from 金沢(早川) – 1 - 石川県立美術館、新装オープン。人気パティシエのカフェ「ル ミュゼ ドゥ アッシュ KANAZAWA」へ。

(2008.10.01)

金沢は歩いてまわるのにちょうどいい大きさの街。
狭くまがりくねった裏通りを歩いていくと、金沢の色とりどりの歴史がよみがえってくるようです。
この街では、季節の変化を五感で感じることができます。
長い冬をむかえる準備はまず11月1日の兼六園の雪つり作業から始まります。

雪がうっすらと積もった兼六園をぜひ訪れてください。寒気は清々しいほど。雪晴れの日差しがあれば最高です。
待ち遠しい春。金沢の人たちは桜どれの日々です。
そして梅雨。雨の音をひっそりと聴くのもいいですね。梅雨明けのあとの夏の兼六園には、早朝いらしてください。斜めに差す朝の日差しに、緑の苔がにおいたちます。

ひたすら新涼を待つ日々。そしていつしか秋が深まっていきます。
どこからか金木犀の香りが風に運ばれてきます。兼六園の山崎山に登れば、雑木林は黄金色の波。
この季節の移り変わりと共に、旬の魚、野菜、果物を味わう楽しみがあります。

こんな金沢の街に、新しいスポットが誕生しました。
兼六園のお隣に、本多の森の緑が映える明るい美術館として、石川県立美術館が、新装オープンしたのです。
1983年の開館から20年以上がたち、空調設備の老朽化、収蔵場所不足などを改修するため、昨年10月から22億円をかけて一年間、改修工事が進められてきました。

新装なった美術館は、収蔵庫を増築し収容能力を5割増としたほか、中庭側の壁面に大型ガラスを導入し、天井や床の色を塗り変えて明るく開放的な雰囲気になりました。
エスカレーターを新設し、エレベーターも増やして、バリアフリー化にも配慮。
周囲に散策路を整備し、本館裏側にも入り口を設け、回遊性を高めています。
コンサートや各種大会などに貸し出すホールは、最新の視聴覚機器を備え、「開かれた美術館を、広く県民に活用してほしい」と話す嶋崎丞館長の想いが伝わってきます。閉館時間が午後7時に延長されました。

館内には、和倉温泉の「加賀屋」子会社が、石川県七尾市出身で世界的に活躍するパティシエ・辻口博啓さんにプロデュースを依頼したカフェを出店。
本多の森を映しこむ漆黒の壁の茶室で、辻口オリジナルスィーツと玉露が味わえます。

新装開館前日、プレスカンファレンスが行われ、辻口さんのカフェ「ル ミュゼ ドゥ アッシュ KANAZAWA」のお披露目がありました。
開かれた美術館にふさわしく、エントランスから参道のようなアプローチを進むと、そこは中庭の緑を一面に見渡せるカフェ「ル ミュゼ ドゥ アッシュ KANAZAWA」。
カフェの奥は、辻口さんの「和をもって世界を制す」をコンセプトに、金沢の「和」を盛り込んだオリジナルスィーツと玉露を本格的に楽しめる茶室。

 

地元の食材「珠洲の塩」「のとミルク」「五郎島金時」「のと大納言」「金時草」「加賀棒茶」などを使った辻口オリジナルスイーツが、漆黒のテーブルで、コーヒー、紅茶、ハーブティーとともに楽しめます。
オープンキッチンのような調理場で、ガラス越しにケーキ作りが窺えます。美術館でも心のこもったフレッシュなカフェタイムを過ごすことができるようになり、うれしいです。
カフェの入り口から連続したイメージで、黒が基調の鳥居を進むと、そこが茶室です。
扉に描かれたロゴ「G」は、辻口氏によるデザイン。この茶室のキーワード「コンセプトG(玉露)」を表すとのこと。

茶室内は、総漆塗りで、本多の森の緑や、木もれ日を映し出します。壁にも天井や床にも、金沢の空と樹々の緑が映し出されると、その境目がわからなくなり、まるで空間に浮かんでいるようです。

お茶室では「玉露のコース」が味わえ、入室は最大5名まで。11時からスタートし、1時間ごとの入れ替え制です。
ルームチャージ込み3,000円のコースは、季節に合わせたお菓子を3皿と、それに合わせて、梅茶、玉露を3煎、最後にほうじ茶が目の前で点てられます。
樹々の緑に囲まれ、鉄瓶の釜に沸く湯の音を聞きながら、漆に触れて、新しいスタイルのスイーツを楽しむ。
「この空間で、石川県から世界に向けて『日本人である心』に誇りにもってほしい」と辻口さん。

カンファレンスの帰りにもう一度印象深い茶室を見ていこうと、茶室の「G」の扉を開きました。
ちょうど辻口さんがお客さまと談笑中で、「今ちょうどお茶を点てているので、ご一緒にどうぞ」と気軽に声をかけてくださいました。
辻口さんがデザインした重厚なガラスの茶器で一煎、二煎、三煎お茶をいただいている間に、お客自らほうじ茶をお席で炒ります。お客ひとり一人によって味わいがちがってくる、お客参加型が楽しい趣向です。

「これが辻口流なんだよね!」と、辻口さん。
明るい笑顔で、するどい感性をもつ辻口さんと握手をしました。大きく、あたたかく、厚みがある手から、「日本人である心」がスイーツを通して、県立美術館を訪れる人々に伝わっていくのでしょう。
明るい雰囲気に生まれ変わった県立美術館を訪れ、カフェでほっと心をやすめてください。日本の心がきっと感じられます。

 

石川県立美術館

石川県金沢市出羽町2-1 Tel.076)231-7580 
こけら落としの「法隆寺の名宝と聖徳太子の文化財展」は9月20日~10月24日に開催され、無休で、午後7時まで開館。