from パリ(河) – 8 - 寒い冬はジビエ料理と赤ワインで。

(2010.02.16)
今年はこんな雪景色を何回か見ました。

今年のパリの冬は寒い。昨年の12月後半から、小雪の舞う、灰色の天気が続いています。パリでこんなに何度も雪が積もるのは、数年ぶりのことだそう。今年は世界中で寒波が来ているようで(日本はどうですか?)、テレビでは、ワシントンで-35°、モンゴルではなんと-60°を記録したというニュースが流れていました。パリはそうは言っても-3°ほどの世界なので、-60°なんて想像を絶します。

さて、こう毎日寒いと、お腹にがつんとくる、体をぽかぽか温かくしてくれる料理が欲しくなります。冬の代表的な料理と言えば、日本では何と言っても鍋ですが、フランスにはポトフ、ラクレット(チーズを鉄板で溶かして、じゃがいもやソーセージにかけて食べる家庭料理(などのあったか料理があります。そして、もう一つ忘れてはならないのが、秋から冬にかけてしか登場しないジビエ料理(Le Gibier)。

ジビエとは「狩猟で得られる野生、半野生の鳥や獣」のこと。狩猟は一年中認められているわけではなく、解禁期間は、年によって、また地方によって異なりますが、だいたい9月中旬から2月後半までとなっていて、厳しい規制が課せられています。猟場は、南西地方、ロワール地方、ブルゴーニュ地方などフランス各地に広がっています。

フランス語で「シャス」(Chasse)という狩猟は中世期、ルネサンス時代から王侯貴族の間で愛されてきたレジャーです。どれほど愛されていたかというと、例えば国王フランソワ1世は、狩猟を楽しむという目的のためだけに、あのレオナルド・ダ・ヴィンチが設計に参加したと言われるロワール地方最大の華麗な城、シャンボール城を造らせたそうです。

国王は年に7週間ほどの狩りの時期しか、この別荘に滞在しなかったと言われています。何とも贅沢ですね。また、あの有名なヴェルサイユ宮殿も、もともとは王家の狩猟の館があった場所に、太陽王ルイ14世が建てさせた城。あの広大な庭(森)で、犬を引き連れて狩りを楽しんでいたのでしょう。当時、王侯貴族がどのようにジビエを食していたかというと、今のフランスからは想像できないほど野蛮だったそう。ナイフはありましたが、フォークを使う習慣がまだ定着しておらず(フォークはイタリアのカトリーヌ・ド・メディシスが持ってきたという話は有名ですね)、宮廷でも肉などは手づかみで食べていました。テーブルマナーが洗練されてきたのはルイ14世の時代から。でも当の本人はフォークは使っていなかったようです。
 

ビストロ『JADIS』で食べたジビエ料理。これは友人がオーダーした小鹿のフィレ肉、赤キャベツソース。味見させてもらいましたが、驚くほど柔らかくて美味しかった。
同じく、ビストロ『JADIS』で、私がオーダーした「やまうずらと内臓のファルシ」。付け合わせのパスタがメインのような、斬新なプレゼンテーション。パスタのソースには肉の旨味がたっぷり。うずらは身がしまっていて、内臓のファルシは濃厚で、赤ワインに良く合いました。
ビストロ『JADIS』で取った前菜「フォアグラのポワレ」。寒い冬は濃厚なフォアグラも美味です。
大好きな真鴨のソテー。
ジビエには、例えば、ルシヨン地方の濃厚な赤ワインを合わせても良いでしょう。

ここで、現代のフランスでジビエを楽しみたい方へのフランス語ワンポイントレッスンを。
レストランのメニューに現れる代表的なジビエを和訳付きでご紹介します。

ジビエ・ア・ポワル(Gibier à poil):猟獣
 *サングリエ(Sanglier):猪 
 *シュヴルイユ(Chevreuil) :小鹿
 *ビッシュ(Biche) : 雌鹿
 *リエーヴル(Lièvre):野兎

ジビエ・ア・プリュム(Gibier à plume):猟鳥
 *コルヴェール(Colvert) :真鴨(赤身)
 *フザン(Faisan):雉(白身でくせがある)
 *パロンブ(Palombe)またはピジョン・ラミエ(Pigeon Ramier):森鳩
 *ぺルドロー(Perdreau)またはぺルドリ(Perdrix):山うずら類
 *グルーズ(Grouse):赤雷鳥

 
このなかで、私がお薦めするのは、パロンブ(森鳩)。「えっ、ハト?」と思われるかもしれません。外見は町でよく見るあのハトさんにちょっと似てはいますが、その身は赤くて、癖がなくてとても柔らかい。このパロンブは特に南西地方(ボルドー地方の南)で有名なジビエで、猟銃ではなく網を使って狩るという伝統的な手法を用いています。ジビエには濃厚な血のソースや、内臓のファルスなどが添えられるので、ワインはやっぱり、フルボディの赤が合います。

最後に、パリで美味しいジビエ料理を出すビストロを紹介します。電話で予約する際には、「ジビエありますか?」とまずは聞いてみてください。

 

ジャディス(JADIS)
208 rue de la croix nivert 75015 Paris TEL: 01 45 57 73 20

『ジャディス(JADIS)』は、私の家から5分ほどのところにある最近話題のビストロ。(場所として15区のちょっとへんぴな所にあります。)日本でも雑誌で何回か紹介されています。魚料理も評判。

シェ・ラミ・ジャン(CHEZ L’AMI JEAN)
27, rue malar 75007 Paris TEL: 01 47 05 86 89

 
ラ・レガラード(LA REGALADE)
49, Avenue Jean Moulin 75014 Paris TEL: 01 45 45 68 58