from ハワイ – 8 - クリスマスは忙しい!!!

(2009.12.28)

冷蔵庫の中に眠るローストターキーを今晩どう料理に使うか考えながらクリスマスメールを作っていると、ダカーポ編集部さんからメッセージが届いていた。「今年を振り返ってあなたの一大イベントベスト3について書いてください。そしてクリスマス前最後の日曜日には、お世話になっている編集さんから「可能であれば年内にもう1本原稿を。」察するに原稿の集まりが悪いに違いない。私も11月中旬に最後の原稿をアップしてから何も送っていない。なぜって、忙しいのである!!

アメリカいや海外に住んだ経験のある方ならよくよくご存知であると思うが、クリスマスは“超”がつくぐらい忙しい。次から次へと「しなければいけない」ことが目白押し。こんな時期に原稿が書けるのは子供がいない、家族がいない、仕事が無い、のどれか一つと豪語したくなるぐらいの忙しさである。

デザイン系の会社で仕事をしていた日本の年末も、入稿が絡んでいつも忙しかった。でも 会社は玄人の集まりだし、印刷屋さんもクライアントも年末年始のバタバタを想定してスケジュールを作っており、忙しくてもベルトコンベアーに乗ったように事は進んでいったものだ。それによく考えたら、日本の場合クリスマスはそれに続く年末年始の休みの為に忙しかったのだと思う。

ところが、アメリカのクリスマスと言ったら、11月最後の週の木曜日、サンクスギビングの直後から始まって12月25日まで約1カ月続くながーい滑り台の最後のところ、ここで華麗にジャンプしてキメなければ女がすたる!というぐらい、大事な「おつきあい」の晴れ舞台なのだ。ベルトコンベアーも何も無いけれど、かっこ良く1年を終わりたいのである。

写真が20パウンド(約9キロ)の七面鳥のロースト。これで今年は約5ドル安い!お料理の数々はその家のルーツそのもの、お母さんから引き継いだレシピが受け継がれている。写真の家庭のお母さんはスカンジナビア系移民をルーツに持つ人。定番のクランベリー料理だけでも4種類もある。全部で20品あまりにたくさんあって食べきれなかったので当然のようにお持ち帰りさせていただく。七面鳥の骨で作った雑炊はなかなかいけるので骨もいただいていく。

11月下旬になるとテレビのニュースでは、第一陣のクリスマスツリーコンテナーが本土から届いたという話題をとりあげる。「天候が悪かった為か今年のノーブルファー(もみの木の一種)は不出来、例年に比べると安価です。いくつかのコンテナーでは虫が発見されて消毒されました。」

ハワイでは、クリスマスツリーに使うもみの木は育たない。すべて本土から冷蔵のコンテナーで輸送されてくる。出荷元はワシントンやオレゴンなど寒い地方。養植ではあるけど生きている木なのでいいものを手に入れようと思えばサンクスギビングの直後から売られる第一陣でゲットしなければいけない。暑いところに 長く放置されているツリーは生きが悪くなる。

突然の不況に苦しんだ去年はツリーが売れなくて、かなりの業者が負債を背負いこんだ。今年はどこも控えめに入荷したのでクリスマス2週間前には完売したという。そんな訳で、生ツリー売りの写真をお届けしたかったけど、もうどこも売り切れである。

クリスマスツリーは生木に限る。大阪者のこの私でさえも、これだけは譲れない。なぜかというとその香しいことと言ったら、クリスマスの全ての思い出に取って代わるぐらい忘れられない良い香りなのである。普段はケチなアメリカ人もツリーは生木派が圧倒的に多い。ツリーの香りは家庭の香り、クリスマスの思い出そのものだ。

ツリーは大手スーパーや教会、ホームセンターなどいろんな所で売り出される。一番お高いダグラスファーは7F(2m10cm)ぐらいで$90ぐらいが今年の相場。偽物のなんちゃってツリーだと同じ大きさでそれよりちょっと高く$125〜$250ぐらい。長く使うことはできるが偽物の割に高い。ツリーはサンクスギビングの週末から売り出され、お正月過ぎまで飾られる。

