土屋孝元のお洒落奇譚。日本は出汁の国?

(2011.01.12)

年始という事もあり、出汁について考えたいと思います。
鰹節、昆布、いりこ(煮干)、アゴ(飛魚)、鯛の頭、鰤のアラ、干し椎茸、
干し海老、鶏ガラ、干し貝柱、オックステイル、豚骨……。
まだまだあると思うのですが、ざっと頭に浮かぶのはこのくらいでしょうか。

これは、ラーメンのスープの具材に近いモノではないですか。
最近の流行りは 魚介系、動物系のダブルスープとか、野菜の出汁も必要ですね。
玉葱、人参、セロリ、ネギ、ニンニク、ショウガ、みんな良い出汁が出ます。

蕎麦での返しにあたる、醤油ダレも必要です。
醤油も溜まり醤油、しょっつる、出汁醤油、白醤油、
関東風の濃口醤油、関西風の薄口醤油といろいろとありますね。

©Takayoshi Tsuchiya

ラーメン文化は日本独特のもので、世界に誇れるものではないでしょうか。
これだけの食文化のある国は、世界中見ても あまりないのではと思います。
世界で一番ミシュランの星の多い国、それだけはでなく、
各地方それぞれにより醤油や味噌や出汁が違う文化、
一番わかりやすい例がお雑煮です。

関東風(江戸風)は鰹出汁に醤油のすまし汁風、
で、それに焼いた角餅を入れますね、
わが家では鳥肉も加えます。
関西、京都では白味噌仕立て丸餅を焼かないで入れます。

この関東風と関西風の境になるのが、
岐阜の関ヶ原あたりと言われています。
この雑煮でもユニークなのは、徳島の丸餅に小豆餡を入れて
焼かずに白味噌仕立の雑煮ですね、
新潟では鰤を入れる所もあるようです。
東北地方では生イクラを入れたりします。

九州では丸餅を焼いて入れる所もありますね。
この様に雑煮一つでも、地方によりそれぞれ違いが明確にあり、
日本の食文化、出汁文化は優れています。

お雑煮に次いでおせちです。ここで我が家で作る、と言うか自分で作る、
フライパン(北京鍋があればそれで)一つでも出来る簡単な煮物のレシピを。
鳥胸肉ともも肉、ごぼう、人参、レンコン、竹の子、干し椎茸、コンニャク、
人数に合わせ材料も適量に、ごぼうとコンニャクは多いほうが良いですね。

ゴボウ(皮付きゴボウは良い味になります)はよく洗い皮ごと乱切りに、
レンコンは一度湯通しする、
このときにお酢を少量入れるとより白くなります。
竹の子は水煮で大丈夫です、ざっと湯通しをしたほうがよいでしょうね。
コンニャクは手でちぎります(こうする事で断面を多くして味が浸み込むようになります)
その後、湯通ししておきます。
干し椎茸は水で戻しておく、
1日以上はおいて置いたほうが良いでしょうか。

©Takayoshi Tsuchiya

人参も皮をむいて乱切りに、まず、フライパンを熱くしてから、
オリーブオイル(エキストラバージンオイルでなくともかまいません)を入れ、
鳥肉、ゴボウを炒めます。

この鳥肉とごぼうは相性が良く、良い感じで旨味が増します。
ある程度火を入れてから、次に硬い具材(竹の子、人参、)を入れ炒めます。
ここで出汁(昆布は利尻のものを水から入れて、お湯が湧いたら
厚削りの鰹節を入れすぐに濾し出しを取ります。一番だしですね)
を入れて煮込み始めます。干し椎茸、コンニャクも入れます。

次に酒をお好みで入れます。多く入れると具材が柔らかく仕上がります。
味醂も加えます。
砂糖(甜菜糖があればそれが良いでしょう)を具材の量に合わせてお好みで入れ、
醤油(溜まり醤油、薄口醤油)を入れます。
最後に仕上げに干し椎茸の戻し汁を入れます。

あとは、好みで味付けを調整していただけば、良いと思います。
煮込む時間は30分ぐらいでしょうか。
飾りに塩茹でしたさやえんどうを飾り出来上がりです。

干し椎茸の戻し汁は、出汁に加えて何にでも使えて重宝します。
使う量は少なめに、香りが強いので、好き嫌いがあるでしょうから。
里芋煮なども出汁と干し椎茸の戻し汁で美味しくなりますね。
椎茸煮については、今はなき歌舞伎座前、
木挽町『辨松(べんまつ)』の弁当の味が好きなので、少し甘めに仕上げます。
歌舞伎見物に出かける時には、いつも、『辨松』の弁当を買ってから出かけました。
泉鏡花の『天守物語』や『海獣別荘』、面白かったなあ。

話を戻し、先ほどの煮物は溜まり醤油は少なめに、隠し味という感じで、
全体の仕上りの色を綺麗に仕上げるには、
薄口醤油で仕上げたほうが良いですね。