from パリ(たなか) – 42 - 日曜日は博物館巡り。

(2010.02.22)
この大行進のプランがあって、吹き抜け工事を行ったのだろうか?写真では明るく見えるが、実際はもっと暗い。

東京にいた時は日用品などの買い物はいつも週末の仕事だった。長年の習慣はなかなか変えられないもので、パリに来ても食料の買い出しにスーパーへ行こうと家を出て、人通りの少なさに、日曜日だった!と突然気がつく。これでは外国人観光客が困るということもあるのだろうか、休日も営業している店は増えたような気がするが、それでも日曜日に買い物を楽しむという、東京だったらあたりまえのことがパリでは出来ない。パリの休日は退屈なことになりかねないが、美術館や博物館といった強い味方がパリにはたくさんあるので、ここへ行って楽しむに限る。

5区の南東、オーステルリッツ駅からセーヌ沿いにある広大な植物園の、セーヌとは反対側の一角に国立自然史博物館がある。固い感じの名称だが、ガイドブックで見る館内は柔らかくて楽しい印象だ。2月の日曜日の遅い朝、外は寒そうだが思い切って出かけてみることにした。サン・ミッシェルからパンテオンの丘を越えてムフタール通りの少し先まで、歩いて行けない距離ではないが、どんより曇って小雪もちらついてきたし、メトロで行くことにする。

7番線のプラス・モンジュ駅を出ると、広場には市が立っていた。野菜、魚、肉、ソーセージ、チーズ、パン、ハチミツ、菓子、花、ひととおり何でも揃っている。日曜の朝市はありがたい。帰りに晩のおかずを買って行こうと、肉屋の店頭でソーセージに目星をつけておく。広場を出るとすぐにイスラム寺院のモスクの塔が眼に入る。博物館はモスクの隣だから、地図を開かなくても迷わず行けそうだ。途中の小さな公園で、親子がピンポンをしていたのでちょっと見物させてもらった。寒いのに、元気だなあ。そういえばパリの公園には、コンクリートで出来た卓球台があって、子どもが遊んでいるのをよく目にする。友人のホソキさんは、パリの公園の卓球台事情にとても詳しい。モスクの白い建物の裏へ回ると、どうやらモスクの中で、お茶を飲んだりすることも出来るようだ。入口からちょっとだけ中を覗いて、寄り道の誘惑を払いのけて、目指す自然史博物館へ。
 

予定外の朝市に、つい買い物気分が盛り上がる。
手長エビのはさみが動くのが、気になってしょうがない。
ジャガイモはこないだ買ったばっかりだし。
父さん、本気で攻める。後ろに見えるのがモスクの塔(ミナレット)。去年スイスでは国民投票で、ミナレットの建設を禁止する法案が決まったようだが、この塔は33m。モザイク模様のタイルや緑の屋根が美しい。

体育館みたいな四角い箱型の博物館へ入るとすぐに、巨大なクジラの骨格標本が頭上に聳える。屋根の梁のような肋骨を間近に見ると、昔ディズニー映画で見た、ピノキオがクジラに飲み込まれる場面が妙にリアリティーを持って思い出された。いきなりガツンと圧倒される展示だ。休日のせいか親子連れが目立つ。1階は魚などの海の生物が中心。ペンギンの周りでは、子ども達が床に座って絵を描いていた。吹き抜けになっている上の階(フランス式で1階)が当館目玉の展示場で、アフリカの動物たち(剥製)が大行進している。ガイドブックで目にしていたが、実際に見るとやっぱりスゴイ。

200年ちかい歴史を持つ博物館が内部の改修工事を行い、1994年にリニューアルオープンしたらしい。館内は薄暗く、年代物の鉄の柱はむき出しで、あちこちに置いてある剥製の動物には命が宿ったような錯覚を覚える。ケ・ブランリー美術館も薄暗い中にエスニックな美術品が展示してあったが、フランスはサーカス小屋の中のドキドキするような感じを演出するのが上手い。スポットライトが当たってはいるが、あまりにも暗くて、老眼の私には表示板の文字を読むのが辛かった。フランス語が堪能でもないので問題ない、と言われればその通りだが。

昆虫の標本を見て昆虫採集に熱中した少年時代を思い出したり、絶滅危惧種の剥製標本を集めた暗い部屋でいなくなった動物たちと対面したり、(なぜかこの部屋の動物たちは鼻に筋を立てて吠えるような威嚇のポーズをとっていた)、環境問題や進化のお勉強も少しだけして、あっという間に2時間ほど経過してしまった。暗い館内から外に出ると、映画館から出たときのような目眩を覚える。目の前には広大な植物園が広がっている。春になったらまた来よう。バラ園もあったし、動物園もあるそうだし、鉱物陳列館や古生物学館もあるようだし、一日遊べそうだ。来た道をメトロのプラス・モンジュ駅に戻ったら、さっき見た朝市はすでに撤去作業中。残念ながらソーセージは買えなかった。晩めし、どうしよう。



クジラに丸呑みされる夢を見るかも。


写真で見ると水族館のようだ。


実物大というだけのことだが、展示の仕方ですごい情報量だ。ほんとうに歩き出しそうなほど、リアル。


絶滅危惧動物を集めた部屋は真っ暗で、なんだか見世物小屋にでも入ったような気分。


ホシカミキリ、ノコギリカミキリ、ラミーカミキリ、懐かしい。


そもそもはブルボン王朝時代の薬草植物園だったそうだ。パリの芝生は冬でも緑、バラの枝には赤い実がついていた。