from 金沢(早川) – 5 - 工芸の街で、「瓔珞(ようらく)」に魅せられて。

(2009.09.08)

「瓔珞(ようらく)」と呼ばれる意匠に出会ったのは、
広坂通り『伊藤尚友堂』のウィンドウの小鉢だった。

小ぶりの九谷鉢。中心は染付風。白地に藍の模様。周りは朱で首飾りのような模様。
そのコントラストが目をひいた。
この古美術商のウィンドウは季節ごとに趣味良く飾られ、広坂通りを歩く度に、足を止めてしまう。

以前は品物ひとつ一つに値札が付いていなくて、どの品も高価に見えた。
お店の中に入ってお値段をたずねる勇気もなく、「いいなぁ」と思うだけで通り過ぎたものだ。
しかし、この小鉢にはお値段が付いていた。私にも手に入るほど。
それ以来、このウィンドウを通る度「私のあの鉢は、まだあるかなぁ」とドキドキしながら覗き込む。
「あった、あった」。今もまだその鉢は私を待ち続けている。

瓔珞模様の九谷鉢1/伊藤尚友堂

同じ広坂通りにある漆器のお店能作を訪れたのは、東京の友人を案内するための予習のつもりだった。
ご主人の岡さんが美しい茶器を数点選び、丁寧に説明してくださるという幸運は時間を過ごした。

その時、漆黒の棗に、あの九谷鉢と同じ繊細な首飾りの模様をみつけた。
岡さんは「瓔珞をとてもうまく描いている若い作家さんの作品ですよ」と説明。
私が思わず、「伊藤尚友堂さんの九谷鉢に描かれていますね」と言うと、
岡さんはちゃんとご存じで「ああ、あの小鉢もいいですね」と。

漆器店『能作』。
瓔珞模様の棗(なつめ)/能作

早速、辞書をひも解くと、「インドの貴族男女が珠玉や貴金属に糸を通して作った装身具。
頭、首、胸にかける。また仏像などの装飾ともなった、『瓔珞(ようらく)』とも」とあった。

日本古来の意匠とその名称に興味を持ち始めた、2つの伝統工芸品との出会いだった。
棗はとても美しい品だが、私にはとても手が届かないお値段ということも知った。
どちらも金沢の作家の作品。匠の技が力強く心にせまってくる。
2009年6月、金沢はユネスコの「創造都市 工芸部門」に登録された。

 

伊藤尚友堂

~ 加賀工芸・古美術  伝統工芸 九谷焼 輪島塗 茶道具 抹茶碗 水指 花瓶 湯呑 茶杓 茶釜 掛け軸 屏風 ~
オリジナルの安価な器と新古茶道具のお店。明治・大正時代の食器は常時50余点展示している。九谷焼と古美術の幅広い品揃えは定評。美術館のような広く静かな空間で伝統の美をゆっくり堪能できる。
住所:石川県金沢市広坂1-1-52
営業時間:9:00~18:00
休日:水曜日
電話:076-231-6631

 

能作 漆器店

~ 暮らしと漆器を心でつなぐ ~
安永9年(1780)加賀の国、武蔵ヶ辻に於いてうるし業を創業。以来200有余年、初代能登屋作太郎より7代に至るまで、漆、漆器の製造販売はもとより「漆文化」の広がりを目指し続けている。
住所:(本店)石川県金沢市広坂1-1-60
《店内》
1F:毎日の暮らしで気軽に使いたい漆器
2F:上質な暮らしを提案:輪島塗
3F:茶道具。加賀蒔絵
4F:甘味処《漆の実》
営業時間:10:00~19:00
休日:毎週水曜日(8月は無休)
電話:076-263-8121