from 北海道(道北)秋味 サケの定置網漁業は
北海道の秋の風物詩。

(2012.10.19)

故郷の川を目指して帰ってきたサケが、沿岸の波間で踊る

秋の味覚、サケ。
北海道で行われるサケの定置網漁業は、秋の風物詩だ。
留萌管内の沿岸域では、苫前町を除く7市町村で、
定置網19ケ統(網)が9月から11月まで操業を許可されている。
今年も、秋サケ漁の季節がやってきた。

サケの命をいただく

遡上のため、沿岸にやってくるサケは主にシロザケである。産卵間近のため、身に脂が少ないが、その卵(筋子)はイクラの原料として需要が高い。別名は秋味(アキアジ)とも言う。産卵期以外の季節外れのものをトキシラズ、本州の川に戻るサケが回遊中に北海道で漁獲されたものをメジカといい、ともに脂のりが良いとされる。

海水から真水域へと進むサケを沿岸で獲るのが定置網漁法だ。船には6、7人が乗り込む。網を起こしサケを船へと引き寄せ、1カ所に集めて巨大なタモ網で何度もすくい揚げては船倉へ貯める。この作業を海中に仕掛けた2箇所の定置網(沖網と陸網)で繰り返す。

港に戻ると素早く出荷作業を行う。港に設置した選別台にサケを降ろし、オス、メスの区別、魚体の大きさを見極め、瞬時に選別する。銀や銀白色の魚体の中に、黒や黄色、ピンク色が縞状に浮き上がり婚姻色となったブナと呼ばれるサケが混ざっている。厳しい遡上に耐えられるよう、皮も固くなっている。

サケは捨てるところがなく、その身はもちろんのこと、頭部の軟骨(氷頭)をなますや漬物に、中骨を昆布巻の具材に、卵を筋子やイクラにと加工して伝統的に食べられてきた。内蔵や皮・ヒレさえも全て食してきた日本人の知恵は今も受け継がれている。

定置網漁にかかったサケを船に引き寄せる
定置網漁にかかったサケを船に引き寄せる
早朝、港での水揚げ光景
早朝、港での水揚げ光景


留萌管内最北部の天塩町。

漁師の菅井好文さんが営む豊慶漁業部では、8月から11月まで地方から乗組員を雇い漁を行っている。菅井さんは乗組員らを「若い人、若い者」と呼び、彼らは菅井さんを「親父」と呼び合う。漁師の間では、昔からどんなに年齢が高くとも、親方の下で漁を手伝う漁夫を「若い人、若い者」と呼ぶ風習がある。これは、かつて隆盛を極めたニシン漁時代のなごりでもある。

漁の期間中は寝食を共にする番屋の居室に、経年の漁獲高の記録が壁面に張り出され、日々の水揚げを今も記録し続けている。この記録を眺めながら、酒を酌み交わし、同じ釜の飯を食う。それは、危険を伴う、海上での作業を『あうんの呼吸』で行う秘訣でもある。

天塩の魚介類を美味しく食べてもらうための活動も行う菅井さんは、食育授業やイベントでの料理講師を引き受けている。

イクラの作り方やサケを余すことなく使う調理法を伝統することで、サケの命を全うさせ、昔ながらの味を伝えられると考えている。

天塩漁港の漁師、菅井さん
左・天塩漁港の漁師、菅井さん
右・船倉から港に水揚げされるサケ、タモと呼ばれる網ですくいあげる

左・留萌市礼受漁港の漁師、祐川さん
右・サケをオスとメスに選別する祐川さん


サケを待つ

早朝午前5時、留萌市礼受漁港から第十二祐盛丸は、定置網を設置した沖合へ向けて出港する。

漁を終えて港に戻るまで、およそ2時間あまりの漁。「今年は水温が高く、なかなかサケが岸に寄らずに沖に留まり、定置に入らない」と話すのは、漁師三代目の祐川博樹さん。家族や地元の漁師らとともにサケを獲っている。

サケ漁に最適の水温は18度前後と言われるが、船の水温計は23度を指している(9月下旬の水温)。北海道にしては記録的な盆明けの残暑は、始まったばかりの秋サケ漁にも影響を及ぼしているらしい。

漁業関係者らが資源保護や安定的な漁獲維持のため、春先に稚魚を放流し、その際、海中飼育を行うなどサケの回帰率の向上に心血を注いでいるが、今年のような異常気象には、さすがに抗えない。

「普段の食卓にサケを使った料理が並ぶこと。気軽に食べてもらえるのが望み」漁の不振によるサケやイクラの価格高騰は、漁師の本意ではないとも語る祐川さん。川の記憶や水の匂いを探しながら命がけで戻ってくるサケを、今日も北の漁師たちは、それぞれの想いで待っている。

早朝、出漁前の礼受漁港
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