from 北海道(道央) – 5 - 滝川で「羊」料理を召し上がれ!!

(2009.08.27)

「売り」が豊富過ぎる街、滝川。

北海道で最も長い川である「石狩川」。北海道の開拓の歴史は、この石狩川を治めることから始まったといっても過言ではないでしょう。

その石狩川を上流から下流へと北から順に、旭川、深川、滝川、砂川といった地名が並んでいますが、北海道に住む人にとってみても、それぞれの街がどのような位置にあるのかを、明確に説明できる人は少ないはずです。

滝川市は、感覚的には札幌市と旭川市とのほぼ中間に位置し、南北に細長い空知(そらち)地方の中間にも位置し、石狩川と空知川とが合流する地点でもあるのです。

グライダー飛ぶ滝川の空

この滝川市には、東北以北最大規模のグライダーの発着施設が整い、広大な自然を体感できる丸加(まるか)高原があったり、タレ漬けジンギスカンで有名な『松尾ジンギスカン』本店があったり、恐竜(タキカワカイギュウ)の化石が展示されている博物館があったりと、色々と「売り」があり過ぎて「滝川と言えば○○だ!」と絞り込むのが難しいほど、実は「潜在的魅力」に溢れる街なのです。

滝川市

 

滝川と羊。

北海道と言えば「ジンギスカン」と、今でも本州では言われているのでしょうか?

今日では「生ラム肉」を食べることができるのが北海道では普通になりつつありますが、自分が子供の頃には「マトンのロール肉」をジンギスカン鍋で焼いた後にタレを漬けて食べるのが我が家では一般的で、「タレ漬けジンギスカン」が我が家に初めて登場したときには、「これは一体、何なのだ??」という信じられないほどのカルチャー・ショックを覚えたことを、未だに自分の脳裏に鮮烈な記憶として残っています。

恐らく、そのカルチャー・ショックをもたらしたのは『松尾ジンギスカン』さん発売の商品だったのではなかろうかと、おぼろげながらに記憶しています。

北海道におけるめん羊の飼育頭数は、1956(昭和31)年の267,820頭をピークに減少し、2007(平成19年)には若干増加傾向にあるものの7,534頭と、ピーク時から約97%も減少している状況にあります。

タキカワカイギュウなどが展示される博物館

松尾ジンギスカンさんはニュージーランドから質のよい羊を輸入しているそうですが、空知管内でもめん羊飼育は行われていて、19戸で638頭(2007統計)飼育されています(北海道農政部調べ)。その19戸のうちの一つの牧場が、丸加高原にある新山牧場さんです。

全くの余談ですが、滝川で羊と言えば、『神々の砂漠 風の白猿神』を書かれた小説家・滝川羊(たきかわ・ひつじ)さんを想像する方もいらっしゃるかも知れませんね。続編が気になります。
 
松尾ジンギスカン

小説家・滝川羊

 

「内モンゴル」で修行を積んだ凄腕シェフ!

さて、その「新山牧場さんで育てているめん羊を、丸ごと一頭料理として提供する凄腕シェフが滝川にいる」という噂を聞いたのは、自分が東京で働いていた3年以上も前のことでした。 

ラム肉のカルパッチョに添えて、河内オーナー自家菜園で収穫された野菜たちが一杯!!
ピッツァ・マルガリータは、小麦の食感を楽しめるという最高の贅沢。
昼食時の一番人気「アマトリチャーナのタリアッテッレ」
「熱いうちに、是非ゼラチンのところを食べてみてください」と言われて「羊のアキレス腱」をいただいてみた。とろけるゼラチン。これぞ、内モンゴル地方でしか技を磨けないという料理だったのだ。

スイス、イタリアでの料理修行の合間、内モンゴルで羊料理を極めるための修行を重ねてきた河内忠一(かわうち・ちゅういち)オーナーシェフが経営する『La Pecora(ラ・ペコラ)』=「一匹の羊」。

羊の乳で出来たチーズ「ペコリーノ・ロマーノ(Pecorino Romano)」は皆さんにも馴染みがあるでしょうが、《ペコラ》から出来たチーズが《ペコリーノ》なのです。

滝川の北東に位置する赤平市(あかびらし)のご出身で、お店で提供している野菜は基本的には自家菜園で調達しているとお聞きしていましたが、羊肉の料理だけが売りなわけではなかったのです。

また、江別市で生産手法が確立された小麦「ハルユタカ」。滝川市で生産している「ハルユタカ」を利用したピッツァ生地はもちろん、既に店一番の売りとなっている「アマトリチャーナのタリアッテッレ」もオーダーによっては「ハルユタカ」を使用したものが食べることができるとあって、「地産地消」の一つのスタイルを滝川で築かれたと言っても過言ではありません。

 

なんと! あの『ZAGAT』も注目!

河内オーナーシェフと、ZAGAT事業室長の高田さん

河内オーナーは、とてもフレンドリーな方なのです。

東京から北海道へと異動となり、密かに自分がお店にお邪魔した数年前のこと。いきなり「ワイン、白と赤、両方出してください」と言われて戸惑うホール担当の方。直ぐに自分のテーブルに飛んできて、「どのようなお客さまが来たのだろうか」と探りにやってきた姿は、今でも印象に残っています。

レストランのガイドブックとして世に名を馳せているのは『ミシュランガイド(Le Guide Michelin)』だけと、観光業に直接携わらない我々はそう思ってしまいます。しかし、観光に携わる商売、ホテルやフレンチ、有名イタリアンのお店=観光業に携わる方々の間では、『ザガット(Zagat Survey)』を知らないのは潜りではないかと日本国内で言われる中、今年、日本の地方版として始めて「長野版」を世に送り込み、長野県の観光客の伸びがその実績を示すが如く脚光を浴びた『ザガット長野版』。なんと、『ZAGAT』の担当者が、今年既に『ラ・ペコラ』さんに足を運ばれていたのです!

 
個人的意見としては、海外からのリピーターを多く招き入れたい北海道で、この『ZAGAT北海道版 英語バージョン』+レンタカーの「カーナビ(英語版)」を活用すれば、とてつもないビジネスチャンスになるのに、なぜそのようなチャンスを活かそうと考えたり、使ったりしないのか、信じられないくらい「もったいないな〜」という印象を持っています。

話は飛んでしまいましたが、滝川には『ラ・ペコラ』さんのほかにも沢山の美味しいイタリアンを提供するお店があるのです。機会あるごとに紹介させていただこうと思いますが、「売り」が豊富過ぎる街であったとしても、日本全国の皆さまを食事とワインとでおもてなしのできる地方都市は、(若干贔屓目ですが)滝川市が先頭を走っているのではないかと思わずにいられません。

「北海道ワインツーリズム」を楽しむために北海道に足を運ばれましたなら、是非とも滝川で「北海道の地方なりの外食産業の形」を楽しんでみてくださいませ!!

 
『ZAGAT長野版』