焼きものの郷へ Vol. 1 美濃焼 焼きものが作られるところを見に、土岐・多治見へ。

(2009.12.18)

毎日手にするうつわが、どこで、どんな風に作られているのか一度見てみたい。そんな思いをかなえるすてきな機会が訪れました。フェリシモの「日本の美しいもの」コレクションに、伝統的な焼きもので作られた「豆ざら」シリーズが登場するということで、焼きものの郷を取材することになったのです。

最初に訪れたのは「美濃焼」の郷、土岐市と多治見市。訪れるのは今回が初めて。美濃焼の窯元と現代陶芸作家の作品を置くギャラリー、まったく異なる顔を持つ2つの場所を訪ねました。

土岐市駄知町の「ヤマ兵製陶所」。
多治見の『陶林 春窯』。

窯元さんは、どんぶりの町として知られる土岐市の駄知(だち)町の「ヤマ兵製陶所」。お母さんが陶芸作りのいろはをていねいに説明してくれます。土のことから成形や素焼き、絵付けと釉薬、焼成に至るまで、大切なポイントをひとつずつ噛み砕いて。ていねいに削りをかけられ並んでいる素地や釉薬がかけられ真っ白の状態で並んで焼成を待つうつわたちを見ているだけで、なんだかわくわくしてきます。

取材の日は、たまたま週に一度の焼成の日。ガス窯の内側の大きさにあわせて、陶板とツクと呼ばれる脚になる陶器で棚を作りながら、うつわを積み上げていくところを見られました。焼成に1日かけて、冷ますのにまる1日以上かかるという気の長い作業。いろんなサイズのツクがかわいくて、カメラマンさんと2人釘付けに。職人さんたちにはごく普通の道具が、どれもとってもすてき。土にまみれて無造作に束ねられている道具たちを横目で見ながら、取材を続行。

ツクには大きさが刻印されている。小さなオブジェみたい。
ツクと陶板で棚を作りぎっしりと器をならべていきます。

ヤマ兵さんが作ってくれたのは、「アメ釉」という飴色になる釉薬がかけられた、味わい深い豆ざら。いろんな色が混ざったアメ釉は、昔から茶人にも好まれていたようで、土の成分や焼成の温度の加減で、キャラメルみたいな淡い色からバイオリンみたいな濃い茶色まで、その色の幅はとても広いようです。

そのあとに訪れたのは多治見の『陶林 春窯(とうりんしゅうよう)』というギャラリー&カフェ。オーナーの広瀬 摂(おさむ)さんは、お家が陶器商社をしていたこともあって、東京で建築士として働いた後に、イショケン(多治見市陶磁器意匠研究所)に入り直して、改めて陶器のことを勉強したという熱心な人。このイショケン、さまざまな現代陶芸作家さんの出身校としても知られています。

イショケンに行ったことをきっかけに、若手の陶芸家のための作品展示のスペースを作ろうと作ったのがギャラリー『陶林 春窯』。1997年に実家である陶器倉庫を改装して、日本建築の一軒家ギャラリーができました。

常設展示は、まるで陶芸好きな人のお家を訪ねたような自然な感じ。
「新里さんの蛍手の磁器です。光の透け方がとってもきれいでしょう」と広瀬さん。
お抹茶とお菓子と一緒に、うつわを楽しめます。
2階では個展や企画展を開催。たくさんの陶芸家がここで初めて個展をしました。

青木良太さん、新里明士さん、横山拓也さんなど現代陶芸の先端を行く作家さんから、伝統工芸的な作品作りをする作家さんまで、「美濃」に縁のある作家さんの作品を中心に展示しています。奥のカフェでは、作家さんのうつわでお茶がいただけます。お店で眺めて楽しんで、今度は使ってはじめて実感するうつわの魅力。広瀬さんからいろいろな作家さんのお話を聞いていると、それぞれの作家さんへの愛をひしひしと感じられます。

美濃の出身でないのに、美濃に根付く作家さんたち。それは、焼きものを作るためのいい環境といい関係があるからなのかもしれません。

陶林 春窯

写真/斎藤亜由美 ©felissimo

 

 

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