from パリ(たなか) – pré 5 - パリのメトロとカルネ(回数券)の魅力。

(2009.04.20)

17年ぶりのパリで懐かしいなと思ったのは、やっぱりメトロだ。カルネ(回数券)を買うときに、以前は窓口で駅員とカタコトのフランス語を話したものだったが、現在の駅の構内は自動券売機が主流。窓口を覗いて駅員を探したが無人状態なので、しょうがなく券売機のモニターを見て、画面にタッチして、何度かスクロールして、ようやく切符とつり銭が出てきた。もちろんフランス語に堪能な、わが社のスタッフの世話になったが、回数券を使い切った時に今やったことを一人でちゃんと再現出来るか不安だ。

コンコルド駅を埋め尽くすアルファベットのタイル。美しい!の一言。オールドローマン体の書体、白と紺の配色。タイポグラフィの傑作だ。フランス革命の時の人権宣言が組まれているそうだが、何処からどの順に読むんだろう? 分かったところで、フランス語初級勉強中の私には難しいが

パリの電車は未だに手動ドアが多数派なのにはびっくりした。しかも開閉方式がレバーだったり、ボタンもあったかなあ。たまに自動式の車両もあって、電車が止まる直前に旅なれた旅行者よろしく開けようとするとフェイントを食らう。多様性と自己責任の国だと思えば、まあ納得がいくことではある。振り返って東京の地下鉄の過保護とも思えるサービスを、外国人はどう思っているのだろう。

ルーブル・リヴォリ駅で電車を降りたホームからルーブル美術館は始まっている。展示ケースの中の作品は時々変わったりするんだろうか

ホームから出口までの細く長い通路には階段や交差点もあって、まるで地下迷路だが、アリの気分になって動き回る感覚が私には面白い。時代物のタイルで壁面が装飾されていたり、美しいポスターを眺めたり、暇な観光客にはストリートミュージシャンの演奏もおまけ気分で十分楽しめる。駅の構内は、おそらく開通当時からあまり変わってないのではと思うが、どんなものだろう。電車に限らず、使えるものを徹底的に使い切る生活スタイルが、ケチと言えばそれまでだが、ビンボーっぽく見えないのはフランスのオーラか? 最近、東京丸の内で話題の中央郵便局の建て替え問題、フランスだったらどんな解決をするのかな。

 
駅構内に美術展のポスターが多いのは場所柄か

私は東京のメトロでも回数券愛好者だ。10回分の料金で11枚、つまり1割引というのが最大の理由だが、切符(紙の印刷物)が好きということもある。しかし時代の波には抗しきれずパスモも併用する。確かに便利だ。しかし割引がないのは、いかがなものか。バスカードだって割引があるぞ。それはともかく東京で電車の改札口に、パスモ専用が増殖しているのが気にかかる。印刷物のデジタル化の波が、切符にも押し寄せている模様で、切符愛好家としては由々しき問題だ。

左が現在のカルネ、右は17年前のもの。古いフランス映画に、主人公が肩身はなさず大切にしてるメトロの切符を取り出して、パリの生活を思い出すシーンがあったが、あれは『ペペル・モコ(望郷)』? それとも『カサブランカ』? 昔の厚い紙に活版で印刷された切符でないと、想い出は盛り込めないな、やっぱり

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