from 山梨 – 6 - 甲斐から越後へ~マリンドリーム能生で香箱蟹を買って、上越で白バイ貝の握りを食べてきた。

(2009.12.11)

長年連れ添った車を買い替えることになりました。
去年辺りから大きな修理が増えて負担になってきたのが一番の理由なんですが、最近の車の高燃費にも背中を押された感じ。
来年の2月末が車検なのでそれまでに決めればいいやと思っていたのに、気付いたら契約して書類を揃えていて、納車日が決まっていました。
強引に決めさせられた感もなく、むしろ自ら積極的に予定を前倒しにして話を進めたとしか思えないこの状況を作り上げたディーラーの担当営業さんの「プロのお仕事」は、なかなか気持ちの良いものでした。

納車の前日、新車と入れ替えに下取りに出す車のタンクに2/3ほどのガソリンが残っていたので、この車にとっても昔馴染みである北陸自動車道と国道8号線を少しだけ走ってきました。
…この時期、日本海にも用がありますしね。

山梨県の中央自動車道「甲府昭和IC」から高速道路に入り、新潟県の北陸自動車道「能生IC」まで、片道256kmのドライブです。

本州の真ん中を縦断。長野県の走行距離が長いんです。

<中央自動車道>甲府昭和IC-双葉SA-双葉JCT-韮崎IC-須玉IC-長坂IC-八ヶ岳PA-小淵沢IC-諏訪南IC-中央道原PA-諏訪IC-諏訪湖SA-岡谷JCT
<長野自動車道>岡谷IC-みどり湖PA-塩尻IC-塩尻北IC-松本IC-梓川SA-豊科IC-筑北PA-麻績IC-姨捨SA-更埴IC-更埴JCT
<上信越自動車道>松代PA-長野IC-須坂長野東IC-小布施PA-信州中野IC-豊田飯山IC-黒姫野尻湖PA-信濃町IC-妙高高原IC-妙高SA-中郷IC-新井PA-上越高田IC-上越JCT
<北陸自動車道>名立谷浜IC-名立谷浜SA-能生IC

 
「山梨から海に行くなら、静岡の太平洋の方が近いのでは?」…その通り、距離的には太平洋に出るほうが断然近いのです。
でも、山梨から太平洋へ抜けるには高速道路がなく一般道を利用することになるため、それなりに時間がかかってしまうんですよねー。
(南アルプスの東側に、太平洋側と日本海側を結ぶ「中部横断自動車道」が通る予定で現在建設中なんですけども…全国的に多くの公共工事がストップしてしまい…先日、山梨県の横内正明知事が会長を務める全国高速道路建設協議会が陳情に行ったようですが…うーん、今後どうなる事やら)
加えて、以前石川県金沢市に住んでいたことで日本海への心理的距離が近くなっているのと、太平洋側の道路にはなんとなく「渋滞」のイメージがつきまとっているのとで、四季を問わず「海」と言えば自動的に「日本海」を選択することが多くなっています。

というわけで向かった先は、新潟県糸魚川市能生にある、道の駅「マリンドリーム能生」。
このあたりはベニズワイガニ漁が盛んな地域で、ここ「マリンドリーム能生」にはカニ直売所の並ぶ「かにや横丁」があるのです。
 

塩茹でベニズワイガニの直売所が並びます。
カニ以外にも、格安の海の幸が満載の道の駅。

「よし、ここはひとつ、ベニズワイガニを買って帰るか」と思いながらお店を眺めていると、立派なカニが並ぶ横に、脇役のような雰囲気で置かれているコウバコガニを発見!

