from 東北 – 12 - 郷土の味、山形、sasamaki、食文化

(2010.06.30)

山形県を代表する、郷土の味のひとつ、笹巻き。
旧暦6月4日の節句に、家内安泰と五穀豊穣を願って
作られたのが起源とされる、
この時期だけの隠れたふるさとの味だ。

この笹巻き、どんな食べ物かというと───
しっとりとした舌触り、モチモチとした触感。
ほんのりとした笹の香りを身にまとった、素朴な風味。
黒蜜をかけたり、しょうゆやクルミで
味つけしたりと食べ方も
地域によって色々あるようだが、
私はきな粉をまぶして食べるのが好きだ。
ほのかな甘みが口の中に広がり、
「もうひとつ!」がとまらなくなる。

さて、作り方はもち米を笹で巻いて煮るだけと、
いたってシンプルではあるが
大変な時間と手間がかかるので、笹巻きを作る家庭が年々減ってきているらしい。
「この地方だから」「この土地だから」の味がなくなるのは寂しいものだ。
悲しいことだが、家庭内のコンビニ化が進むとともに、祖母から母へ、母から娘へという親子の流れが薄れてきているも原因のひとつなのかもしれない。

しかし悲観的なことばかりではない。
実はこの笹巻きを後世に残そうと頑張っている人たちがいる。
地元のおばあちゃんが集まる、山形県・遊佐町笹巻き研究会がそれだ。
「頑張れ!おばあちゃん!」「頼むよ!おばあちゃん!」と応援したくなるところだが
ふるさとの味を10年後、20年後、さらにその先々に残すために
おばあちゃんに任せきりにするのではなく、我々の世代が率先して出来ることもあるはず。

「笹巻き?そういう食べ物も昔はあったね」とならないために。
この季節に、美味しい笹巻きがずっと食べられるために。
今、私たちがやるべきことを考える時に、さしかかっているのではないだろうか。