from パリ(河)- 29 – パリっ子が憧れるロンドン週末旅行

(2014.06.30)
煉瓦小路に入ると素敵なレストランやコーヒーハウスに出会えます。
 
パリとロンドンを結ぶ鉄道、ユーロスターが開通してからはや20年。フランス人のことを「カエル」、イギリス人のことを「ローストビーフ」と呼び合う古典的な悪口が存在するほど、歴史的に仲が悪いことで知られる英仏ですが、両都市を約2時間半で結ぶユーロスターの出現で、両国の距離が縮まったのは事実。街中から発着するので、ビジネスマンの移動にも重宝がられ、ロンドンっ子はパリで、パリっ子はロンドンで、小旅行を楽しむのがお洒落な週末の過ごし方にもなりました。ただ、お隣の国といってもイギリスは物価が高いため、イタリアやスペインほどには気軽に旅行できるわけではありません。距離は近くても、心理的には結構「気合のいる」旅先と言えます。
長いユーロトンネルを抜けて、ロンドンの街に降り立つと、まず見えてくるのが煉瓦造りの街並み。白い石造りの建物が多いパリの景観とは一味違う、しっとりと落ち着いた色合いが新鮮です。中世の時代までは木造建築が多かったのですが、1666年のロンドン大火でほぼ全てが焼失してしまってから、建築規制が設けられ、現在のような煉瓦造り、石造りの町並みが造られていきました。人気スポットのひとつとして、あのコンラン卿がプロデュースしたバトラーズワーフという地区があります。タワーブリッジの東、テムズ河沿いにある古い煉瓦造りの倉庫街を再開発した地区で、何とも風情があります。お洒落なレストランやバーが並ぶデッキから眺める夜景も最高です。
  • 人気スポット、バトラーズワーフから眺めた、テムズ河沿いの夜景
    人気スポット、バトラーズワーフから眺めた、テムズ河沿いの夜景
  • 高級ブランド店の並ぶ、ニューボンド・ストリート。
    高級ブランド店の並ぶ、ニューボンド・ストリート。
  • アロマオイルで有名なニールズヤードの本店があるカラフルな広場。
    アロマオイルで有名なニールズヤードの本店があるカラフルな広場。
  • 映画「マイ・フェア・レディ」で、オードリ・ヘップバーンが花売りをしていたコベント・ガーデン。
    映画「マイ・フェア・レディ」で、オードリ・ヘップバーンが花売りをしていたコベント・ガーデン。
ロンドンっ子の生活に根付いているパブ。

パリからカフェがなくなったら、パリではなくなる、と言えるほど、カフェはパリの景観を形成している不可欠な要素。ロンドンで、これに当てはまるものは、間違いなくパブでしょう。街のいたるところにある、由緒あるユニークなデザインの看板を目印とした、華やかな店構えのパブはまさにロンドンのシンボル。朝から夜までいろいろな用途で使えるパブは、イギリス市民の生活になくてはならない存在です。

パブの歴史は古く、その原型は古代ローマ時代(起源1世紀)に存在したと言われています。それから、中世の時代に「イン」、「タヴァン」、「エールハウス」と呼ばれる宿屋と居酒屋を兼ねた施設へと発展し、これらを原型としながら、19世紀に「公共の場」という意味の「パブリックハウス=パブ」が形成されていきました。当時は宿泊場所や、演劇、クリケットなどの娯楽施設、政治活動の場を備えた社交場でしたが、現在は居酒屋の機能だけを継承しているパブが一般的です。

パブが一番盛り上がるのは、やはり夕方から夜にかけて。仕事帰りのサラリーマンがぞろぞろと集まり、ビール、カクテル、ワインを片手に、わいわい騒ぎます。イギリス人にとってお酒は「酔うために飲むもの」という文化があるらしく、何も食べずに外で立ったまま飲むのが定番のスタイル。羽目を外して道端で叫ぶ酔っ払いも少なくありません。これは、フランスではそれほど見かけない光景です。イギリス人のお酒の飲み方は、酔いつぶれて駅のホームで寝てしまう日本人と何となく共通点があるような気がします。

  • 夕暮れのパブ。お酒で1日の疲れを癒すロンドン市民。
    夕暮れのパブ。お酒で1日の疲れを癒すロンドン市民。
  • リバティ・デパートの裏にある、1898年創業のビクトリアンスタイルのパブ、「ザ・クラチャン(The Clachan)」。
    リバティ・デパートの裏にある、1898年創業のビクトリアンスタイルのパブ、「ザ・クラチャン(The Clachan)」。
また、イギリス料理といえば「まずい」というイメージがつきまといますが、最近では「ガストロ・パブ」と呼ばれる、料理に力を入れたお店も出てきています。定番の料理といえば、たらなどの白身魚の揚げ物とフライドポテトを盛り合わせた「フィッシュ&チップス」。優良店のものは、油控えめでさくっとしていて美味。イギリスではカトリックの習慣で金曜日に魚を食べる習慣があり、「金曜日の夜はフィッシュ&チップス」が一般的。ちなみに、もうひとつの定番料理、ローストビーフは、伝統的に日曜日の午後に昼食(サンデーロースト)として食べる習慣があります。

最後に忘れてはならないのが、イギリスで最も美味しい料理と良く言われる「イングリッシュ・ブレックファースト」。好みの卵料理とベーコン、ソーセージ、焼きトマトとマッシュルーム、豆料理、トーストがセットになっている盛りだくさんの朝食で、パンとコーヒーだけのフランス式朝食と比べると、とても豪華です。朝食ですが、パブでも味わえます。

  • イギリス伝統料理各種。フィッシュ&チップス
    イギリス伝統料理各種。フィッシュ&チップス
  • リソーセージ&マッシュ
    ソーセージ&マッシュ
  • イングリッシュ・ブレックファースト
    イングリッシュ・ブレックファースト
  • スコットランド産の手長えび
    スコットランド産の手長えび