聞くので、ウィ、ダッコール! 襟足から切り始め、大体終わった所でドライヤーをかけ、全体をすき鋏でカットする。鏡を見ると、彼女は高い丸椅子に、足を組んで腰掛ける姿勢でカットしている。カッコいいので写真を撮りたかったけど、今それは出来ない、残念。

15分程で終了、手早い。最後はドライヤーの風力を最大にして首の周りに着いた毛を吹き飛ばし、終了。アバウトだなあ、キンスキー。(でも可愛い)合わせ鏡でチェックして、もう少し短い方が良かったのだが、うまくフランス語で伝えられないし、OKとする。最初にしては、まあ75点かな。これ以上はモデル側の問題でもあるし、何度か来てお互いに慣れないと。支払いをする時に、パリに住んでいるのですか?と聞かれた。私は25年近く、職場近くの美容院で、ずっと同じ美容師にカットしてもらっていたので、なんだか外国で浮気したような、ヘンな感じでした。
 

隣りの雑貨屋。店内は100均のような楽しさで、プチ・ナイフとパリっぽいベージュのマグカップを2個買った。
料金表。左が女性、右は男性。学生は2割引。日曜と月曜は休み。