from パリ(石黒) – 3 - パリを走る。

(2009.09.18)
ローラースケートのツアー中の写真。実際に走っている臨場感が撮れているような気がして、気に入っている1枚。

パリは「歩く街」。街並みを眺めながら歩いていると、やはり、美しいパリ。いつも車で通る道も、自分の足で歩いて回ると、思わぬ発見があったりします。そしてこれから秋冬にかけて 交通機関のストが始まると、移動手段を奪われたパリ市民が、こぞってみんな歩き出す。女性の大敵・石畳にヒールが挟まったり、狭い歩道に住居用のゴミ箱が放置されっぱなしだったり、車が乗り上げて駐車していたり、わんこ&飼い主の残していった物があったり……と、いつも危険がどこかに潜んでいて、必ずしも歩きやすいは言えないのですが、今回はそんな「歩く街パリ」を、スピードを上げて、走ってみましょう。

パリを走るといえば、まずは王道、パリマラソン。ニューヨークシティマラソンと並んで、最も有名な大会の一つ。毎年4月の上旬に行なわれます。プロ競技部門の後に、市民マラソンが続きます。今年のパリマラソンの車椅子部門では、日本から廣道純選手が参加し、10位入賞しています。
足で漕いで進む、トロチネット。大人も子供も、気軽に楽しめ、折り畳めば持ち運びにも便利。平日には、 スーツ姿の男性がトロチネットで移動するのを見かけたり、地下鉄の中に持ち込んでいる人が結構います。天気の良い週末にはトロチネットで散歩する家族もいたりして、微笑ましい。
パリ市内にレンタル自転車「ヴェリブ(Vélib)」が設置されてから、早2年。設置場所も自転車専用レーンも大幅に増え、いまやすっかりパリの風景に溶け込んでいます。レンタル方法は、1日、1週間、そして1年と3種類。ICチップ付きのクレジットカードがあれば、誰でも気軽に利用できます。ただし、パリ市内の交通には十分ご注意を!

そして、「パリを走る」といえば、毎週金曜日夜と、日曜日の午後に、パリ市内をローラースケートで駆け巡るツアー。パリ市が全面的にバックアップするこのイベントは、開始から10年の歴史を誇り、今やパリ名物の一つ。日曜日の午後は、スケートで走れてブレーキができる、という人向きのゆったりムード。金曜日の夜は、とにかくスピード重視のハイレベル集団のツアー。どちらも、ローラースケートさえあれば、誰でも無料で、その場で参加できます。

ローラースケートは、レンタルできます。このお店は、日曜日午後のツアー出発点バスティーユ広場にあり、ヘルメット、膝アテ、肘アテ、手首防具のフル装備で、12ユーロ(価格は予告無く変更になる事があります)。借りる際には、身分証明書が必要。
全ての車輪を縦一列に並べたインラインスケートが主流。昔懐かしの、自動車のように車輪を四角形に配置したスケート靴を使用している人もいる。ツアーに参加するには、なにより足に合うシューズ選びが大切。

晴れた日曜日の午後。14時を回る頃から、バスティーユ広場には、ローラースケートの人々が続々と集まってきます。同時に、周囲の交通規制が始まります。14時半に、ローラースケート専門店『ノマド(NOMADES)』前から、パリ市警と Rollers & Coquillagesのスタッフ達に先導された集団がスタート。

日曜日の主催者、Rollers & Coquillagesのホームページでは、コース内容を事前にチェックできる。休憩ポイント、高低差などが記載されていてとても親切。出発に間に合わなかった場合も、地図をたよりに、別地点で集団に合流することも可。

通常、10分から15分程度走ると、短い5分程度の休憩。先頭から最後尾まで、走行中に長く伸びてしまった集団を、一通りまとめる役割があります。この時点で、初心者、スピードが出せない人は、集団の前方に移動しておくのがコツ。だいたい1時間半ほどこれを繰り返すと、大きな広場で、20~30分の長い休憩に。後半も、同じく短い休憩を繰り返しながら、17時半頃には、出発点のバスティーユ広場に戻り、解散します。前半、後半ともに、距離は同じくらいのはずなのに、いつも後半は、あっという間に過ぎる印象。

