from パリ(たなか) – pré 1 - エッフェル塔のふもと、『ケ・ブランリー』美術館へ。

(2009.04.07)

昨年の秋に、およそ17年振りにパリを訪れた。以前は観光旅行だったが、昨年は仕事での訪問。私は旅行となればガイドブックを詳細に調べて、時間の許す限りあちこち見て回る性格だが、仕事での訪問となると時間の制約もあってもう一つ気合が入らない。とは言え久しぶりのパリだし、仕事もひとまず片付いた休日に、最近出来た『ケ・ブランリー・ミュージアム』へ行ってみることにした。

中庭はアフリカと中米とアジアの草原をイメージした造園。左が美術館の裏側にあたる。正面から見ると、どことなく奈良の正倉院を彷彿とさせる。まあ、海外渡来の宝物を長期保管する倉、ということでは同じか

最寄りの地下鉄アルマ・マルソーから地上に出ると、セーヌの向こうに聳えるエッフェル塔が目に飛び込む。目指す『ケ・ブランリー』はエッフェル塔の並びにあるのを地図で確認していた。セーヌを渡りながらエッフェルから目が離せず、ついふらふらとタワーの方へ足が向かう。この磁石のような吸引力は何だろう。

ドゥビー橋を渡って対岸へ。エッフェルも富士も、どこから見ても二等辺三角形というのがランドマークとしての重要な条件だ。富嶽百景のような、エッフェル百景とかあれば見たいものだ。セーヌに映る逆さエッフェルなんていいかも

エッフェル塔って、なんか富士山に似ていると思った。平地に屹立している姿が独立峰の富士のイメージと重なるのかな。パリではエッフェル塔が見えるアパートは家賃が高いという記事を雑誌で読んだことがあるが、さしずめ横浜あたりのマンションで富士山が見える部屋は人気が高いのと同じことかも。

連休だったせいか、TDL並みにお登りさんで長蛇の列。ケーブルカーだけでなく、徒歩でも五合目あたりまで登山?できるらしい。見上げるだけでも私は満足できるが、一度は登ってみたい

寄り道しながら到着した『ケ・ブランリー』は、美術館というより博物館だ。私が訪れた08年10月には特別展として、柳宗理と民芸の心展が開催中だった。駒場の民芸館でよく見た李朝の白磁や絵唐津、漆器、柳デザインのバタフライ・スツールなどの作品とパリで再会するとは意外であった。日本好みのフランス人とはいえ「Mingei」がどれほど理解できたのかちょっと気になる。しかし今の日本人が民芸にどれほど興味を持っているか、たいして差はないか。ユニバーサルな視点から「Mingei」を再認識することが大事なのかも。

『ケ・ブランリー』のオフィス?部分は、まるで天空の城ラピュタというか、箱根の湿生花園を縦にした状態。歩道にはじんわり水溜りが。冬には霜柱が立ったり氷が張ったりするんだろうな。春にはミズバショウの花も咲いたり。しかし、ここまでやるか?

常設の展示は、アフリカや中南米で祭事などに使うオブジェの膨大なコレクション。薄暗い館内のドラマチックな展示方法はサービス精神に溢れ、テーマパークだと思って訪れるとすごく楽しめる。それにしても見本市のような圧倒的なコレクションの大群に、博覧強記的なエネルギーを感じた。そういえばエッフェル塔も1世紀前のパリ万博の目玉だったか。

ミュージアムの周りは透明な強化ガラス?の高い塀で囲われ、ポスターの向こうには原っぱが見える。中から見たら、荒地ではなくススキが茂るエスニックな庭だった。この手抜き加減の微妙な按配が、なんだかフランス風で好感を持った

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