「コウバコガニ」というのは、ズワイガニのメスのこと。
漢字で「香箱蟹」と書きますが、スーパーマーケットや市場では「香箱」「コウバコ」と表記されていることも多いです。
ちなみにこれは石川県での呼び名で、福井県ではオスがエチゼンガニ、メスがセイコガニと呼ばれています。
コウバコガニはオスに比べて身体が小さくて食べるところがあまりないのですが、少ない身は甘みがあってとっても美味。
そして、甘くて美味しい身もさることながら、コウバコガニの一番の魅力は甲羅の中にあるのです。
甲羅を外すと現れる、鮮やかなオレンジ色の内子(うちこ)です。
内子は目の裏側や隅の方にも詰まっているので、カニスプーンでしっかりとかき出します(目の部分は押すと外れるので、外してから取り出すと簡単です)。
隅々から集めた内子とカニ味噌を甲羅の中で和え、これまた隅々から丁寧に集めた甘い身をその上に乗せて、準備完了。
これをお箸の先で少しつまんでお酢につけて口に運び、「んー、美味しい!」「あー、幸せ」などとつぶやきつつ、日本酒と一緒にちびりちびりと頂きます。
 

甲羅を開けると、中には鮮やかな内子とカニ味噌がぎっしり。内子と味噌の周りにあるエラ(ふんどし)は食べられません。
カニをさばく作業も酒の肴のうち。はやる気持ちを抑え、内子と味噌と身を丁寧に取り出して、甲羅の上に盛り付けます。

金沢にいた頃は、カニと言えばこのコウバコガニ。
金沢港の魚市場「いきいき魚市」で生のコウバコガニを買って、自宅で塩茹で(海水より少し薄い、12~13%程度の塩分濃度)にして、石川の地酒を飲みながらちまちまとつつく夜は大抵雪が降ってたなあなんてことを懐かしく思い出しながら、コウバコガニの他に地元産の鯛と佐渡産の鰤を購入し、海沿いの国道8号線を上越市内へ向いました。
次の目的は「活白バイ貝」。

煮付けたバイ貝は良く見かけますが、お刺身やお寿司で食べることができるのは海の近くならでは。
この日は上越市内の回転寿司店で食べることにしました。
…海の近くは、回転寿司店のクォリティが高くて驚きますね。
話はそれますが、金沢に引っ越した当初、生粋の石川県民の友人から「金沢に来て、何が美味しかった?」と聞かれた時に「鯵。」と答えて絶句されたことがあります。
「コウバコガニ」とか「のど黒」とか「白海老」とか「甘海老」とか「鰤」とか、北陸ならではの美味しいものはいろいろあるけど、「回転寿司で食べる鯵が新鮮で美味しい」という事が、当時の私にとっては衝撃的だったのです。
金沢に行くまで鯵はあまり好きではなかったけど、今では好きな魚のトップ3に入っています。

久しぶりに食べた白バイ貝の握りは、相変わらずおかわりするほど美味しかったのですが、それとは別に、この日感動したのは鯖の握り。
〆鯖じゃなくて、ただの鯖。
赤く、つやつやとして透明感のある締まった身は本当に新鮮で、さすがにこれは山梨県では食べることのできない味でした。

この日、自宅に戻っての夕食は、上越のお酒「能鷹」とコウバコガニ、日本海の鯛と鰤のお刺身、そして鯛のアラ汁。
食べ物の写真は撮り忘れてしまうことが多く、この日もコウバコガニ以外は撮り忘れてしまいました。
 

新鮮だからこその「活白バイ貝」握り。
夜、茹で上がった香箱蟹。

海があって山があって田んぼがあって畑があって。
この辺りを訪れると、本当に、なんて豊かな土地なんだろうといつも思います。
この地域に限ったことではないけれど、そもそも豊かな自然というのはそのままではただの野生であって、私たちが自然と共存することができるのは、ゆっくりと時間をかけて暮らしや文化を育み、守ってきた人々の知恵や努力があったからこそ。
「エコだ」「環境だ」と喧しい昨今、それらに敬意を払い、守り、伝えていくことは自然を守るための大切な行動にもなるのではないかと思うのです。

冬の日本海を眺めながらそんな事を考えた往復500kmを超えるドライブは、タンクに残っていたガソリンでは足りず、2,000円分のガソリンを追加。
帰宅した時にちょうどフューエルランプが点いたのでした。

 

道の駅『マリンドリーム能生』

http://www.marine-dream.net/
新潟県糸魚川市能生小泊3596-2(8号線沿い)
Tel.025-566-3456