椿の楽園大島便り - 3 - 今年も椿の実の収穫期が
やってきました!

(2011.10.11)

椿の収穫時期が到来。

9月、秋風とともにやってくる椿の実の収穫期。毎年この時期になると、島のあちこちで袋を片手に、しゃがみこんで椿の実を拾っている人たちを見かけるようになります。

私たち椿油メーカーは、椿農家に限らず一般島民からも椿の種(実の中から取り出したもの)を買い取らせていただきます。キロ単位ですので、結構な数を集めなくてはいけません。皆さん真剣に拾っています。散歩の途中や庭仕事の合間にふと目についた実を拾っている内に、つい夢中になってしまって、本来の目的を忘れてしまったりすることも…。

お一人で数百キロもの種をお持込みくださる方もいらっしゃいます。いったいどうやって集めているのか…。取材をさせていただきましたので、その模様をご紹介いたします。

手で収穫する五味さん。

訪ねたのは、大島の南部に位置するクダッチという地域に暮らす五味富士男さんのお宅。広い敷地の中に林立する椿の木々の中に、ブルーシートが敷かれた一角を発見。ここが今日の収穫ポイントのようです。

「五味さーん」とお声をかけると、「ハーイ」と返事はあるものの、姿は見えず。ブルーシートの上には、椿の実がボトッボトッと落ちてきます。

あれっ?と思って見上げてみると、枝の間から「どうも~」と五味さんが…。なんと、木の上に登って実を落としていたのです。

チャドクガ対策のため帽子をかぶり、長そでのブレーカーを着用していますが、この日は厳しい残暑。見ているだけでも汗だくになってしまう炎天下に、涼やかなお顔を見せてくださいました。

枝を使って体を支えながら、両手で次々と実を落としていく、その動きの早いこと。落ちやしないかとヒヤヒヤしますが、五味さんは慣れたものです。それにしても、高さ4メートルほどの木に、脚立も梯子もないのにどうやって登ったのでしょう?

下では、奥さんの弓子さんが自然に落ちた種を拾っています。腰には蚊取り線香、手にはバッグを提げ、古い種と新しい種を見分けながら集めています。

この姿は一般の方が採取する際によくみられる光景で、一粒一粒拾い集める方法ですが、農家の方は木になっている実ごと収穫する方が効率的ということで、木に登ったり、道具を使ってもぎ落したりします。

収穫方法にもいろいろあるようです。


道具を使った収穫法。

するするっと木から降りてきた五味さんに、今度は道具を使った収穫方法を見せていただきました。

3mほどの長さの竹竿の先に、股状に曲げた針金を結わえ付けた刺又のようなものを使います。長い竿の先の股の部分を実の生り口に差し込み、実を引っかけてグッと引っ張って落とします。木に登るより簡単そうに見えますが、軽い竹製とはいえ長さがあるため、上を向いた状態でうまく実を挟み込むように先端を持っていくのは、意外と難しいものです。

ちなみにこの道具、市販されているものではありません。針金の強度や角度によって使いやすさが違うので、皆さんそれぞれに工夫して作っていらっしゃるようです。

五味さんいわく、収穫作業は一日2時間で十分とのこと。たしかに重労働。慣れているとはいえ、あまり長い時間できる作業ではないのかもしれません。


数日間乾燥させてようやく椿油を絞ることができます。

次に、収穫した実を干しているところを見せていただきました。

丸一日天日に干して、はぜさせると3本の亀裂が入り、中から種が顔を出します。一つの実の中に9個の種が入っているのが良いものだとか。

種を取り出し、また天日に干します。夜露にあたらないように、夕方になると取り入れ、朝が来るとまた干すという作業を数日間繰り返し、ようやく完成。よく乾燥させた種は、こすり合わせるとカラカラと乾いた良い音がします。

実の採取から種の乾燥まで、大変な労力と根気のいる作業です。苦労して仕上げた種をお持込みいただくからこそ、私たちは椿油を搾ることができ、「生の椿油」としてお客様にお届けできるのです。種をお持込みいただく島民の皆様に心から感謝いたします。

そして、取材させていただいた五味さん、有難うございました。軽い身のこなしとさわやかな笑顔がステキでした。もうすぐ金婚式を迎えられるという仲睦まじいご夫妻。今年もまたたくさんの種をお待ちしております!