from パリ(河) – 10 - パリの街角に春の到来を告げるものたち。

(2010.04.22)
15区のエッフェル塔近くの公園で、春のピクニックを楽しむ家族。

春が来ました! 青空と太陽、鳥のさえずり、そしていっせいに芽吹き始めた街路樹!今年の冬は雪が続いてとても暗く寒かっただけに、陽光をこよなく愛するパリジャンの喜びもひとしおです。パリの街角にいち早く春の訪れを告げてくれるのが花屋さん。水仙にすみれ、ヒヤシンスに、色とりどりのチューリップ。3月になると、店先にフレッシュな色彩の春の花が溢れ、街ゆく人の心をほっこり暖かくしてくれます。4月に入って復活祭が過ぎると、公園の八重桜の木が愛らしいピンク色の花を咲かせます。日本の桜並木のような月夜に映える耽美さはないけれど、くっきりと晴れ渡った青い空の下、ぽわーんとした素朴な花をつける桜もなかなか良いものです。
 

フランス人が桜の木の下で陣取りする光景かな?
マレ地区のヴォージュ広場。久しぶりに顔を出した太陽の光を楽しむパリ市民
快晴の空の下で芽吹き始めたプラタナスの木
ボタン桜とエッフェル塔。

花屋さんのみずみずしい花たち

商店街の食品店にも春の到来を告げる食材が並びます。八百屋さんでは4月から5月にかけて美味しいホワイト・アスパラガスが登場。フランス人、そしてお隣りのドイツ人はこのホワイト・アスパラガスが大好き。19世紀末の小説家、マルセル・プルーストも好物だったようで、『失われた時を求めて』の主人公の食卓に度々登場します。

いろいろな食べ方があるけれど、ビストロでよく見かける一番オーソドックスなレシピは、ムスリーヌ・ソース添え。このソースがどんなものか簡単に説明しますと、水とヴィネガーに塩と胡椒を入れて煮詰め、卵黄を加えて、ホイップしながら溶かしバターを少しずつ足していきます。それから、レモンで味を整えて泡だてた生クリームを加えます。モスリン布地のように軽やかなソースです。

家庭では、茹でたてのアツアツのアスパラに、フレッシュな良質バターをからめ、塩、胡椒して、みじん切りにしたパセリを和える一品も、シンプルだけどとても美味。ロワール地方などのフルーティーな若々しい白にとてもよく合います。

ロワールと言えば、山羊のチーズが有名な地方ですが、この山羊チーズも、フランス人に「ああ、春だなぁ」と感じさせる食材のひとつ。フランス語でシェーブルと言う山羊のチーズは1年中ありますが、春から夏にかけてが旬。なぜかというと、山羊は3月に出産し、赤ちゃんヤギのために美味しいミルクをたくさん出すようになり、また、春から夏にかけて青々と生い茂る牧草のおかげで、濃厚なミルクを造るからです。

「山羊のミルクは独特なクセがあるので、ちょっと苦手かな」、という日本の方も多いかもしれませんが、フレッシュなものはクセがなく、食べやすいです。初めてトライされる方は、例えば、日本のチーズ屋さんで手に入る若い「クロタン・ド・シャヴィニョル」を試してみてはいかがでしょうか?
 

八百屋さんの店先に並ぶホワイト・アスパラガス。グリーン・アスパラガスと違い、皮が固くて厚いので、思い切ってたくさん剥かないと、筋張って美味しくない。塩をたっぷり入れた水から火にかけて15分、「ちょっと柔らかすぎないかな?」と思うくらい茹でる方が美味しい。
近所のチーズ屋さんのシェーブルチーズたち
家で早速シェーブルのチーズプレートを。細長いのはプロヴァンス地方のビュシェ・ド・バノン。楊枝がついている小ぶりのものはバラット。この日はオレンジと洋ナシのジャムを添えました。山羊のチーズはジャムを付けて食べるのも美味。