from 鳥取 – 22 - 優しい里の日南トマト。

(2009.07.07)
とれたてのトマト
日南町の風景
ハウスの風景
加工品いろいろ

「おはようございます」と、鳥取県のトマトを紹介するためには、農業体験をしてからと、半ば強引に農家にお邪魔しました。場所は鳥取県日野郡日南町神(かみ)福(ふく)地区。午前7時過ぎ、気温18度。それでも前日の雨の影響でしょう、少し蒸した感じがします。「まずは上がんない。」と、農家のお父さんお母さんに家の中に案内され、一息。完熟トマトを頬張ります。

日南町は、鳥取県の南西部に位置し、島根県、広島県、岡山県に隣接する山あいの里です。面積は340平方キロメートル、標高280~600メートルの中に、集落と農地が点在しています。人口は約6,000人。アメダスデーターですと夏の平均気温は23度と、比較的冷涼な気候ですが、冬は1~2メートルの積雪があり、最低気温が氷点下15度になることもあります。

日南トマトの特徴は、果肉が厚いこと、固過ぎず柔らか過ぎず絶妙な食感です。しかも、ゼリー状の部分が流れにくいので、箸で持っても、実が崩れることなく、スイスイと口の中に入ってきます。

一般的なトマトの糖度は4~6度ですが、6度と高めの糖度です。一口、頬張るとこの甘味が先に広がり、後味には爽やかな酸味が口いっぱいに広がります。日南トマトの主な出荷先は大阪と岡山ですが、食べて下さっているお客様の評価が高いのもうなずけます。

町内でトマト栽培が盛んになったのは、昭和50年代後半から。標高400~600メートルの日南町の気候を生かしての特産品づくりを目指したのがきっかけです。平成に入った頃に最盛期を迎え、「一日の売り上げが100万円を越えた農家があった」とか、「トマトで御殿が建った」と噂が立ったほどの賑わいでした。今でこそ栽培面積も減りましたが、依然、鳥取県のトマト出荷額の大部分を占めています。

今回取材したのは6月の下旬で、本格的な出荷には、まだ1カ月近く早い時期でしたが、早出し用のハウスには、下段からトマトが大きくなり、赤くなっていました。

もぎ取りは、力任せに引きちぎると、茎を痛めるので、私は慎重にハサミで摘みましたが、「幼稚園児でも出来るから、ハサミでなくてもええけ」と、お父さんに笑われました。その横で、お母さんが、「元気が無いけ、液肥をあげよう。」と優しく、トマトに話しかけられていました。

このご夫婦、本当に優しい方です。自宅の玄関先にある木製ポストに野鳥が巣を作っても、そのまま親鳥に譲り、ヒナが生まれてくるのを一緒に見守っておられます。

帰る時、「農家は安気(あんき)だけぇ。」と笑顔で言われました。それは、作業途中で私が「トマト農家を辞めようと思ったことは無いですか?」と、大変失礼な質問をしたのですが、その答えのようでした。「自分が自分が」と利益追求だけの考えでは、こういう答えは頂けなかったでしょう。
 
別の日に、同じ町内の河上(かわかみ)地区の農家さんを訪ねました。真夏を思わせる日差しの中、日焼けした笑顔で出迎えてくださいました。優しい人柄がにじみ出る人でしたが、「儲けるためだけじゃない。トマトが好きだから、作っているんです。」「毎朝5時からハウスに入っている。小さく青い実が、だんだん、大きく赤くなってくるのが楽しみ。毎日見ていると子供のように思えてくる。」「今年も、米子か岡山のスーパーに行って、おいしいトマトをPRしたい。」と熱く語られました。

毎年7月下旬から10月上旬までは、農家が集まった加工グループが、町内の農産物加工場を使って、ジュースやケチャップ作りが始まります。トマトの水洗いから、ミキサーがけ、ビン詰め、ラベル貼り、と全ての工程が手作業です。作業をするのは50~60代の女性が中心です。

冷涼な地域でも真夏に、コンロとスチームの熱気の中で、一抱えもある大鍋にトマトを入れての作業は格闘で、「ジュース作りは本当に体力を消耗します。キャップは手で締めてから煮沸消毒して密閉させるけど、最近は指が曲がったままの人も居る。なんせ、一日300本も作るからね」とは、ある女性の談。

ジュースは、そのまま飲んで、日頃の野菜不足解消には、お勧めの逸品です。ケチャップ一瓶には、大きなトマトなら3個分が煮詰めて入っています。オムライスや卵焼きとかにかけるのが一般的ですが、私がお気に入りなのは、「ケチャップピラフ」です。米一合につき、大さじ一杯程度のケッチャプを混ぜて、普通に炊飯します。トウモロコシを入れたら、色合いも良く、甘味が増して、子供にはウケます。

あっ!ピラフに使うのは、美味しい日野郡産米です。日野郡産米の紹介は、また、新米の季節に!