from ニューヨーク – 9 - インターン2.夢を育むオフィス。

(2010.04.01)

「from ニューヨーク5」の『カフェ・ジタン』で出会ったステファニーがくれた大きなチャンスとは、もうひとつのインターンです! 私のクレイジーなバックパックを見て話しかけてくれた彼女。NYに何をしに来たのかと聞かれたのでアパレル関係のインターンを探していると答えると、「知り合いでちょうどいい人がいるかも…」と呟いていました。とはいえカフェで会っただけの仲なので特に期待はせず、ともかく友達になれればと思ってメールをしてみました。NYでの日々は刻々と過ぎていきますが、いわゆる学生でも社会人でもないと友達を作るのもそう簡単じゃないなぁ、、、と感じていた頃でした。そして返事自体こないかもしれないと諦めかけたある日、「私に紹介しようと考えていた人から偶然連絡がきた」と紹介してもらったのがBeagle House N.Y. の創立者であり社長のYukikoさんです。2月にある展示会のために臨時インターンを募集しているとのことで時期もバッチリ。オフィスはブルックリンで私のアパートから徒歩20分。同じ日本人女性としてアラサーの心情に共感してくださったこともあり、面接したその場で採用してもらえました。

最初の仕事は展示会で使う棚のペンキ塗り。肉体労働は好きなのでウキウキしながらやっていると勢い余ってペンキをこぼすというハプニングを起こしつつも、想像していた色と違うかも~?!などとワイワイ言いながら、インターンの先輩ジョナサン(Jonathan ・19歳男子学生!)を含め3人チームでの仕事が始まりました。

展示会とはメーカーやブランドがバイヤー/小売業者向けに新商品サンプルをプレゼンする見本市で、その場で買い付け/商談も行われます。モノを売り買いするにはやはり実物を見ながら決めるのが一番。小売業界では最も重要なイベントの1つです。Beagle House N.Y.は日本の提携ブランドの在米エージェントとして主要展示会に出展しています。私がまず携わったのは京都の和雑貨「くろちく」 のギフト用品の展示会International Gift Fairへの出展です。パリに直営店を持つブランドですがアメリカでの展示会は今回が初めて。和柄の足袋・5本指ソックスやエコバックが今回の主力商品でした。アメリカの買い付けはビジネスライクで厳しく値切られたりするのかな~とドキドキしていましたが、実際は驚くほどリラックスしたムード。街でのショッピングと同じように「Hi, how are you doing?」と笑顔の挨拶から始まって、「これカワイイ!」とお気に入りの商品を見つけて盛り上がったり和気あいあい。出展する側も生真面目に営業するよりノリを大事にして押すべきところは強気で押す、でも客足が切れたら座って小腹を満たしたり隣近所の出展者と「儲かりまっか?」とおしゃべりするなどメリハリがあります。聞いたところによると、さらにくだけたLAの展示会では夕方疲れてくると床に座ったり寝転んだりする人も出てくるそう。野外フェスかよっ!と日本人としてはツッコミたくなりそうですが、そういった天真爛漫さというか飾らない気質がアメリカ人の愛すべきところでもあるな~と思います。

「くろちく」セールスの助っ人ジェシカ(Jessica・中央)とヴェス(Ves・右)。初めて扱うブランドでも即セールスポイントを掴んで、素材から使い方までこなれたトークを繰り広げていました。私はバイヤーが広げたサンプルを畳むなどサポートに回るだけで精一杯でした!
展示会の受付。出展者、バイヤーと区別された入場バッジを受け取ります。
会場はハドソン川ほとりにあるジャビッツ・コンベンションセンター。東京でいえば国際展示場のような建物です。

ギフトとなり得るものはリネンからニワトリの置物!まで何でも出展されています。

もうひとつ体験できたのが、ファッションウィークの後に始まるアメリカ最大級のファッション展示会Fashion Coterie。大御所から新進気鋭まで審査をパスした米国内外のブランドが1,200も出展し、世界中からバイヤーが集まります。日本からもIssey Miyakeや大手百貨店・セレクトショップのバイヤーが来ていました。ものすごい数のファッション関係者が集結しているのでギフトショーとはまた違った緊張感ある雰囲気。休憩する暇のない出展者のために無料で食事がサービスされるなど、よくオーガナイズされたイベントでした。私たちが出展したのは“WIZ”のスカーフ。今回はセールスの助っ人がいないし2回目だから少しは効率よく動くぞ~と意気込んだのですが、セールスはYukikoさん一人でバッチリ回されているのでした。スゴイ!

Corterieの会場も同じくジャビッツ・センター。
“WIZ”のスカーフ。2010春夏~秋冬までバイヤーの動向に合わせて幅広く展示。常連バイヤーも訪れました。
バイヤーがずらりと並んで商談中。
カタログ集めで荷物が膨れるバイヤーにバッグを配り、大きなブースでかなり目立っていたDesigual。大胆なグラフィックと独創的なデザインのスペインのカジュアルブランド。

これらの展示会でブランドサイドの一員として商品サンプルの準備から搬入搬出、ブースのセッティング、会期中のセールス、展示会後のフォローまで一気に現場に立ち合わせてもらえたのは、非常に大きな経験です。「品番は3度確認」「パッと見て商品全種が分かるディスプレイを」など、ひとつひとつの作業で学ばせてもらったことは数知れませんが、これらの経験を通じて胸に刻んだことはBeagle House N.Y. の社名の由来 に集約されています。

「スヌーピーは人間の言葉が話せないタダの犬ですが、作家、スポーツ選手、パイロットとしての様々な空想(妄想?)を広げています。スヌーピーの犬小屋は一見すると小さいけれど、実は地下にとても広い部屋があるのをご存知ですか?そこにはテレビや卓球台、書庫もあるのです。私も小さなオフィス・Beagle Houseで愉快な夢を抱いています。それは私の小さなオフィスから日本やアメリカに様々なファッションを届けることです!」。

この文章を履歴書送付前に読んで、ピンとくるものがありました。ちょうどクリスマスのホームパーティーで『ピーナッツ』のDVDを観た直後でもありました。実際に働いてYukikoさんの人柄や信念に触れて、まさにこの通りの会社だと思いました。そして、こうして今感じている初心がこれからも私のよりどころとなる気がしています。念願のNYに来たものの、私は英語も満足に話せないタダの日本人です。しかもすでに自己実現を果たして落ち着いている人も多いお年頃。夢や目標といっても基本はビジネス。世知辛いことも窮地に陥ることも続々とやってくるでしょう。でも希望を持ってやり続けることや仕事を愉しむ気持ちも大事。そうすればいつかスヌーピーのように、見知らぬ国で夢を共有してくれる人ができるかもしれません。な~んて大きく出ると、あとで恥かいちゃうかな。

ちなみにここでは「小さなオフィス」と書かれていますが、私のインターン初日にスタジオに空きが出て、つい先日広い部屋に引っ越しをしたのです! 夢がまた一歩、広がりました☆

Beagle House N.Y.のオフィスは元工場地帯のBushwickらしいスタジオにあります。
引っ越し中に新しいPCをセットアップ。何から何まで自分たちでできるのがスモールオフィスの醍醐味。
新しいオフィスでは独立したショールームが付きました!赤茶と白ツートンの壁が私たちのお気に入り。
Beagle Houseが扱うハットブランド「arth」はSOHOに直営店があります。ギフトショーを手伝ってくれたジェシカも働いていて、マネジャーのYujiさんも気さくで素敵なお店です♪ 75 W Houston St. NY