土屋孝元のお洒落奇譚。銀座界隈における喫茶事情について
独断で選びました。

(2012.07.14)

昔ながらの喫茶室のイメージのお店
探してみますと……。

男が一人、銀座でお茶を飲みながら本でも読もうかと思う時になかなか良い喫茶店、カフェがないのです。フリーWiFiを使いパソコンで一人で仕事する時とは、また、違い、質実剛健な昔ながらの喫茶室のイメージのお店、ありそうで無いですね。

シアトル系のカフェ『スターバックス コーヒー』や『タリーズコーヒー』では、勉強している大学生さん達も多く、落ち着いて、ともいかず、かと言って『ドトール』、『サンマルクカフェ』、『ルノワール』、では分煙がイマイチで何とも、『マクドナルド』でもなあ、と、ちょっと小洒落た昔ながらの喫茶店は……、と探すと、7丁目の『椿屋珈琲店』か、同じような名前ですが、旧町名で言うと木挽町(歌舞伎座横)の『茜屋珈琲店』、リヤドロ並び銀座『黒田陶苑』の隣りの『ル・カフェ・ドトール』の6丁目店(昔は『エクセシオールカフェ』だったと思うのですが、今は『ドトール』のラグジュアリータイプ『ル・カフェドトール』というようです)、一階の奥のスペースとか、ここは囲まれ感があり、長居しても落ち着けます。

夏になると名物のかき氷があるので少しばかり賑やかなみゆき通りの『松崎煎餅』の二階の喫茶、白玉抹茶あずきを頂きながら夏の午後、ゆっくりもたまには良いものです。

意外にも、いつでも空いていて、ゆっくりと打ち合わせ出来るのがあのアルマーニのビル『アルマーニ ギンザタワー』の『アルマーニ リストランテ』の11F バーラウンジで、ここの弱点は3Gの電波が入りにくい点ですかね。ほとんど待つこと無しに入れて客も少なく 込み入った打ち合わせにはとても重宝します。

ちょっと足を伸ばして築地
『塩瀬総本家』の2F『茶寮 しほせ』

築地の定食屋さん『魚竹』でお昼を食べたついでには『御菓子司築地ちとせ』の奥の喫茶スペースにも立ち寄っていました。ここは穴場で、この奥の喫茶にくるお客様は少なく時間を気にしないでくつろげ、僕は2時間ぐらいいたこともあったのですが、残念ながら昨年の秋で、喫茶スペースはクローズになってしまいました。お気に入りの黒糖饅頭もなくなってしまいました。

明石町界隈、この辺りまでも広い意味では銀座でしょうか、聖路加タワーの横にある『塩瀬総本家』の2F『茶寮 しほせ』もゆっくりできて落ち着きますが、銀座からはちょっと歩きますね……。お散歩するにはいい距離感ですが。

黒糖饅頭。『築地ちとせ』の大好きな黒糖饅頭、見た目は地味ですが奥深い味でした。

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築地市場道りの『うおがし銘茶』の築地新店の喫茶『茶の実倶楽部』も落ち着けます、こちらは2階、3階、と内装がガラリと変わり、2Fは純和風で白木のカウンターに聚楽壁、掛けてあるのは確か鈴木春信の浮世絵でした。かたや3階は漆喰壁にステンドグラス越しに入る光が美しい洋風の空間です。こちらの喫茶は日本茶専門店なので、煎茶か抹茶をお飲みください。「しゃん」がお勧めです。急須にお茶葉を入れて出してくれて、差し湯を頼むと3杯から5杯分は楽しめます。コーヒー、紅茶はありませんのであしからず。

こちらの魚河岸銘茶は銀座にも支店があり、屋上では抹茶がいただけます、が、最近は人気があり、まるで、大寄せのお茶会の様でお勧めはできかねます。

コーヒーにしろ、紅茶にしろ、抹茶なら尚のこと美味しくいただくには、それなりの準備がいるものです、美味しいと皆が思うものはなかなか本当に難しい。

築地『うおがし銘茶』本店にて開かれる茶遊会、初心者でも気軽に行けるお茶会です。
銀座『ギャラリー枝香庵』の薔薇のあるテラス
パリっぽいです。

ここからは喫茶ではないのですが、よく立ち寄らせていただくのは、銀座『ギャラリー枝香庵』の薔薇のあるテラスです、こちらでは何度か個展も開かせていただいた事もあり、気兼ねなく立ち寄れます。銀座界隈で屋上でお茶を飲める場所は少なくなり、一階のビルの入り口もわかりずらい所も気に入っています、大先輩のクリエーティブディレクターが僕の個展の時にいらして、一言、「パリっぽいね。」と言って写真を撮っていかれました。

こちらのギャラリーはエレベーターを降りてから階段を上がり、小スペースの展示室、また、数段上がりテラスのあるフロア、また、階段を登り屋根裏の展示スペースと複雑な作りで、この感じが大先輩の一言になったのかな?と。

茶の師匠、阿曽さんの『阿曽美術』(先ほどの『ギャラリー枝香庵』と同じビル)さんにお邪魔していただくお抹茶の一服が一番美味しいかなと僕は思います。

阿曽さんのところで、最近見かけた作品では、熊谷守一のウメバチ草と蟻の墨絵と軸装の李朝民画の円相に黒揚羽と百合の絵が素敵でした。

絵のつながりで、カフェや喫茶で気になるのは、掛けてある絵の事ですが、4丁目の『ル・カフェ・ドトール』にはカトランがあり、僕は好きな絵なので落ち着きます。

カトランは好きな作家です。リトグラフの色味、良いですね。4丁目の『ル・カフェ・ドトール』にあります。

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今でもあると思うのですが、築地『サン・マルコ』、ここは昔ながらの喫茶店ですが仏像が多くあり、まるで、博物館の展示スペースでお茶を飲んでいるような雰囲気でもあり、趣味の友達の家の居間の様でもあり、仏像もガンダーラ仏が多かった様な気がしましたが、今はどうなのでしょうか。

喫茶やカフェで落ち着けるというのは、好きな絵があるとか、空間が良いとか、座り心地の良い椅子があるとか、お店のスタッフの感じとか、もちろん、コーヒーや紅茶、お茶が美味しいのは当然でしょう、どこに優先順位をおくかですね。