from 鳥取 – 26 - 梨といえば鳥取では青梨。こだわりの「二十世紀梨」。

(2009.08.18)
きれいな緑色の二十世紀梨。

鳥取県で「二十世紀梨」が栽培されはじめてから100年以上たちます。
他の県では梨といえば、赤梨が一般的で「幸水」「豊水」が真っ先に浮かんできますが、鳥取県では梨といえば、青梨。そして、「二十世紀梨」ということになります。
収穫の時期の9月ともなれば、親戚や知り合いの農家から瑞々しい「二十世紀梨」が家に届けられ、毎年旬の味を堪能しています。
実際、梨は本来青いものと思い込んでいる鳥取県の人は少なからずいるのではないでしょうか。

これまでの先人たちの努力で、県内にはたくさんのおいしい梨を生産する産地がいくつもあります。
歴史の古さからでしょうか、総じて梨農家は栽培についてこだわりがあり、梨つくりに関しては、細かいところまで、妥協を許しません。
それが、ここまで産地を維持してきた理由であると思いますが、常に最高の梨をつくるための努力を続けています。

例えば、袋掛けです。「二十世紀梨」は独特のきれいな緑色の果皮を保つために、2回の袋掛けをどうしてもしなければなりません。
これまで、袋については材質や形状、そして、袋掛けの時期に至るまで、いくつもの改良が加えられてきました。それは、実際に梨を栽培する梨農家のこだわりがあるからにほかなりません。

袋掛けされた二十世紀梨の収穫風景。

また、それを支えているのが県内の指導体制のシステムです。
大学・県・農協・生産者の組織がお互いに協力しあって、末端の農家に至るまできめの細かい情報がいきわたる指導体制が組まれています。
農家が疑問に感じたことは農協が窓口となって最初に対応することになりますが、そこで解決できないことは、すぐに県の園芸試験場や鳥取大学が対応するようなしくみが出来上がっています。
鳥取県の梨農家は最新の情報を求めれば、栽培にすぐに生かせる環境が整っているのです。

梨に関する仕事に携わって20年余り経過しますが、梨農家の栽培技術の高さと観察力にはいつも関心させられます。
その年の梨の開花時期から生育状況、病害虫の発生状況にいたるまで、実によく勉強しています。冬のせん定技術については特にこだわりが強く、植物生理の基礎を踏まえて、独自の理論をそれぞれが持っています。直接話を聞く機会がありますが、興味深く聞き入ることもしばしばです。

 

二十世紀梨の花。

その時に意見を求められることがありますが、いい加減な発言をしようものなら、大変です。
間髪入れず反論があり、ギュウの音もでないほど指導していただくことになります。
梨農家と栽培技術のことで議論することは、ある意味真剣勝負であると言わねばなりません。

そのような農家が数人集まると、それぞれの「二十世紀梨」栽培の考え方を主張することになります。それぞれの主張に接点があればまとまるのですが、主張は平行線をたどり、議論が熱をおびることもしばしばで、夜遅くまで話しこむことがあります。
結局、今年の梨の出来具合だけが農家の主張を証明することになります。

鳥取の梨農家は「二十世紀梨」が本当に好きなのです。いや、「二十世紀梨」を作ることが好きなのでしょう。晴れの日も、雨の日も、夏の暑い日も、雪の降る寒い日も、大抵果樹園にいておいしい梨をつくることを考えているようです。

そんなこだわりの梨農家が作った「二十世紀梨」の収穫も間近となりました。
8月下旬から市場出荷され、一般の小売店でも一斉に販売されます。
今年は春の訪れが早く、梨の開花も平年に比べ5日程度早まりました。
開花の早い年は、おいしい梨ができると言われています。

こだわりの鳥取梨農家が育てたおいしい二十世紀梨を是非ご賞味ください。

筆者プロフィール

八田 辰也(はった・たつや)

鳥取県庁生産振興課。鳥取県に生まれて鳥取県で育ちました。職場も鳥取県内ですのでほとんど県外のことを知りません。逆に県内で作られるおいしい農産物を当たり前と思い込んでいて、県外の方に「鳥取の〇〇はとてもおいしいですよね。」などと言われても当たり前すぎてピンとこないことがあります。ただし、二十世紀梨は全国に誇る鳥取県を代表する名産品のひとつです。たくさんの方にできるだけPRして、是非召し上がっていただきたいと思います。