土屋孝元のお洒落奇譚。いつもの年の瀬より、年末感が薄い銀座にて……。

(2010.12.16)

いつもの年の瀬よりも、暖かいような気がします。
毎年のことですが、
一の酉には浅草酉の市へ出かけ、
年賀状の用意をして、
クリスマスを迎え、
新年には神社へ初詣。

うちでは、元日の朝、お墓参りに出かけ、
お墓を綺麗にして、亡くなった両親に挨拶するのが恒例です。
神仏混合で何でも受け入れています。

最近、面白いのは、以前仕立てたスーツに手を入れて、
新しく着られるように直すことが楽しくなりました。
「mottainaiモッツタイナイ 」の運動とか、
リサイクルとかと言うわけでもないのですが。

このスーツというのは、
もう20年ぐらい前に仕立てたもので、
90年代初期の、まだ、バブルの残り香があった頃の形で、
今よりも少しゆったりとしていて
合わせのボタン位置が少し低いものです。

ごうじラインも低めです。
典型的な六つ釦二つ掛けで、かのウィンザー公スタイルを模したものでした。
肩の幅が今のスーツよりは5cmぐらいは大きいかもしれません。
今は手に入りにくいスーツの生地を使い、
前にもお話ししたフラワーポケットや三つ葉かんぬき、
お台場仕上げにして、裏地には色鮮やかな緋の赤、を使い、
風で裏地が少し見えると、鮮やかな緋の赤が見に染みるようです。

このスーツを着て出かけると、
電車などでも、人が心なしか避けるようで、
ゆったりとしていられたものです。
違う職業の人に見えたのかもしれません、
もう時効だから、いいですね。

©Takayoshi Tsuchiya

今の流行は、身体にフィットした仕立が良いようで、
肩などもきつく感じるものもあります。
人それぞれ、顔も違うように身体の形も微妙に違い、
似合うとか似合わないとかもありますから、
これが今風だからと、それに合わせる事はないと思うのです。
自分に似合い周りの人が見て、おかしくなく、着心地も良いものであれば良いのではないでしょうか。

女性の方達で男のスーツの仕立てが細かくわかる人は少ないと思います。
ノッチラペルとか、ピークラペルとか、
シングルなのにピークラペルとか、
ラペル幅がどうかとか、
釦が二つ掛けとか、三つ掛けとか、
袖口はターンナップの折り返しがあるとか、
裾幅が4.5cmだとか5cmだとか、
シングルかダブルかとか、
パンツがノータックかツータックなのかとか、
サスペンダー使用か、
ベルト使用かとか、
前開きフロントは釦かジッパーかとか、
袖口の釦は本切羽なのかとか、
釦は重ね釦なのかとか。

スーツに合わせるシャツやネクタイにはこだわる女性の方達は多いようですね。
これも、先ほどのスーツと同じで、
顔が違うのでこれが似合うとは決めにくいものです。

©Takayoshi Tsuchiya

ネクタイなどは結び方でも選ぶものが違います。
ウィンザーノットかシングルノットなのか。
一つ言えるのは、頭の大きな人と言うか、
ごつい感じの人には、ウィンザーノットで結び目を大きくすると、ポイントになり、
襟元がすっきりと見え、全体的にバランスが良いようです。
逆にホッソリとした人がウィンザーノットではそこに目が行き、
上手くバランスが取りにくいでしょうか。

誰にでも似合って、問題がないのは、
シングルノットにレギュラーカラーです。
ウィンザーノットの時には、ワイドカラーのシャツが良いですね。

映画を見ていて思うのですが、その人の年齢や性格や立場や職業などでも、
このスーツやシャツ、ネクタイは微妙に違い、
その演出で上手く見せる事ができるようです。
あくまでも、個人的な意見なので参考まで。

よく、街中のカフェにて人の観察をするのですが、
こんな事を考えて見ていると面白いものですよ。
ミキモトにもツリーが飾られてはいますが、
個人的に年末の感じが薄い銀座にて。
 

シングルスーツピークラペル。
シングルピークスーツ裏地仕様。