from パリ(たなか) – 35 - ギャラリー・ラファイエットとノエル市。

(2009.12.28)
落ちて来るプレゼントに押しつぶされる強迫観念で、こわい夢を見そうだ。プレゼントの嵐で幸せな夢を見そう、というのが普通かも知れない。どっちにしろ、プレゼントは貰うよりも、あげる方が楽しいものではあるが。

コペンハーゲンで地球温暖化対策の国際会議が開かれていたちょうど同じ時期に、皮肉にもヨーロッパは寒波に襲われ、パリも最高気温が1度前後の日が続いた。カフェのテラス(屋外)を電熱ヒーターで暖める“パリの無駄遣い”が国際会議でやり玉に上がったらしい。一部先進国と大多数の途上国との経済格差は、エネルギー問題に関わる生活習慣全般の問題でもあるので、溝はなかなか埋まらない。先進国の快適な暮らしを変えるには、発想の転換というエネルギーが必要かも。

パリでは12月になると、ノエルに向けて街中が活気づく。カフェのヒーターや電飾などで余計なCO2が排出されるはずだが、高揚した気分のエネルギーで生産性も上がれば相殺されるんじゃなかろうか、なんてパリの片棒を担ぐわけではないが、これは先進国の奢りか、やはり。

しかし、パリの人がノエルにかける熱意はすごい。ショーウィンドーはどの店も盛大に飾り付けられ、プレゼントの年末総決算みたいな様相だ。ノエルを翌週に控えた土曜日に、パリのお買い物の象徴、ギャラリー・ラファイエットへ行ってみた。前の通りには警察官が出るほどの混雑ぶり。人並みを掻き分けようやく店内に入ると、プレゼント目当てとおぼしきカップルや家族連れで超満員。フロア中央の天をつくようなツリーと、丸天井から落ちて来るような巨大なプレゼントの箱が目に飛び込む。さすがに消費の殿堂だ、圧倒的なインパクト。エスカレーターに乗って吹き抜けになった店内を眺めながら、このゴージャスな光景はこの先も予定調和で続くのだろうか、と一瞬覚めた眼で考えたりもした。
 

不景気風もどこへやら、パリはこうでなくっちゃ。
オスマン大通りのマルシェ・ド・ノエルと、後はギャラリー・ラファイエット。
こちらプランタン。歩道をあふれる人の波。
プランタン前のアーケードは、なんだか七夕風。

ラファイエットやプランタンが並ぶオスマン大通りにも、マルシェ・ド・ノエルと呼ばれるクリスマス市(小屋)が数軒並んでいたが、シャンゼリゼ大通りのクレマンソー広場あたりには、通りの両側にずらりと170軒近く並んでいる。品揃えも豊富で、やや観光客向けのきらいはあるがこちらも家族連れで賑わっていた。6畳ほどの木造小屋を覗くと、チーズ専門、ソーセージ、ハチミツ、焼き菓子など地方特産の食品を売る《道の駅》ふうの店、帽子、毛皮のスリッパ、手袋など防寒グッズを売る店、キッチュなアクセサリ、星占い、クリスマスの人形屋など寒いノエルを楽しむグッズであふれている。ちょうど浅草の仲見世のような雰囲気で、素見しながら歩くのが楽しい。

私は寒波襲来の前に行ったが、小屋の屋根には雪化粧、歩道には白い雪を吹きつけた樅の木まで配置する凝りようで、どんよりと重い空模様もあって遠目にはアルプスの村のようだった。先日パリに降った雪で本物のアルプスになっちゃったかな。トナカイのジェット・コースターや、アイス・ショーの小屋もある。クレープを焼く匂いや、赤ワインに香り草を入れて温めるヴァン・ショー(ホットワイン)の甘ったるい香りがあたりに漂って縁日気分。酒に弱い私も飲んでみたが、アルコールも飛んで日本の屠蘇みたいな感じだ。

パリに眠り猫はあっても、猫鍋は、まだない。
まるでスキー場みたいに寒い。ツリーの雪はフェイクだけど、寒いのでリアルに見える。私も耳当てが欲しいな。冬至前のパリは雪の日が続いたので、偽の雪の上の本物の雪が積もったはず。
キミたち、サラミは大人の食べ物だよ。
ヴァン・ショーVIN CHAUDは一杯3€、安いとこで2.5€。
剥製かと思ったら、この牛、藁を食んでた。小屋の中で、キリスト誕生のドラマ?が見られるらしい。お代は2€。
トナカイのそりに乗るのは寒いから、パパはここで待ってるよ。後はグラン・パレ。
この、どぎつい色がフランスっぽい。

パリの緯度を調べたら48度、日本最北の宗谷岬よりもさらに北だ。寒さは覚悟していたが、こちらの緯度を実感するのは太陽の高さだ。午後1時頃の太陽が、東京の夕方みたいに低い位置にあって、通りを歩いていても逆光になると眩しくて前が見えない。冬でもサングラスを掛けたくなる。でも、お日様が出てればまだしも、どんよりと曇ったり、みぞれだったりの日が多い。夕方5時になると真っ暗だし、夜10時半ころまで明るかった夏が嘘のようだ。寒く、暗い冬を少しでも楽しもうと、イルミネーションを飾ったり、マルシェ・ド・ノエルを開いたりする気持ちがすごくよくわかる。部屋に閉じこもっていると鬱になりそうだから、寒くても外に出て、ヴァン・ショーでも飲んで、景気つけなきゃ。冬至を過ぎたら、春は近い、はずだが。