こんな粋なデザインはハワイならでは、噴水にクリスマスのリースが浮かんでいる。常夏の島ならではの明るいクリスマス。同じく、パームツリーの中に強引に立つクリスマスツリー。小さく見えてもこれでも大きさは4mぐらい。飾り付けられてからそろそろ3週間、やや弱ってきて葉の色つやが悪い。

 
ツリーを買うと、次はセールである!かの有名なアメリカのブラックフライデーとはサンクスギビングの翌日の金曜日のこと。その日の朝 Eメールをあけるとセールのお知らせが30通ぐらい来ている。メールアドレスは極力残さない ようにしていたつもりが、いつの間にかこんなにばらまいていた。その全部を開けてみるだけでも30分はかかってしまう。それにどれもこれも無視できないぐらい安い!

あらかじめ作っておいたプレゼントのリストに目を通しながら狙いを定めた店を巡る。この時間帯はあの店がすいているに違いない、昼食時は飲食店の無いあのモールが狙いめ。交通渋滞とパーキングの数も考えて戦略を練る。

有名なウォールマートのオープニング(朝5時)では、デジタル家電を求めに人が押し寄せるので、店の中がカートで一杯になり、身動きができなくなるという。中にはカートを使わないで大型テレビを持ち運ぶ人も現れ、阿鼻叫喚と化すらしい。私は今までここだけは行った事が無い。あそこは私のような軟弱者には高嶺の花、すっかり水をあけられ勢力が衰えたKマートぐらいが空いていてちょうどいい。
 

この誘惑に勝てる人がいるだろうか? 今年のセールは例年より各ブランドとも早めに勝負に出た気がする。冬物が乏しいハワイでは、この時期を逃すともうトレーナーやセーターは買えない。11月ぐらいからクリスマス後のセールまで約1カ月で売ってしまい、残りの商品は寒い州に送られていくという。1月からは長袖Tシャツの春物が店頭に並ぶ。冬場に急な帰国が決まると血眼になって長袖を探すはめになる。備えあれば憂いなし、というわけで毎日買い物に走る。

こんなにたくさん仕入れてどうするの?というぐらい山ほど商品が並ぶ、ウォールマートのクリスマスコーナー。長さ15メートルぐらいの通路が約6本、全部クリスマス用のラッピング、オーナメント、収納箱などで埋め尽くされる。シーズンのはじめはもっとあったのだ。これらが23日あたりからものすごい勢いで安くなっていく。賢い主婦は来年の分をその時入れる。子供用の自転車売り場はほとんど空っぽの状態。子供だけでもヘルシーにと思う親心の現れ?

 
1日中車で走っても回れる店の数は限られている。交通渋滞、パーキング探し、商品を掘り起こして、最後にレジのながーい列に耐える。レジに並ぶ時間は時に30分、先のウォールマートでは1時間を超えることもあるらしい。この繰り返しで、昼食抜きでも3件か4件回るのが精一杯だ。当然買ってはみたものの気に入らないものも出てくる、結局翌日の土曜、日曜と3日間買い物と返品を繰り返し果てるのである。

明けて月曜日はこれまた有名なサイバーマンデー。お祭り騒ぎの週末を終えて仕事に戻ったら、今度は会社の高速ネットを使って仕事場でウェブショッピングをする日である。会社でなくても自宅でもウェブを使って地元で手に入らなかったものを探し始める。渋滞もパーキング探しも無いウェブショッピングは誠に快適で、マイルやポイントを貯めることもできて結構気に入っている。ギフトカードは去年あたりからかなり定着したプレゼントだけど、カードが入っている事を見越した郵便物荒らしが横行しだしたので、今年はE-メールでギフトカードが送れるというサイトが増えている。

ショッピングが一通りすんだら、今度はラッピングとそれを郵送する事を考える番だ。近くにいる友人はパーティででも会えるけど、遠くはなれた人には手渡しはできない。適当な箱を探し、ラッピングして、カードをつけ段ボールに入れて郵便局へ。郵便局がまた長蛇の列である。

