先日、親戚を迎えにとある駅へ行きました。着いてびっくり! 小さな駅らしき建物には美容院が…。えっ、駅? 店? 正解はどちらも。駅舎の有効利用と切符の販売などを委託しているそう。なるほど~、うまいこと考えたなと思っていると、ちょうど美容院から出てきたお客さんが、「かかしもみんさったか?」と。かかし? もう何がなんだかわからないので、直接鉄道会社に聞いてみました!
その不思議なものがあるのは“若桜鉄道株式会社”。昭和5年に開通した旧国鉄を引継ぎ、昭和62年から第三セクターとして運行しています。鳥取県東部の八頭町“郡家”駅から若桜町“若桜駅”までの19.2kmを8駅で結び、1日の乗車人員は平均で1,200名ほど。利用客の68%は通学生という小さな鉄道です。
「かかしは若桜鉄道の新しい魅力になればと、鳥取市内にお勤めの岡上さんの提案で始まりました。すべて手作りで、ほのぼのとしたキャラクターが人気になっています」とは専務取締役の原さん。「かかしもおすすめですが、実は昨年の7月駅舎など若桜鉄道が丸ごと国の登録有形文化財になりました。開業当時からの施設も多く、昭和初期の風情を楽しめますよ」との新情報も。どうやら「かかし」も「登録有形文化財」もほぼ沿線の各駅にあるようなので、早速「若桜鉄道・各駅停車の旅」に出かけました。
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若桜駅構内。地元の利用客に混じり、カメラ片手の鉄っちゃんの姿も多くありました。 |
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沿線・八頭町特産品の柿・ぶどう・りんごが描かれたかわいい車両、WT3001号。 |
旅のはじまりは「若桜(わかさ)駅」。ここの目玉はなんといってもSL! かつて実際に若桜線を走っていた蒸気機関車が展示されています。すごいのは、ただ置いてあるだけじゃなく、本当に動くこと。しかも特定の日には、体験運転や試乗もできます。私も以前見たことがあるのですが、大きな車輪がごろりと動き、蒸気のプシュ~という音が響き、ゆっくりと進むSLは想像以上にカッコイイ。鉄ちゃんや鉄子でなくても、かなり興奮するはずです。ほかにも、全国でも珍しい転車台や給水塔が当時の姿のまま残っているので、これも一見の価値あり。
次に降りたのは「丹比(たんぴ)駅」。ホームの上屋がレールで出来ているエコロジーな駅。白くペンキが塗られた曲線の柱なので、すぐわかります。ここのプラットホームも登録有形文化財です。
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特産品の柿を収穫する家族がテーマのかかし。表情もグーです。 |
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元事務室を改装した美容室。切符の委託販売所も兼ね、購入時は駅舎側の小窓からお願いする形。 |
お次は最初に私がびっくりした「安部(あべ)駅」。美容院が併設されているだけでなく、なんとここ、あの日本映画の代表ともいうべき「寅さん」シリーズに出てくる駅なんです。そしてやっぱり、いました「寅さん」かかし。プラットホームの待合所に地元のおばちゃんと仲良く座っています。かかしの上には「ヨッ! お姐さん!」なんて、寅さんのセリフも掲げてあってとっても楽しい雰囲気。ちなみに映画は第44作『寅次郎の告白』。映画のラスト近くで、寅さんが柴又へ公衆電話をかける場面や列車を待つ風景として登場しますよ。
最後は「隼駅」。構内に入ると、下のようになぜかバイクと一緒に撮った写真が掲示されています。よ~く見ると、バイクの名前が駅名と同じなのですね。スズキの輸出用バイク「ハヤブサ」を所有しているライダーが立ち寄り、かなりのブームになっているそう。今年は8月8日に「ハヤブサの日」と題したイベントを開催予定。汽車とバイクのコラボレーション、なかなかいい感じです。
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大型バイクなので、なかなかの迫力。近所の方によると『多いときには10台以上が集い、みんな楽しそうですよ。』とのこと。 |
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構内には掲示板のほか、訪問ノートがあり、情報交換ができます。 |
たった8駅の小さな鉄道だけど、地元や利用者の方のたくさんの愛情を感じる旅になりました。どの駅もゴミひとつなくきれいで、きれいなお花がたくさん植えられ、古い駅舎をとても大切にしているのがよくわかりました。のんびりゆったりの時間を過ごせるのはやはり鉄道ならでは。また、沿線にはたくさんの名所があり、見所もいっぱいです。この夏はぜひローカル感いっぱいの“若桜鉄道”の旅を楽しんでください。
文句なしの素敵な旅だったけど、最後に若桜鉄道さんにお願い。「駅弁作ってくださ~い!」。
若桜鉄道株式会社
Tel:0858-82-0919
http://www.infosakyu.ne.jp/~wakatetu/
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若桜駅構内では、オリジナルグッズを販売しています。乗車券綴りやストラップ、レールを使用した文鎮などが人気。詳しくはHPを見てね。 |