ツアー中、ローラー達は、身振りで合図をしあいます。前方集団が、両腕を頭の上に挙げるしぐさをし始めたら、スピード落とせ。集団が右や左に曲がる際には、「YMCA」を歌う時のフリ、Cの要領で、両腕を使って左右を指示。後方集団に道筋を伝えます。道路に大きく開いた穴など、足をとられてしまいそうな危険な場所を、ローラー達が教えあうことも。お互いの安全確保のために、コミュニケーションは欠かせません。

パリ市の警官達は、バイク、車両で、ローラー集団の前方と後方で、一般車両や歩行者達の交通整備にあたります。ローラースケート着用警官は、ローラー達と一緒に滑走して、安全な走行をサポートします。

ツアーには常に赤十字の隊員が、これまたローラースケート着用で同行。万が一、転倒による怪我などがあった場合にも、初期救助をしてくれます。ベージュにオレンジのラインが施されたユニフォーム。

集団が走行する間、完全に閉鎖されてしまう道路。通行再開を待つ乗用車や歩行者から、時折、応援の掛け声があったり、足止めをくらって不満な人達が、自動車のクラクションを鳴らしたり。確かに、例えば自分がタクシーに乗っている時にこの状況に陥りたくはないよなぁ、とも思いつつ……。時折、ローラー達の流れが切れたところを見計らって渡ろうとする歩行者に、スタッフが、大声で厳重注意することも。ローラースケートとはいえ、スピードが出ているので、ぶつかると、とても危険。パリで、運良く、運悪く(?)このローラー集団に出会った場合には、皆さん、絶対に無理をして渡ったりしないで下さいね。

人、人、人…その数に圧倒。走行集団の先頭から最後尾までは、数キロにわたることも。

沿道で、ローラー集団が走行し終わるのを待つ人々。中には、走る私達の写真を撮る人々も。日曜日ツアーには、専門のカメラマンがいて、Rollers & Coquillagesの公式サイトに「今日の写真」と題して、ツアー毎の写真が掲載。雰囲気が伝わってきます。

日曜日午後のツアーには、毎回名前がつけられています。たとえば、フラットなコースだった7月12日は、Paris nous sourit(パリが私たちに微笑む)。宮崎駿作品タイトルのNausicaa(ナウシカ)の名が付いていた日も。名前の由来が何となく伝わってくる回と、どうしてこんな名前がついてるの???と謎々のような回。いずれにしても、わざわざコースに凝った名前をつける遊び心が、お茶目。

ツアーには、時々、奇抜な衣装や、お揃いの衣装で参加する人達がいます。タータンチェックのキルトスカート着用の男性とか、ギリシア神話の神々のように仮装した人達とか、ベルギーのお祭りで被る黄色と黒の星型帽子を被った集団とか……。友達同士、家族同士、恋人同士で、それぞれの楽しみ方で走ります。

子供を、走る専用ベビーカーに乗せて、一緒に参加する親子。パリでは、ベビーカーを押しながらジョギングするアスリート母を見かることがあります。それにしても、「走る仕様」になったベビーカーがあることに、ちょっと驚き。

ちなみに、日曜日の午後の3時間、金曜日夜22時から3時間走るだけじゃ物足りない!、と言う方には、ノートル・ダム寺院前の広場で行なわれているアクロバティックパフォーマンスをどうぞ。とにかくローラースケートで走って走って走りきって、身も心も空っぽにしたいという方には、パリを離れ、F1でおなじみの街ル・マンにて、毎年6月の週末に開催されるローラースケート版ル・マン24時間がおすすめです。Bonne course !!!

 

日曜日午後のツアー Rollers & Coquillages

金曜日夜のツアー Paris Roller

ローラースケート版24時間ル・マンレース