諸外国、アメリカ本土、ネーバーアイランド、それぞれの地域ごとに『クリスマス前に配達できるデッドライン』があって、そのデッドラインごとに郵便局は混みに混む。最近は海外に送るエクスプレス便はすべて手入力で税関書類の内容を打ち込んでもらわなければいけなくなったので、1個送るのにやたら時間がかかる。後ろに並ぶ人の視線を一身に受けるのがここは慣れである。

さてここで、質問。あなたは何人の人にギフトをあげますか?日本だと多くの人が恋人と子供、配偶者と答えるだろう。

ギフト好きのハワイではそんな数ではすまない。家族、恋人はもちろん、いとこ、おじさんおばさん、おじいちゃんおばあちゃんさらに、兄弟の恋人、友人、友人の子供たち、職場の人、子供の学校の先生(!)、子供のクラメートたち(!)近所の子供たち、郵便屋さん、ゴミ収集のおじさん、更に別れた奥さんにまであげる人もいる。分け隔てなく愛を分かち合うのである。もちろんみんながそんなにあげる訳ではないけど、とにかくすごい数だ。

中でも驚愕する習慣はグッディーバッグと言って小さな袋にお菓子やいいもの(Goody)を詰め込んで配る習慣だ。小さな子供のいる家庭では保育園や幼稚園のクラスメートに配る為何十個も用意する。もちろん子供の数だけいる訳で、ギフト好きな人は会社の同僚にも同じようなものを用意する。今年は職場の人から私も3個ほどもらった。袋を用意したりネームタグを作ったり、凝りだすときりがない。この時期のお母さんの努力は計り知れないものがある。

生活レベルにもよるけれど、一般的にフィリピン系の人はギフトにお金をかけるので有名。我が日系移民の家族がそれに続く。 私も含めて日本から来た、現代日本人一世はチープ派。もともとクリスマスギフトの習慣があまりないからかもしれない。

アジア贈り物文化圏と呼びたくなるぐらいギフトには西低東高の地図がはっきりあらわれていて、アメリカ、特にヨーロッパ系の先祖を持つ人たちはあまり贈り物にお金をかけない。もちろん、生活レベルにもよるのだが。

敬虔なクリスチャンの人はギフトをほとんどしない。ギフトもサンタクロースも無し、クリスマスにあるのはお祈りと歌、彼らにとってクリスマスはただただキリスト様の誕生日なのである。そんななかでもちょっぴり何かしたい人というのがいるもので天使のオーナメントをもらったりする。オーナメントならまだいいが一番もらって困るのはやっぱり聖書だ。

興味があって長年いろんな人に聞いてきた結果、ローカル20〜30代の女の子が友達一人のギフトに使うのは平均$25(2,300円)ぐらい。むろん子供や、郵便屋さんが同じ予算のはずは無いし、両親や兄弟にはもっと金額を張る。

子だくさんのハワイでは自分には子供がいなくても友人の中に必ず子供が4人なんて人がいて、その子供たちがどんどん大きくなり若年で子供を産むので、ギフトの数は数年ごとにねずみ算的に増えていく。

またもや自分の話であるが、ハワイに来た当初のギフトは友人カップル3組3個だけ用意すれば良かった。ところが今年は25個、本当ならば軽く30個を超えるぐらい用意すべきなのだが日本人一世同士であまりお金をかけないようにしているのでなんとかなっている。

この土地で生まれ育った人ならそんな数ではすまない。フェイスブックに数百人登録するのが普通というハワイでは一体クリスマスギフトにいくら使われているのか想像を絶する。

ハワイ全体が、カードの請求書におびえながらなんとか無事に新年を迎えられるように祈っている感じである。来年は観光客の人もたくさん来て良い年になりますように。日本の皆さんも良いお年をお迎えください。

ものすごい電飾の家は近所でも有名になる。この時期になると子供を車に乗せてこんな家を巡るナイトツアーが密かに人気。電飾を毎年買い足していくうちにこうなってしまったのだろうが、一体電気代にいくら払っているのか考えてしまう。本当にアメリカ人は省エネができないので困ってしまう。