from パリ(たなか) – 6 - バスティーユから続く空中の散歩道。

(2009.06.08)

パリ11区に部屋探しに行った帰り、バスティーユを起点とする旧高架橋の跡地を散歩した。バスティーユ駅は路線が地下鉄道になった69年に廃止されたそうだが、美しいアーチの高架橋は保存され、空中の緑道として蘇ったそうだ。ドメニル大通りの広い歩道に沿って一直線に延びる。ローズ色の美しいレンガは繊細で、石のアーチの力強さとうまく調和している。なんといっても、その高さが圧倒的。レンガを積んだ職人達の、淡々とした努力の積み重ねに感動を覚える。

高架橋はオペラ・バスティーユからセーヌに沿ってヴァンセンヌの森へと延びる。大胆で且つ繊細なアーチだ。パリ郊外には石造りの水道橋なども残っていて、アーチ造りはさすがだなあと思う。ここは12区。

アーチの下の空間は、工芸職人のアトリエとして提供されている。ガード下といった暗いイメージは全くなく、高い天井を生かしてモダンな家具の展示をしたり、パリの古い大きな地図を揃えたり、画廊があったりと、歩道を歩きながら中を覗くだけでも、ウィンドウショッピングみたいで楽しい。ずーっと行くと銀の食器を制作している工房もあるそうだが、交差点に来たので階段を上って、線路跡の緑道を散策することにした。

家具のアトリエ。全面ガラス張り。
写真の画廊。午後の早い時間は人出が少ない。パリは夜型の街、といっても5月なのに日没は9時半、暗くなるのは10時だ。

アーチの上は想像以上に高く感じられ、空も広く、街中とは思えない開放感がある。遊歩道の両側にはいろんな灌木や草花が複雑な構成で植えられていて、野山に来たような自然な感じ。緑道の植栽はパターン化するものだが、草花を見ながら歩いても飽きさせない演出が見事だ。世田谷区あたりの緑道もぜひ手本にしてもらいたいなあ。

視界の広さにおもわず深呼吸。道路を跨ぐ部分(鉄橋?)はウッドデッキ仕上げになっている。ピンクのアベリアが満開だ。ジョギングも気持ち良さそう。

パリの5月はリラやフジが終わって、これからはバラの季節だ。つるバラをトンネル仕立てにしたり、ラティスに這わせたり、低木のバラを植え込んだりと多彩だ。6月の晴れた朝の、バラの香りでむせ返りそうな情景を想像しながら贅沢な気分になってのんびり歩く。緑道が建物の中をトンネルのように突き抜けるあたりまで来て、階段を降り、下の歩道をリヨン駅へと向かった。

バラはフランス語でもrose。
この花は和名のハコネウツギに違いないが、ルージュの花がパリっぽい。よってパリウツギと命名しよう。
オールドローズ系の、開きそうで開かない重たげな莟。色っぽいなあ。