from 北海道(道央) – 49 -  上砂川産椎茸フルコースと
道産ワインのマリアージュ。

(2011.04.22)

「上砂川町」をご存知でしょうか?

空知(そらち)地方は、長野県のように南北に長いエリアであることから、北・中・南空知と3つのエリアに分かれて紹介されることが多いのですが、中空知にある上砂川(かみすながわ)町。

1887(明治20)年に上砂川炭田が発見されたことから、その後炭鉱の町として繁栄しました。1952(昭和27)年には過去最大32,103人の人口を記録しましたが、その後の石炭・石油・水力・原子力へと国のエネルギー政策の転換に伴い、全国規模での炭鉱の閉山は上砂川町をも例外とすることなく、現在はピーク時の約1割、3,949人(2010年末)という街になっています。
 
炭鉱閉山後、旧三井砂川中央竪坑道を利用した「地下無重力実験センター」が生まれ、我が国の宇宙開発に一定の役割を果たしましたが、現在はその施設跡が残されるだけであり、上砂川がかつての「炭鉱」の街であったことの記憶を留めています。

「上砂川岳温泉パンケの湯」は、旧坑道から湧き出る坑内水を利用しており、効能について道内外の温泉ファンを魅了しています。
 
また、地域資源を生かした「健康増進」に対する取組みも盛んで、年2回(5月、10月)開催される「『健康の里』ワンデーウォーク」やマウンテン・バイク(MTB)の「4時間耐久レース」の全道大会も上砂川町で開催されるなど、旧産炭地は元気に頑張っているのです。

椎茸の町、上砂川。

さて、今現在、上砂川町の特産物と言えば「椎茸」なのです。

椎茸の生産量を見ると、意外と思うでしょうが北海道は徳島県に次いで全国第2位、北海道内では上砂川町(年間830t)は白老町に次いで第2位(平成21年北海道調べ)。
 
上砂川町では現在椎茸生産者は4戸で、すべて「菌床栽培」。肉厚のどんこ型で、軸の部分も柔らかく食べることができ、香りもよく高たんぱく。うまみ成分がたっぷり含まれているのが特徴。

また椎茸は、高血圧、動脈硬化、高コレステロール症などの生活習慣病予防効果が明らかとなっている「エリタデニン」を多く含有していることから、最近ではサプリメントの原料としても注目を集めています。
 
日本からの椎茸輸出先は、香港が約7割、アメリカ、シンガポールなど、中華料理の素材として中国からの移住者の多い国がその上位を占めています。農林水産省の資料によると、世界一のワイン消費国であるフランスでも、「生椎茸」がソテーで、あるいはスライスして肉や魚の添え物として利用されているそうで、上砂川産椎茸が外国で消費される日も、近いのかも知れません。

外食産業の街として注目を集める滝川市で、
上砂川産椎茸フルコースをいただく。

「どうにかして、上砂川産椎茸の知名度を上げたい」という思いを受け、同じ中空知で、「北海道ワインツーリズム」を通じて外食産業の街として注目を集める滝川市にあるフレンチのお店にお願いして、上砂川産椎茸を使ったフルコースを創ってもらえないだろうか。
 
そう考えていたところ、『プティラパン』の老田弘基(おいた・ひろき)オーナーシェフが「難しそうですが、折角地元でもある中空知の産品を使った素材を活かすため、チャレンジしてみましょう」ということで快諾。
 
道産ワインとのマリアージュも考えられないだろうかと考えていたところ、「北海道ワインツーリズム」推進協議会サポーターでもある池田卓矢(いけだ・たくや)ソムリエも、この企画に賛同くださり、料理とワインのプロが試行錯誤を重ね、滝川市の「プティラパン」にて「上砂川産椎茸と道産ワインのマリアージュの会」を開催することに。希望者が殺到し、会を3回に分けて開催することになるほど盛況のうちに終了しました。

空知(そらち)の豊富な食材やワインの魅力を堪能する。

私が参加した第1回は、参加者が18人で新聞の取材も入りました。地元の方に加えて、札幌や岩見沢などからJRを利用して滝川まで足を運ばれた方も多く、事前PRは積極的に行わなかったにも関わらず、口コミでこれほどのメンバーが集まったことに多少の驚き。
 
使った椎茸の量は約3kg。老田シェフは仕込みで寝る暇もなく準備に当たったとお聞きしました。 

料理の一つに「椎茸・大豆・米のサラダ」がありましたが、南空知である岩見沢産米「大地の星」と大粒大豆「ツルムスメ」を使用。「大地の星」は粒が大きく、煮込んでも粒形が崩れず粘性が少ない特徴を有し、「ツルムスメ」は甘みが多く、空知地方の食材の豊富さに、ある種感動さえ覚えました。
 
ワインは、岩見沢市の「宝水(ほうすい)RICCA“雪の系譜”ケルナー2009」、浦臼(うらうす)町の「鶴沼(つるぬま)バッカス2008」、三笠市の「山崎ワイナリー シャルドネ 樽発酵2007」、上川地方・富良野市の「ふらのワイン 羆(ひぐま)の晩酌 2008」が池田ソムリエによって料理に合わせてチョイス。
 
結果として、椎茸そのものの美味しさを実感し、地元の食材にこだわり料理のバリエーションを生み出す「創造力」、北海道内のワイナリーによって作られたワインの質の向上を再認識できました。

現在、滝川市のレストランシェフたちは、「広い意味で地元である上砂川産椎茸を料理に使い、知名度を高めることに寄与したい」と、地域間連携の体現に向け知恵を絞り始めたと聞いております。

皆さんも機会があれば、北海道・上砂川産椎茸を、様々なレシピで試してみてはいかがでしょうか。